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【弓道】にじみ出る、いまできること。

人は、緊張したり無意識のときほど普段の行っていることが出てきます。
今回も、想定勝ちといっても過言ではないかもしれません。


針の穴を通すような狭き門。

全日本選手権は今年の目標の大会のうちのひとつ。
先日、全日本選手権の代表選手の選考会がありました。
選考人数は男女各1名ずつ。

全日本参加条件で、道具は竹弓、竹矢を使用とあります。
この選考会までにいくつか射会・試合がありました。
通常、竹矢は全日本か講習会を受講、または特別な射会のときしか使いません。
なぜなら普段使いをすると価値の高い羽が傷んでしまったり、矢が折れてしまうことがあるからです。

万が一壊してしまうと1本だけ修理するということはできるのですが、残りの3本と箆(いわゆる矢のシャフト部分)が変わってしまいます。
予備の1組(4本)がなければ新たに1組買いなおすしかないのです。
十万単位の支出です(;´・ω・)

ですから、いつもはカーボンやジュラルミンのシャフトの矢を使います。
そんなリスクがありながらもあえて選考会当日まで竹矢を使ったのはもちろん本番を想定してのこと。針の穴のような狭き門に糸を通すためです。

予選は、一手(2本)2回。
2中以上+採点(射形や体配など)の合計が高い選手から5名選考。
決勝は、一手3回(計6射)から的中上位1位を選考。
2,3位が補欠となります。

前日まで、当日を想定しての練習を重ねてきました。
必ず練習最初の一手(2本)2回は当日のつもりで、
射も体配も意識して引く。
もちろん的中も意識です。

そのあとは一手ずつ引いて練習。
毎回練習は最低20射と決めているので20射は引きます。
ということは、全部で一手10回。

最初の一手2回は予選のつもりで絶対2中以上。
残りは決勝を想定した調整練習。
とはいえ、後半にあてても意味がありません。

なぜなら一手2回後の6射が決勝部分にあたるからです。
通常の練習でもそうですが、立ち上がりが悪いと当日負けてしまいます。
最初の立ちでの的中が試合での結果に直結するからです。
徐々にペースを上げていくのでは遅いのです。

的中率は7割前後を目安。
的中を維持しながら射の調整になります。
限られた時間と矢数の中でいかに結果を出すか。
ものすごく頭をフル回転しています。
...…だからその反動で、最近それ以外の記憶力の劣化が激しいのかもしれません(笑)

ハプニングは突然に。

順調に調整していましたが、1週間前から急に的中が落ちたました。

これは大事件です。
なぜなら、いつも試合の2週間前で調整をほぼ安定させ、残り1週間は微調整にしているからです。

2週間前までは問題なかったのです。
残り1週間が突如、微調整どころが調整不足に反転してしまったのです。

かなり悩みました。
おそらく、ほんのちょっとした「ズレ」だということは間違いないのです。その原因の特定が難しいのです。
練習後のつかれ具合と痛みから、「練習のしすぎによる疲労蓄積」もありえます。それに気づかず何度も失敗した経験があります(失敗経験は宝です)。

焦りによる、無意識に緊張(気合い過多)して力んでいるのか。
矢が離れたときの感触で失敗した部分が何となくわかるのですが、それすらも感じません。
もちろん的中の高低差も出てきています。

焦り=自滅です。
これはホントに何度もやらかしてきました。

考えつくことはすべて試しました。
矢数も疲れないように減らしました。
何度も大きく深呼吸しました。

「もう少し引いて感覚を試したい。とはいえうまくいくかもしれないし余計わからなくなるかもしれない」

このように中途半端な感覚にして、つねに原因や対策を考えました。

そう、蜘蛛の糸のようないつ切れても不思議ない、微妙な緊張感をあえて作ったのです。
これは慢心や諦めを芽生えさせないために、36年間で身につけた自分なりの究極の調整法です。

わからないのが通常。

「どんなに調子が良くても悪くても、
当日に最初の1本を引いてみないとわからない」

——というのが、持論です。

このことにより、余計なコトを考えなくて済みます。
ですから変な緊張感も出てきません。
そしてこれは、日々の積み重ねによって裏付けされる持論です。

調子がいいのか悪いのかわからない。

一点集中で取り組むので、この状態が通常です。
ですが、今回は違います。
「注:悪い寄り」
という、ただし書きつきです(;´・ω・)

予選1回目
〇✕

1本目がわりとうまくいったので「こういう感じなのか?」と思いながら引いたら12時に外しました。
次の順番まで、ありとあらゆる原因を探るもなかなかピンときません。
「もしかして『いい意味』ではずしたのか!?」
とおもい次で試すことに。
そして、次の立ちで1本あてないと予選不通過になります。

予選2回目
〇✕

「もしかして」があっていたのか、的中。
そこで2本目で再確認するも、いつもと感覚が全然違う離れです。

2中は6名。
あとは射形点などを加えての上位5名が決勝に進出です。
おそらく大丈夫だとは思っていたのですが、
過去の苦い思い出がじわりじわり。
心にうっすら、黒くにじみ出てきている感じが否めませんでした。

まさに一射絶命。

いま目の前にある1本に全精神を込め集中するときに使う

「一射絶命」

同じような意味合いで「一射入魂」ということばもあります。
どちらかといえば普段使いはこちらのほうですが、
今回はまさに「絶命」でした。

無事予選通過。

決勝は、通過者5人で一手(2本)を3回。
計6本の的中数(あたった数)で決まります。

1回目
✕〇

3名ほどが1中。
6本しかないので、この時点で0本は痛手です。
1本目外したときマズいと思いましたが、それよりも「あ!」と思う点がありました。それを意識した2本目、的中。
そうだ「これ」を忘れていたんだと気づき、今日外したすべた矢のすべての原因を確信しました。

2回目
〇〇

やはりそうでした。
前の方だったので、後ろの人の的中ははっきりわかりませんが、
的にあたる音は聞こえます。
わたしのすぐ後ろの方は現時点で的中数は同じです。

2回目終了後、
「ゆづるさんの的中に引っ張られる感じでついていけました♪」
もしこれが、団体戦で同じチームならばとても心強いし、わたしもますます気合入ります。
ですが、今はライバルです。
こういう時にいちばん怖いのは「初参加で勢いのある人」です。

「ビギナーズラック」

という言葉もあるように、初めてでなにもわからず無我夢中に頑張り勢いつく人ほど手ごわいのです。
なぜなら選考会にエントリーするくらいなのですから、的中力はあるはずです。そして「絶対に出たい!!」という欲がないからです。
そう、負けても怖くない。プレッシャーがないのです。

ちょっと厄介だなと思いつつも、決勝戦を楽しんでもらえるキッカケを自分が作れ、それはそれでうれしいなとも思いました。

3回目
〇〇

1本目、後ろの人は外しました。
もしかしたらほかにも同じ的中の人がいたかもしれません。
ですが、最後の1本をあてれば勝ちはほぼ確定です。

万が一、いま目の前の1本を外しても。
後ろの人があてたとしても、他に同中の人がまだいたとしても。

そのあとの射詰め(外すまで1本ずつ引くこと)競射になっても大丈夫だとなんとなく思っていました。
とはいえ、いま目の前にある1本をあてれば間違いないのは確実です。

「最初の1本しか外していない。
これをあてて、5連続的中できるのか」

余計なことは考えていませんでした。
考える必要もありません。
それは普段の練習で、6連中も10連中もすることができていたからです。普段できていることが今できない訳がありません。

最後の1本、死んでも外すもんか。

このときはこれしか考えていませんでした。
そう、まさに『一射絶命』の思いです。

ライバルからいわれた意外なことば。

3回目に入る前に思ったことは「後悔だけは絶対にしたくない」でした。

思えば数日前からの不安定さで前日からあまり眠れていませんでした。
行きの道中、試合の始まる前、なんども心が萎えかけました。
「今回は無理かな...…」と。

そんな思いを抱えながら臨んだ選考会。

接戦でしたが、5中でトップ通過です。
2年連続出場権利を獲得しました。

3回目終了後、
「うしろで引いていて、完全に飲み込まれました

このようにいわれました。
さきほどは「引っ張られてあてることができた」といっていたのに、いまは「完全に飲み込まれた」??
無事に終わった安堵感もあいまってか、何を意味しているのかよくわかりませんでした。

「完全に(気迫に)飲み込まれて、大三の時点でもう無理だと思ったんです。すごかったです」

聞き返すとこのように説明してくれました。
もしかして、3回目の1本目を彼女が外したのはこのせいだったのでしょうか。

自分ではそんなつもりはまったくなく。
ただただ、追い込まれている感じしかなく。

でも「追い込まれている」という受け身の感じでは、
間違いなく自滅してしまう。
今までの経験が、昔の自分が、頭の中でそう叫んでいました。

なので視点を変えました、「自分で追い込もう」と。
「絶対に外さない」と。

「絶対にあてる」でもいいのですが、この時の状況だと「絶対に外さない」のほうが追い込めると思いました。

「同じ意味では!?」

と思うかもしれませんが36年の経験上、
そのときの状況で微妙に違うんです(笑)
そうですね、例えるならば

「絶対にあてる」は攻めの追い込み
「絶対に外さない」は守りの追い込み

というところでしょうか。
今回は、的中が安定していなかったので
「絶対にあてる」でいくと、なんとしても中てなければと「攻める気持ち」で力んでしまうと思いました。
「絶対外さない」だと、外さなければいいと「受け身」の感覚になります。なのでさっきまでとように同じ感覚で引けると思ったからです。

まとめ

こういう場合でのとっさの判断は、今までの経験上。
連続して的中できるかという不安が思い浮かばなかったのは、目標に向けて想定した日々の積み重ね。

いちばんつらい時、自分を助けてくれるのは日々の自分自身です。
不安や緊張は自分の自信の無さからくるものです。

今回はさすがに久々に追い込まれ(追い込み)ました。

「あー、これは相当ヤバかったんだな」

そう思うくらい帰りの道中、いつも弓を引いたあとの感覚とは全然違う痛みや凝りが出てきていました。

まずは今年の目標1つクリアできました。
9月末、東京に行きます。

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