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よわよわ武器の日本刀

皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
みんな大好き日本刀ですが、実は武器としては弱い部類に入ります。
何をもって弱いとするかと言う話になりますが、本編で順を追ってお話ししていきましょう。

本編に行く前に一言だけ言っておかねばなりません。
私は日本刀が好きですし、武器の一つとして信頼しています。
それでもなお、日本刀とはよわよわ武器であると言うお話をしなければなりません。


・古い時代

概ね平安時代から戦国時代を経て江戸時代までのものが、皆さまが想像する日本刀であると思いますので、この辺りから話を始めたいと思います。
この時代の合戦(戦争)でよく使われた武器は弓と槍です。
日本刀も武士や雑兵にまで携帯されましたが、決して主として使う武器ではありませんでした。
詳しい話は専門家の書物を読んで貰うとして、当時の主力武器はまずは弓、その次に槍で、日本刀の出番は矢が尽き槍も失っていよいよ最後と言う時に使う武器でした。
これは資料などを見ると明らかで、合戦での怪我の割合を調べると弓矢での傷が概ね半分その次に槍の傷、さらに投石や馬に蹴られた傷などが続いて、刀傷と言うのは本当に僅かでした。
鉄砲が戦場に出て来た後も、全体の4分の1が鉄砲、それよりやや少なく弓矢の傷が続き、鉄砲と弓矢で全体の4割から5割、さらに槍の傷と続いてやはり刀傷と言うのは全体の中では極一部でした。
つまり、刀と言うのはあまり使われていなかったか、使っていても有効打になりにくかったのです。
もし刀が「敵を倒すのに有効な武器」と言う意味で強かったのであれば、刀傷の割合は何倍もあったはずです。

言うほど弓や槍で戦っていたのか?っと思う方もいるでしょう。
でも当時の武士が使っていた言葉を知ると、やはり弓と槍が主に使われていたのだと分かります。
有名な今川義元は東海一の弓取りと呼ばれていました。
これは当時から「弓=武士」と言う共通認識があるぐらい、武士は弓を使って戦っていたと言うことです。
さらに武士が使う言葉に「一番槍」「槍働き」と言う言葉があります。
一番最初に敵に槍をつける(攻撃する)ことを一番槍と言い、戦場で功績を挙げることを槍働きと言います。
遠距離で攻撃するのが弓であれば、近距離で戦う時はまず槍なのです。
実際は弓で敵を討っても槍働きと言うのですが、それでも槍働きと言うぐらい槍と言うのが当たり前に使われる武器だったのです。
また話が戻りますが、日本刀と言う武器は持ち歩くけれども主力として使う武器ではなく、また戦場ではそれほど有効な武器では無かったことが分かります。

当時の武士が使う武器は弓と槍が優先され、残念ながら日本刀(脇差なども含む)は最後の手段や敵の首を取る時に使うのが主な使い道です。
このような訳で、戦場で戦うことを考えれば日本刀は決して強い武器ではなかったと言うことが分かります。

・近代から現代

江戸時代も終わり明治から始まる近代になると、ますます日本刀はよわよわ武器になっていきます。
まず戦国時代に使われた鉄砲である種子島(火縄銃)から西洋式小銃に切り替わり、日本刀で斬るどころか槍で突く前に一方的にやられてしまう時代に変わっていきます。
鉄砲から銃の時代への変換の波は大きく、同じく遠距離攻撃が可能な弓ですら比較にはならなくなります。
時代の流れで銃と旧時代の武器との戦いもありますが、その結果がどうだったかは歴史書を読めば明らかでしょう。
日本刀どころか弓・槍・刀は戦場で使う武器ではなくなったのです。

もう少し時代が進むと世界大戦が起き、その中で白兵戦が行われることもありましたが、その白兵戦ですら日本刀や西洋の剣がメインで使われることは無く、小銃の先に銃剣を付けたやり方で戦うことになります。
このように近代になれば日本刀を使う機会は限られ、武器として使うよりは軍人(将校)を象徴するアイテムなどになってしまったのです。

よって近代から現代においての日本刀は、最後の手段としてすら使わない武器にまで落ちぶれたのです。
日本刀は存在はするけれど、滅多に使うことのない完全よわよわ武器になってしまったのです。

・個人

ここまでは戦場で戦うことを想定して話を進めてきました。
大人数が、整った隊列で、相手を効率的に殺すために選んだ武器を持っている。
この条件であれば可能な限り遠くから、できれば相手の攻撃範囲外から一方的に、より致命傷を与えやすい武器が選ばれるのは当然です。
その前提の下で考えた場合に、日本刀はよわよわ武器であると言うお話をしました。

それでは個人同士の場合はどうか?
皆さまの世では個人が武器を保持し携帯することは認められてないと存しておりますが、映画や漫画の世界のように仮に我が身を守るために一つ武器を持って良いとなった場合にどの武器を選ぶでしょうか?
個人が携帯できるものとなれば拳銃などの小型の銃器、腰に差せる日本刀や剣、もう少し小さく携帯しやすいナイフなどの刃物、この辺りから選ぶことになるかと思います。

格好良さやロマンを追うならば日本刀は人気でしょうが、実際の生き死にがかかると考えるとどうなるか?
大半の人は日本刀よりも射程が長く火力も高い銃器を選ぶのではないでしょうか?
銃は携帯できる武器の中では射程が長く、しかも一発で致命傷を与えやすい武器です。
それでも剣術の心得がある人は日本刀を選ぶかもしれませんが、それで本当に我が身が守れるでしょうか?
もし家に強盗が入って相手が銃を持っていた場合、相手に撃たれる前に自分の間合いに強盗を捉えることができるでしょうか?
たまに「銃は訓練を受けていないと意外と当てれない」などと言う話をする人もいますが、それを期待して強盗との間合いを詰める間に数発撃ち込まれるのを承知で日本刀を選ぶ覚悟があるでしょうか?
自分一人なら上手く立ち回れるとしても家族はどうでしょうか?
そう考えると、一番危険な武器である銃を持つ相手に対抗するためには自分も銃を選ぶのが妥当ではないでしょうか?
銃よりも明らかに有利だと考えて日本刀を選ぶでしょうか?

もし私が武器を何も持たない状態で好きな武器を一つ選んで良いと言われたら、銃を手にすることは疑い有りません。
現代の銃は射程・火力・扱い易さの全てが優れています
相手が剣やナイフなどの近接武器しか持っていないなら、銃は圧倒的に有利な武器です。
日本刀で対処するよりも、銃の方が何倍も安全に確実に相手を無力化できることでしょう。
日本刀で自分も相手の間合いに入るより、相手の間合いより離れた距離から攻撃できる銃はそれほど恐ろしく強い武器なのです。
そう、現代における強い武器とは銃であり、日本刀は時代遅れのよわよわ武器なのです。

・まとめ

もう一度言いますが、私は日本刀が好きです
それでも贔屓せずに日本刀を見れば、古い時代では弓と槍より戦場で有効な武器ではなく、今でいうサブウェポンの位置にありました。
時代が進み文明が発展する中で鉄砲は強力な銃に進化し、日本刀を始めとする弓や槍のような古い時代の武器もその地位を奪われます。
時代の流れの中で昔ながらの肉薄した白兵戦が行われることがあっても、剣・刀・槍のような武器が復権することはありませんでした。
これらはもはや、戦場で主力として使う強い武器ではなくなったのです。

また現代の皆さまは通常武器を保有することはないでしょうが、もし武器を持つ事が許されたとしても、日本刀を持つ事は好みとロマンであり、個人が戦場ではない場所で扱うにしても銃が強い武器なのです。
銃にもいくつか種類があるにしても、これから先も銃は戦場で使う有効な武器、敵を倒す為の強い武器として長く君臨すると思います。
日本刀好きとしては悔しいですが、これも戦いの歴史の一つなのです。
遠い未来に科学技術が超発展し、ゲームやアニメのようにある程度熟練した者が扱えば斬撃を飛ばせる日本刀でも生み出されれば、射程の不利を対等にまで持っていけるので銃と日本刀が並ぶこともあるかもしれません。
しかし、そんな世界が訪れるのは大分先か訪れることはなさそうです。

日本刀は強さよりもロマンと美しさを求める武器
生き死にを度外視してでもこの手に持ちたい武器なのです。
それが、男の生き様なのかもしれませんね・・・


今回は強さではなくロマンを追い求める武器、日本刀と言う話をしました。
よわよわ武器でも人を惹きつける魅力が日本刀にはあるのです。

っと言うところで今回は終わりにしておきましょう。
それではまた、次回のお会い致しましょう。



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