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三略講釈【上略-2】

皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
早速続きの講釈を始めていきましょう。

本文現代語訳

「軍讖と言う古い兵法書には『柔はよく剛を制し、弱はよく強を制す』と書かれている。柔軟であれば人心を得ることができるが、剛強で頑固であれば人に憎まれることが多くなる。弱者であれば人から手助けをして貰えるが、強者であれば怨まれて攻められることが多くなる。柔軟であるとは有事に備える側であり、剛強であるとは施しをする側である。弱い力を使う事もあるし、強い力を加える事もある。この柔・剛・弱・強の四つを兼ね備えた上で、これらを必要に応じて使い分けるのである。
 物事には発端があり、それが表に出ないうちは、人はそれを知ることができない。天地の動きは人智を超えており、物事は常に動いている。何事も変動していてずっと同じと言うことはなく、相手の行動によって様々に変化する。何事も焦って先に動いてはならず、周りの動きに合わせて自分も動くようにする。それでこそ大きな功績を立てることができ、天子の威光を助けて物事を成し遂げられる。また、天下を治めて辺境の土地まで残さず平定できる。
 この様に考えられる者が率いれば、帝王の軍となれるのである」

解説

最初に二つ用語の説明をします。
軍讖は「ぐんしん」と読み、武経七書よりももっと古い時代の兵法書と考えれば大きな間違いは無いと思います。
天子は聞いたことがあると思いますが、日本の天皇や中国の皇帝のような身分の人を指す言葉です。
この一節では有名な「柔よく剛を制す」の元となった言葉が出てきます。
しかし、ただ柔軟であれば良いと言う話では無く、相反する柔と剛、弱と強のそれぞれに特徴があり、どれも必要だと述べられています。
そして後半では物事が止まっているということはなく、常に変化しており、それに応じて臨機応変に対応する必要があると書かれています。
この前後の話を合わせて、様々な手段を身に付けたうえで変化に応じてそれを駆使すると言うことが述べられているのです。
そのことを理解すれば、天下を治める帝王の軍を作れると言っています。
一本槍ではなく、様々な手段を備えたうえでそれを使い分けることの重要性が説かれているのです。

今回の講釈はここまでとなります。
それではまた、次回お会い致しましょう。

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