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天使の火葬

君と同じ世界で生きていきたかった。本当にそれでいいの?ってもう1人のわたしが、道端の野良猫が、公園の草木が笑いながら、言ってくる。
わたしじゃ駄目だった。
君に会えない生活が、君のこと考えない生活が、どれだけモノクロなのかわたしは知っている。
暗い霧に包まれて自分の足で歩けなかった。息をするのが精一杯だった もう何処にも行けなくて諦めていたら少しだけ光が差していて必死になって追いかけた、君が救い上げてくれたんだっけ あの日のこと、鮮明に覚えている。わたしにとっては君が天使だった 可愛くて愛おしくて君の笑顔を思い出す度に胸が痛めつけられてその痛みが嬉しかった。
君が助けてくれたから、わたしは君を、幸せにしたかったんだ。
街中で歩いている楽しそうな恋人たちは身を寄せて手を繋いで笑い合ってわたしを指差して嘲笑っている、きみもその内の1つだったんだと思ったら全部気持ち悪くて気持ち悪くて気持ち悪くて気持ち悪くて涙が溢れてきて急いで下を向いた。駆け足で、人にぶつかりながら走って、つまづいて、どこなのか分からない場所まで行って泣いた。
普通の女の子になりたかった、なれなかった。普通ってなんなんだよ、誰とでも幸せになれる子なら、君が選ばなくていいじゃん。君がわくわくするような日向ぼっこできるような明るい女の子になれなくて、ごめんなさい、ごめんなさい。
ずっと強がってわたしが好きで君がわたしの前で笑ってくれたらそれが幸せなんだって信じ込んでた、でも現実が残酷で儚くて私の中の少女が死んじゃった。ぐちゃぐちゃに押し潰されて、殺された。
葬式をしなきゃね、もう死んじゃったもの、
本当は悪い夢をみていて 少女はあたたかい布団で寝息を立てて寝ているんじゃないかって思った。太腿に垂れてきた血が生温くて私の涙と混ざってピンク色になって笑ってた。笑わないでよ!って大きい声を出したら床が冷たかった。
偽物のわたしたちは偽物しかない雑貨店に行って 星の華がパチパチと音を鳴らして消えて 君の瞳に光が無くなって それでもいいよってわたしのしあわせぜんぶきみで出来ていた。しょうもない、心臓の音が聞こえると、きみが生きてるんだって、おなじ世界で生きててくれたんだって安心した そのまま死にたいと思わない夜に、真っ暗な温もりで、殺してくれたらよかった でもわたしのせいできみが罪を被ってしまうのはいやだ、わたしのせいできみが泣くのはいやだ わたしのせいできみが笑うのがいやだ。
好きって言ってほしかった。
優しい嘘が得意でしょ。
惨めでみっともないきみを抱きしめて笑った。きみの指の骨 第一関節と第二関節の違いがわかるくらい噛んで、きみを忘れたくなかった。もう一度出会いたかった、出会いたくなんてなかった。最悪のパズルのピースが綺麗にはまってしまって、何をしても取れなくて苦しかった、優しさが痛かった。最悪、だなんて心の底では思ってないからそんなこと言えるんだよ。強い力で壊したんだよ 君が、君が壊したの。もう慣れちゃった、つまんない。
君と約束した幾つものこと もう果たせない 泣いても泣いても泣いても泣いてもわたしが許せない。殺さなきゃ、またわたしがわたしを殺さなきゃ 誰かに殺される前にあの日の私に殺される前に今、わたしを殺さなきゃ。私じゃない、必要じゃなかったの。
おれたちが正しいってきみが言っていた言葉がわたしの教科書で呪いのように毎日毎日繰り返している。きみの教科書が間違えているからこんなことになるんだってびりびりに破いた ひとつひとつ落ちた紙切れを繋げて読んでみたらきみのこと正しいとおもった。歪んだきみだけが正しいと思ってた。
全世界の人間に嫌われても愛されてもどうでもよかった、そんなわたしのことをきみが褒めてくれた。
君に嫌われるのが怖かった。そんなものちっぽけな虚勢だった、捨ててしまえ そうやって強がらないと死んでしまう。
今までどうやって生きてきたのか思い出せない 君が作った線を、指でなぞって死ねない理由にしてた。
幸せになってしまえなんて嘘でも言わない、少しだけ思ってるはず、だけど言葉にしてあげない。
わたしはきみのこと運命だって、おもってた。生まれ変わったらふたりで一緒に幸せに、なんて望みすぎだからふたりで不幸になろうよ。そんなのも望みすぎ?でもわたしはきみのこと1000年前から探してたんだよ、赤い林檎をわたしといっしょにいれてくれない君のことが大好きで大嫌いで殺したい、君だけが好き。ごめん。ばいばい。わたしは君を幸せにしてあげたかった。きみがつくってくれた美しい世界を壊すんだ。


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