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ドラマ「問題のあるレストラン」第二話
第二話も秀逸でした「問題のあるレストラン」!
面白い小ネタとイライラする理不尽(痴漢・セクハラ・モラハラ)のバランスが今回も絶妙でした。痴漢のシーンは過去を思い出してついタタリ神みたいになって我を忘れるところでしたが、このシーンを「笑える」「笑ってしまう」人たちもまだまだ多く存在すると知って、この問題の根深さを実感しました。
いやーでも、脚本が男性の方というだけですごく心強いというか「すごい!」と感激してしまいます。「Mother」「Woman」も書かれた方だけあって、元々客観的視野のある方なのかもしれないですね。マイノリティ側に立てる、主観で全てを判断しない方の存在を知るだけで嬉しくなります。
この脚本を書かれている坂元さんのすごいところは、徹底的にキャラクターの立場に立ったリアルな視点が活きていることだと思います。
痴漢されて「何だババアかよ!」と暴言まで吐かれた女性を前に、痴漢された経験もなければ痴漢の醜悪さも知らない若い男性がニヤニヤしながら見下す。さらには自信満々で「俺に会いに来たの?」こういう人…見たことあるぞ…。
さらに女装するゲイのハイジ(安田顕)を前にゲイであることを茶化したり、「お尻隠した方がいい」「話しかけなくていいよ」「怖い怖い気持ち悪い」とゲイというだけで腫物扱いするこの感じ…こういう状況、見たことあるぞ…。
っていう、経験した人にはわかるであろう「リアル感」が詰まっています。
肝心の本筋ですが、後半シーンがやはりアツくて良かったです。
今回の話は、たま子(真木よう子)の元同級生で、結婚してずっと専業主婦(家事・育児・介護)をしていた鏡子(臼田あさみ)にスポットを当てた回でした。
鏡子は離婚協議中の子持ちの元主婦で、かなり天然です。第一話は天然すぎる切り返しが目立ちましたが、第二話では卑屈すぎる切り返しの数々に登場人物みんな唖然。
後半では夫に息子を奪われ、変わりに300万円の預金通帳を渡された鏡子がたま子たちの住む部屋に訪れて「働くから子供は夫に返した」「お金は好きに使って」と強がりながら、また卑屈な言葉を口にし始めます。
「私のことダメな専業主婦って思って、不良品だって思って」「働いている人は専業主婦より上でしょ?」などなど…TSURAI
そんな鏡子に対してたま子は、「誰が、どんな時間が、どんな生活が、どんな言葉が、あなたをそう思わせたの?」と言った後、お金を返して息子を返してもらおうと優しく諭します。たま子マジ天使。
日常的にモラハラを受け続けた人は自己肯定感を奪われ、卑屈になってしまうんですよね。「お前はダメだ」「お前はなにもできない」「お前はゴミだ」と言われ続けると「自分はダメだ」「自分は何もできない」「自分はゴミだ」と思い込んで、本来の自分の能力も性格も全て自己否定してしまう。
後日、レストランでたま子と鏡子が元夫(丸山智己)と対面するシーンがまた秀逸で秀逸で…丸山さんは悪役がとても似合うというか、いい役者さんだなーと思いました。
鏡子のことを「これ」ってずーっと言ってるんですよ。すごく自然な感じで。「これ」って。人をナチュラルに物扱いするモラハラ元夫。
その後も鏡子の至らなかった点を列挙しネチネチネチネチと指摘し続けます。至らないというか、家事・育児・介護を掛け持ちで朝から晩までし続けている妻に対して、配慮も感謝もないからこそ指摘できるんですよね。自分がやったこともないのに自分の主観だけで全てを判断しすぎだし、「完璧で当たり前」「完璧でなければありえない」と完璧主義を人に押し付けてくる暴挙。
たま子が「ホームヘルパーとベビーシッターと老人介護を一人でしていた」と鏡子をかばえば、元夫は「それは仕事じゃない、僕は外で金を稼いできた」
出、出~~www家事・育児・介護を在宅で身内に対してする女性の労働には金銭的価値がないから外で働いている男性が偉くてすごい奴~~ww
これホント不思議で不思議で。この現象と酷似していると思いますが「昔から女性が率先してやってくれてたからそれが当然だし空気みたいなもん」的扱いになっちゃってるのかもしれませんが、全員が全員好きでやっていたと思うなよ、もし思ったとしても押し付けるなよって言いたいです。
そんでそのあとの、たま子の反論が最高にナイスでした。
「ホームヘルパー、ベビーシッター、老人介護の時給いくらか御存じですか?じゃあ1000円で計算してみましょう。朝6時~夜の12時まで18時間、あっもうこれで1万8千円です。それが休みなく1か月続くので、月54万円です。このお給料払えます?」
それはおかしい、と言う元夫に対し「でもそのサービス無料で受け取っていたんですよ?」と切り返す。たま子~~!好きだ~~!
そうなんですよ。額がどうこうじゃなく、無償で当り前のようにサービスだけ受けて感謝もせず、そのくせ少しでも気に喰わなかったら文句を言うのは筋が違うんじゃないのって思います。
たま子の正論に体裁が悪くなった元夫は、一部の男性が所持しているであろう最終兵器「ぼくのかーちゃんはおまえらダメ女とちがってまじ天使だからな」論をブチかましてきます。あるある。あるよーこれ!あるよー!余談ですが、この最終兵器をブチかましてくる人と私は一生交わることがないと思います。両方の人さし指を上に向けて「でっていう」と言ってその場を去りたい。
鏡子の元夫の母親は18歳で頑固な父親と結婚して、靴下脱がせたり寝間着に着替えさせたりまで母親がしたらしいです。えっそれ頑固っていうの?子供の間違いじゃなくて?育児かな?いや介護かな?どちらにしろ、ろくな父親じゃない!でも、元夫は不幸にもその父親そっくりに育ってしまったんですね。
夫の言いなりになって夫を甘やかしても、自分も夫も幸せになれないどころか子供まで一人じゃ何にもできない人になってしまったりする、負の連鎖です。
「母の人生はね、父と僕に捧げてくれた人生だったんです。無償の愛だったんです!」「夫に尽くす妻の愛情、あなたにはわからないでしょう」と元夫。
「でも、いい話って、ときどき人を殺すんだよ」「お母さんがどう思ってたかなんてわからないし、あなたが言う通り美談だったのかもしれないけど、でも」
「それ、誰かに押し付けた途端、美談じゃなくなるんだよ」
「夫を支えるために一生を捧げた妻の話なんて私には呪いの言葉でしかなかった」
「私が息子を育てたいのは、あなたみたいな男の人になって欲しくないから」
ずっと鏡子のターン!最後にブチギレて物を投げる元夫。見事な八つ当たり。
「母親」を一つの生き物のように画一化・理想化させて「無償の愛」と一括りにして自己犠牲を美化する風潮なんて、誰のためにもならないと思います。
父親は「外でお金を稼いでくれば偉い」、母親は「家で夫や子供に尽くすことこそ至高」みたいな価値観を、興味ない人にまで押し付けないで欲しいです。やりたいならやりたい人同士でやってくれ~って思いますね。
そして最後、元夫にメシマズメシマズ言われて自分でも「全米が泣くまずさ」と自称していた鏡子の料理がとんでもなくおいしかったことが判明します。
まずくないじゃん!モラハラの材料にされてただけの揚げ足取りじゃん!と、めでたしめでたし。
ハイジの「何よこの『メガネ外したら美少女』みたいな、隠れ料理上手!」というセリフもとても良かった。そしてヤスケンさん演技うますぎわろた。
本筋の問題提起とは別に、たま子たちがお店を一から手直しして形にしていくところもすごく丁寧で良かったです。最後に出来上がったお店を見て、私までわくわくしました。ビストロフー(アホという意味)、行きたい…!ポトフを食べてハンモックに揺られたい…。
問題のあるレストランはクックパッドでレシピも公開しているのでそこもまた楽しみでもあります。良質なドラマは名ゼリフだけじゃなく、キャラクターやロケーション、音楽や料理やアイテムなど、ドラマ内でパラレルワールドを築き上げてくれるんですよね。それでまた楽しさが倍になったりして、ますます視聴するのが楽しくなります。
他の方も指摘していますけど、たま子のライバル側の元会社&シンフォニック表参道のメンバーを朝ドラ出演者で固めている(あまちゃん、ごちそうさん)のがまた興味深いです。公式サイトの相関図から、川奈(高畑充希)の今後も気になるところです。
来週は元会社の社長(杉本哲太)の娘、千佳(松岡茉優)の闇が少しでも解明されるのかどうなのか、オープン予定のビストロフーの様子も気になります。おわり。
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