僕にはパティシエの、人生の師匠がいます
僕が専門学生の時、1ヶ月パティスリーで研修をするという授業がありました。
僕はいい加減な性格なので、ネットで調べて1番上にでてきたお店に決めました
そこは恐ろしく繁盛しているお店で、しかもシェフもかなりの実績の方でした(無知とは恐ろしい)
そのため僕の先生は(この方もTVチャンピオンにでるくらい凄い方)恐縮しながら先方に電話しているのもみてエラいところに決めてしまったと後悔しはじめていた。
研修は受け入れて頂きましたが、忙し過ぎて新卒を採用して育てる余裕が無いので、そのつもりでとシェフから伝えられました
朝7時に研修に行くと、凍りついたようなピリピリとした雰囲気。
僕はバカ真面目なので学校で教わった通り「どぅーです。今日一日よろしくお願いします!」と大声で(皆さんの想像の3倍くらい)挨拶をしました
し〜んと静まり返るキッチン。少し間が空き小さな「よろしくお願いします」が返ってきました。
やっちまったなぁ…と思っていると1人ニヤニヤしながら僕を見ている人がいました。
僕の恩人のYさんです。このトンチンカンな行動を気に入ったらしくその後は何かと目にかけてもらい、仕事を振って頂いたり、助けて頂いたりしました
その方は本当に怖い方で、お店でも年齢は真ん中の方でしたが、色んな方々が気を遣っているのを僕でも感じられるくらいでした。
勿論、恐ろしく仕事ができました。どこに目がついているんだろうと思うほど、色々な事が見えていて仕事を回している姿にいつかあの人のようになりたいと思うようになりました
その後、研修を終え、もう少し現場の雰囲気を感じたいとアルバイトとして働きつつ就職先を探していたある日シェフから呼ばれました。
「もし良かったら、ここで働いてみるか?」と
驚きましたが、先輩達にも良くして頂き、楽しく働いていたので就職を決めました。
そんな1月のある日、Yさんから「仕事終わったら少し時間ある?」と聞かれ、仕事終わりに隣の公園へと呼び出されました
「俺、実は来月辞めるんだ。まだ誰にも言ってないけど」
衝撃的すぎて絶句する僕。
「お前が多分俺と働きたがってると思ったから伝えなくちゃと思って。でもお前はここで頑張れ」
ショックでしたが、お店も好きになり始めていた事もあり、受け入れて前に進む事にしました
Yさんが退職したある日の帰り道、駐輪場でセカンドのIさんから伝えられた言葉があります。
「Yが、どぅーを働けるようにシェフにお願いしたんだよ」と。
勿論、本人からは伝えられていません。そして本当に辞める事を僕以外知らされていませんでした。
そうして僕は無事、パティシエとしてそこのお店で働ける事ができました。
紆余曲折があり、今はYさんと働いています
働いていました。
脳梗塞でした。Yさんが倒れてもう1ヶ月ほど経ちます。未だに目覚める事はないです
ご家族とも仲良くさせて頂いていて、奥様の悲痛な電話が今も耳を離れません。
もしも願いが叶うなら
Yさん、起きてください。
起きて奥様を、子供達を抱きしめてあげてください
不安に押しつぶされそうですよ
Yさん、僕は怒ってます。
一緒にまた働き始める最初の頃に、「仕事も大事だけどそれ以上に家族を大事にしろ。大事にしなかったら俺が許さない」と
Yさん僕に言いましたよね。僕ら親父としてまだまだ子供達にやる事あるんじゃないですか?
お願いだから起きてください
起きて家族を安心させてあげてください
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