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米津玄師「Lemon」の歌詞の解釈と考察

2019/12/05、2021/08/29の記事からの転記に言葉を追加、編集したものです。

私が米津玄師さんのことを知ったのは、この曲が最初でした。でも結構遅くて2019年の中ごろに知って、年末にやっとまともに聴いて歌詞の解釈と考察を書いてみることにしました。

最初の解釈は、これは失恋の歌で、こっぴどく?裏切られて振ったけど、まだ忘れられなくて、でも「戻らない幸せがある」と教えてもらったと言えるくらいに戻ることなど考えてなくて、でも「あなたは私の光」と思うほど好きだった、という感じの、まぁはっきり言って未練タラッタラの気持ちを美しく歌った歌なのかなと思っていました。たいへん失礼なことを言ってます。

ちゃんと調べてみたら全然違ってました。
死んだ人のことを想う歌なんだって。


以下Wikipediaから抜粋 https://x.gd/CHVwi

ーーーーー
『Lemon』は愛する人を失った「わたし」の歌である。ドラマ『アンナチュラル』は不審死した死体を解剖する研究所を舞台にしたドラマであり、それを受けて作られたのがこの曲だった。元々付けられていたタイトルは『Memento(=形見)』であることも、この解釈を支持する材料になるだろう。そして米津は楽曲制作中に祖父を亡くし、それが楽曲の出来栄えを大きく変えてしまったと語っている。


米津本人は出来上がった楽曲について「“あなたが死んで悲しいです”としか言ってない気がする」との感想を持っている。
ーーーーーーーーここまで

以上を踏まえて、他の方の解釈も色々読んでみて、私なりの解釈を書いていきます。

あなたとわたしの視点が、途中で生きている人と死んでいる人で入れ替わるという解釈もありましたが、それだと目まぐるしいので、そういうのは無しで考えてみました。


以下歌詞です。引用https://x.gd/XBaQd
ーーーーーー
夢ならばどれほどよかったでしょう
未だにあなたのことを夢にみる
忘れた物を取りに帰るように
古びた思い出の埃を払う

戻らない幸せがあることを
最後にあなたが教えてくれた
ーーーーーー
ここで「戻らない幸せがあることを」と書けるのは凄いなぁと思いました。

以前小説で「愛する人が死んだら蘇って欲しいと思うのが、人として当たり前の感情でもある」という内容の文章を読んだことがあって、それを踏まえても「戻らない」ことを「幸せ」と捉えられるのは本当に凄いと思います。

ここには「宇宙の法則」とも言えるものがこの歌詞に含まれていると思いました。
それは「死んだ人は蘇らない」という、格好よく言えば「生死の理(ことわり)」があること。

どんなに願っても願っても願っても願っても願っても願っても願っても、です。


だから、「最後にあなたが教えてくれた」というのは、死後だいぶ経ってから、になるんだと思います。
「それ」がきちんと機能しているということは、とても喜ばしくしあわせなことなのだ、と。

普通なら「幸せが戻らない」っていう、「幸せ」に「戻らない」の言葉がかかる解釈をすると思うんですよね。
私はこの順番通りの歌詞で「戻らない(生き返らない)幸せがあることを」という風に受け取って、それが軸になってLemonの歌詞解釈と考察をしたんですけど。


ーーーーーー
言えずに隠してた昏い過去も
あなたがいなきゃ永遠に昏いまま

きっともうこれ以上 傷つくことなど
ありはしないとわかっている
ーーーーーー
その「真実」に打ちのめされてしまったことを書いているのではないでしょうか。


ーーーーーー
あの日の悲しみさえ あの日の苦しみさえ
そのすべてを愛してた あなたとともに
胸に残り離れない 苦いレモンの匂い
雨が降り止むまでは帰れない
今でもあなたはわたしの光
ーーーーーー
ここでいう「あの日」とは、亡くなった日のことを指すのだと思います。


ーーーーーー
暗闇であなたの背をなぞった
その輪郭を鮮明に覚えている
受け止めきれないものと出会うたび
溢れてやまないのは涙だけ

何をしていたの 何を見ていたの
わたしの知らない横顔で
ーーーーーー
ここの部分で、時間軸が亡くなった時に戻っていて、
亡くなって横たわっている「あなたの身体」に対して、ここに戻ってきて欲しいと何度も何度も呼びかけているのに、「あなたの魂」は何故戻ってきてくれないのか、という思いがこの言葉になったんじゃないだろうか、と思いました。

横顔、というのはもし病院等で亡くなってベッドに横たわっているにしても、布団に横たわっているにしても、「わたし」は顔を近づけて呼びかけていたのではないだろうか、と考えました。

「戻らない」という言葉には二重の意味があって、
魂が身体に戻らない=あなたが死から戻らない
になっているのだと思いました。


つまりLemonで描かれている死の意味も二重になっていて、死んだ時の悲しみや苦しみも“あなた”の存在の“消失”として、その「変化」をあなたが確かに存在していた証として共に受け入れることができていたけど、そうなってしまったらもう戻ってこないことも受け入れなければならないという、もう1つの死として描かれていると思ったんですよね。

ーーーーーー
どこかであなたが今 わたしと同じ様な
涙にくれ 淋しさの中にいるなら
わたしのことなどどうか 忘れてください
そんなことを心から願うほどに
今でもあなたはわたしの光
ーーーーーーーー
「あなたの身体」に戻らなかった「あなたの魂」に対して、「どこかであなたが今」と言っているのではないだろうか、と思いました。

ーーーーーー
自分が思うより 恋をしていたあなたに
あれから思うように 息ができない
ーーーーーー
この部分の「あれから」とは、上記で書いた「真実」をはっきり認識してから、ではないかと思いました。

つまりこの歌は、それを認識した後とする前との二段階になっているのだと思います。割合で言うと、した後の気持ちを歌っているのがほとんどですが。


ーーーーーー
あんなに側にいたのに まるで嘘みたい
とても忘れられない それだけが確か

あの日の悲しみさえ あの日の苦しみさえ
そのすべてを愛してた あなたとともに
胸に残り離れない 苦いレモンの匂い
雨が降り止むまでは帰れない
切り分けた果実の片方の様に
今でもあなたはわたしの光
ーーーーーー歌詞ここまで

米津玄師Lemon MVも貼っておきます。


検索して見つけたページでこんなことも書いてありました。

> MVで米津さんが履いているハイヒールは、他人にはわからないこと。を意味しているそうです。

この言葉には、なかなかに深い意味が込められているのだと思います。

私には、幸いにも(と言っていいのかわからないけど)まだ(と言っていいのかも分からないけど)ここまで深く人を愛したことはないし、その人が亡くなってしまう経験もしたことはありません。

経験した人にしか分からない深い感情だと思いました。


よく人は二回死ぬって聞きますよね。肉体としての死と、その人のことを覚えている人が誰も居なくなった時に訪れる、記憶として死と。

それと同じような感じなのかなと思ったりしました。

MVの解釈と考察は特にしてなかったんですけど、歌い手である米津さんが生者で、踊っている女性が死者(の魂)を表しているのかなと思いました。目の前で踊っていても見えないし、存在を感じることはもうできないということを表しているのかなと考えています。

あと、まぁ…あのMVの中でやっていることって「降霊術」だよねってあとで思いました。


ある所で読んだ話ですが、「切り分けた果実の片方の様に」も超絶に巧い歌詞だと書かれていました。

>一心同体だったけど、まず切ったら二度と1つには戻らないし、
>片割れは絶対それじゃないとダメだし、
>どのレモンでも良い訳ではなくてこのレモンじゃないとダメだし、
>色んなことを一言で言い切った、

と書いてあって、なるほどなぁ〜と思いました。

終わり。

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