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三略講釈【上略-21】

皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
ここからは、君主の下で働く家臣や役人についての話になります。

本文現代語訳

「軍讖の中に、『上の者が暴虐であれば、下の者は疲弊してしまう。税金が重く、しかも何度も取り立てられ、刑罰が厳し過ぎるほど適用されれば、民衆は道理を失い互いに奪い合うようになる。このような状態を亡国と言うのである』と書かれている。
 軍讖には、『貪欲と言える醜さを内に秘めながら外からは清廉潔白に見え、ありもしない名誉を作り上げて名声を得る者が居る。公費での仕事なのに私的なことのようにして恩を売り、上司や部下にはそれを誤魔化し、そうやって外見を飾り立てて正しい事をしているように見せかけて高い官位を得る者が居る。これを泥棒の始まりと言うのである』と書かれている。
 また軍讖には、『役人でありながら徒党を組み、自分達の仲間だけを昇進させる者が居る。悪人でも仲間なら昇進させ、立派な人物を低い地位のままに抑えようとする。公人であることを忘れて私欲を優先させ、同僚の足を引っ張る。これを混乱の元と言うのである』と書かれている。
 さらに軍讖には、『貴族の中には集まって悪事を働き、正式な官位もないのに尊大に振る舞い、威張り散らす者が居る。草の蔓のように絡みあって結託し、悪徳な事をして恩を売り、正式な官位を持つ者の権限を奪おうとする者が居る。そういう者達が民衆を虐げて侮り、国内にこれを非難する声が上がっても、家臣達はこの事を隠して君主に伝えようとしない。これを騒乱の根と言うのである』と書かれている」

解説

ここでは、四種類の周りに悪影響を与える者を挙げています。
一つ目は税金や役務など民衆の負担を重くし、厳しい刑罰で縛り付けるような統治者。
このような者が領地を治めていると民衆は生活に窮して道理を失い、お互いに奪い合うようになって治安は乱れ、いずれ国が亡びます。
二つ目に自分の外見を良くするために偽りの功績で名声を得たり、公の仕事なのにまるで私費を投じて人のために何かをしたかのように振舞う大臣のような高官。
このような者はいずれ平気で他人の功績も名誉も奪うので、泥棒の始まりと呼びます。
三つ目に公人であることを忘れて私党を組み、仲間内だけで褒め合い引き立て、自分達が得することだけを考えるような役人。
このような役人ばかりになると私欲にまみれた者が増え、本気で民衆のためを思う立派な人物が隠されて、行政が混乱する元になります。
四つ目に互いに手を組んで悪事を行い、官職が無いのに威張り散らし、民衆を苦しめ、正式な官職に在る者の地位を奪おうとする貴族や有力者。
このような者達が増えると地方で勝手なことをするようになり、騒乱が起こる原因になります。
君主はこのような者達を放置してはなりません。
またこのような者達が生まれないように、登用する人材には細心の注意を払うのが君主の務めとなります。

今回の講釈はここまでと致しましょう。
それではまた、次回お会い致しましょう。

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