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冬空の下で傷んだ林檎

真っ暗で曇った空にため息をついた。
星なんてなかった。
もう今年もラストスパートで、私の香水もラストノート。
クリスマスを前にして別れを告げた。
空は黒くて息は白い。私はあの人が来るのをずっと前からこの寒空の下で待っていた。
でもあの人は一向に現れなかった。

約束をする時はいつだって私からであの人は私に関心なんてなかったのかもね。
前に公園に呼び出した時にも約束の時間より数分遅れてきたっけ。
私たちはそこで縁を結んだはずだった。
私だけの君になったはずだった。
でも会う時はいつも夜で香水はいつもラストノートで、私だけの君のはずなのに君の心は誰かのものみたい。
ラストノートの時間は私だけのものだと思いながら隣を歩くけれど辛い気持ちが雪のように積もるだけで幸(ゆき)が積もることはない。

今もあの人は約束なんてなかったみたいに平然としているのかな。
私は分かっていた。あの人は他にも会っている人がいることくらい知ってた。
だって私と会う時はいつだって他の女の匂いがしたから。
別れようなんて今更かもね。
2回目の浮気を許容できるほど私の器は大きくないみたいで、いつしか実っていた林檎は毒林檎になっていた。
既読のつかないメッセージに視線を落としながら、君から「何してる?」を期待してたけれど私が欲しかっただけだった。私はいらない子なんだ。
林檎みたいに赤くなった手。「特別」に酔っていただけだったみたい。私バカみたい。
さようなら。



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