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ゆえの小説集

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私の中の異世界や、そこにあるもののエネルギーを読み取って書いた小説です。投げ銭式。面白かったらご支援お願いします♪
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2018年10月の記事一覧

ジン

「知ってる? 今日は満月なんだ」

 古めかしい応接室には赤褐色の暖かい光が落ちている。閉められたカーテンの、その分厚いドレープの隙間から窓の外を覗き込んで、『魔女』はなぜか楽しげにそう言った。この部屋には、自分と、『魔女』と、猫が一匹がいる。他にも人はいるはずだが、今日はここに現れるつもりはないらしく、誰が来るという気配も感じられなかった。

「ふぅん……で?」

 そっけなく答える

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