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ああ、気付いたらもう筆を探すことすら忘れてしまっていた。ただ虚無に浸り、沈み、人里から離れて隠居することの心地よさよ。
私は満たされていた。同時に恐ろしくなった。理由はわからない。これだけ人に求められていることが幸福なのに、対応しきれない自分自身に嫌気が差したというのか。
僕は嘘つきだ。言葉の嘘を強く否定しながら、結局のところ誰も対等の生物だとみなしていないのだ。好き。愛している。そんな言葉に喜びつつ、しかし心の根底ではいつか賞味期限が来る言葉なのだと侮蔑している。
僕は宗教については詳しくない。世界史すら取っていないのだから当然なのだが、最近考えていることがある。
人間は自らを肯定し導いてくれる高等な存在を欲している。その最たるものが神だと思う。
人が神を求めるのが、己を肯定してくれることが、救済だというのなら。自らが自らを肯定し受け入れる、その在り様こそが。人間が神となり得るのではないか。つまり、私を信じる私は神だということだ。
救済など、誰にもできはしないのだ。自分を救えるのは自分にしかできない。他人など……
僕は生粋の人間不信で、悪で、嘘つきだ。
でも、僕はそんな自分を受け入れる。自分より大切な人間は、どこにもいないのだから。
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