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2023.12 東京探訪 後編(SCOT@吉祥寺シアター)

鈴木忠志はCRAZYだった。
いや・・・シラス視聴者(シラシー)から言わせてもらえば、
鈴木忠志はあずまんすぎる!

〇プロローグ

「SCOT(スコット)」「スズキタダシ」「スズキメソッド」
・・・演劇界でその名を知らぬ者はない。
私は名古屋で社会人演劇を4年ほどやっていた。
だがSCOTの公演は見たことがなかった。
ク・ナウカ、SPACは見たことはあった。
でも利賀(とが)まで行ったことはなかった。

それが吉祥寺で見られる。行くしかない!

SCOTは鈴木忠志が作った劇団「早稲田小劇場」が前身(別役実もその1人)。東京から富山県の利賀村へ移って47年あまり。山奥で畑をやりながら、年に1度夏に手作りの大規模な演劇祭をやっている・・・という後にも先にもほとんど類を見ない劇団だと言えると思います。
https://www.scot-suzukicompany.com/scot.php  

〇トロイアの女(ギリシア悲劇)

戦争が終わらないどころか大国が戦争を「始めてしまった」この21世紀が、この戯曲に描かれた女たちの悲しみ・苦しみは普遍のものであると証明してしまった。
戦争はなんと愚かで無責任なことだろう。

エウリピデス(劇の作者)が今の時代を見ても何も驚かないだろう・・・。

そして、俳優たちの驚異的な身体能力にのけぞる。
あんな歩き方できないよ!!!!!

狂言の「茸(くさびら)」みたいな、しゃがんだまま足以外の部分を全く動かさずにすごい速さで歩く。鈴木氏によると「ごきぶり歩き」とのことだった。シャカシャカシャカシャカ。

〇世界の果てからこんにちはⅠ(映像)

通称:ハテコン。
これもすさまじかった。映像だけどすごかった。
夜。巨大な野外劇場。
バックに山! 山が舞台装置! とびまくる虫! 流れる軍歌(辻田チャンネルの知識がここでも生きるぜ、海行かば) 花火ドーーーーン!!!!(見ていると戦闘機からの爆撃に重ねていることが分かる)

圧倒的祝祭感。もしかしてアテネの市民演劇祭ってこんなだったんかな。 

もうポカーンであった。。。

映像でこんだけポカーンなら現地ではどうなちゃうのだろう。。

ていうか「1」ってことは「2」とかもあるのだろうか???(あるらしい)

〇ここからはアフタートークの模様をお届け!

鈴木忠志は、めちゃくちゃ怖くて気難しい方なのかと思っていたが(少なくとも客前に出ている時は)穏やかな・・・方でした・・・。
だいたいの大物演出家はそう見える。稽古場では絶対違うと思うけど。

そんな鈴木氏はトークがめちゃくちゃうまい。
どんどんしゃべる。
シラスの「突発」ですか?! 
(そんな感想を抱いたのは私だけ)

〇吉祥寺シアター以外でやらない理由

「日本の劇場は床が汚いんです」「壁もなんか頼りない」

床の話は「汚れている」という意味ではなく、「床の見栄えが悪い」ということだと思う。能舞台と違って、現代劇の床は・・・なんつうか、あまり大事にされないというか、だいたいの舞台の床は木で傷だらけです。舞台装置も運ぶし。コンテンポラリーダンスだったら足(だいたい素足なので)を怪我しないようにリノリウムを敷くのですが。
まあ「床ってそういうもの」として捉えていた。言われて初めて気づいたよ。何度も舞台立ってるのに。そういうのが美的感覚なんだろうなあ。。。
SCOTでは俳優が床の上を這うように歩いたりするので、その俳優に照明を当てると、床の見栄えの悪さが際立ってしまうという意味ではないかと思いました。

「利賀村は花火できるし。ここで花火できないでしょう?」(私の心の声:笑いもちゃんと取っていくスタイル)

劇団員をウィークリーマンションに住まわせたりしてその経費分だけはチケットという形でいただいてます。無料でもいいと思ったんだけど、反対された。(私の心の声:そりゃそうだよ! ダメっす!)

中国で(果てこんを)やると、「にっぽんがお亡くなりになりました」などと言って逮捕されないのか? と言われる。お役人は利賀村まで来ないんだよね。
日本の政治家には「せめて帝国に変えられないか?」と言われたこともあるが、ニッポンだからいいんだよ!

(私の註:なおハンガリーやベニスでも乞われて上演したそうです)

〇照明テクニック(惜しみなく開陳)

「スズキの照明はレンブラント」と言われてる。
浮き上がるように作っている。
床には格子から光を当てて顔は全部フット。
でも衣装に当たると質感が安っぽく見えたり。色々苦労がある。照明作るのに4日かかるんです。

演劇やっていた身には非常にいいお話でした。こんなことまで言ってくれるのか、という気持ち。

〇山にいると色々忙しい

畑とかしないといけない。草むしりも訓練のウチ!と言って・・・。

去年、観客みんなにカボチャを1500個配ったら足りなくなった。だからナスも配った。花火とカボチャ目当ての人もいるのではないかと勘ぐりたくなる(笑)

観覧料はお気持ちです。
チケット代なくしたら収入が増えた。不思議です。帳尻があえばいいからお金ない人はいいんです。父兄島から来た人もいました。

〇果てこんの元ネタ

・岡潔
雑誌『太陽』にかいた言葉からとった。数学者だけど面白い()人。

・梅原邦夫の小説

・最後はマクベス
ニッポンがお亡くなりになりました、という台詞は、マクベス夫人が亡くなった知らせ。それを「ニッポン」に変えるだけで、こんな(大変な)ことになっちゃう。

(私の註:この台詞の後、マクベスの「消えろ、消えろ・・・」の部分が続く。それが本当に今の日本の社会状況世界の状況もあわせて、迫ってくるのです)


私がこれまでの浅い知識と経験を総動員して考えたことは、たぶんSCOTは日本人の農耕民族としての身体表現を極限まで追求しており、だから農耕が訓練の一環になるのではないか? ということ。西洋人とは体の造りも違う、動きのベースも違う、日本だからこそ生まれる表現を追求していった結果、世界に通じる作品になるのではないか。


〇質問コーナー

「じゃ、なんか質問とかないですか。質問」

あずまんすぎる!!!!

勇気ある質問者さん:
「鈴木さんは毎日こんなニュースばかりで、気が滅入りませんか?」

回答:
滅入るに決まってる。でも私はその方がいいんだよ。やる気が出る。何かしなきゃって思うじゃない。思わないの?
吉祥寺みたいな歓楽街にいたら滅入らないでしょう?楽しいもの。だから私は山に行った。山に行くと滅入ることができる。滅入ると水田を作り替えて畑にする。そんなことしてると忙しくて考える暇なんかない。
滅入ったら体を動かすこと。

あなたは結婚してるんですね?
ニュースを見ると滅入る、じゃあ奥さんを見てると滅入る?(全力で否定する質問者さん)
そんなら幸せだね。奥さんはどう思ってるかわかんないけどね(笑) じゃあいいじゃない。頑張りなさいよ。

幸せっていうのは、人の幸せを喜ぶことですよ。人の幸せを「よかったね」って自分も喜ぶ。それがいい関係。でも日本人は人の不幸を喜ぶようになった。週刊文〇とか見てるとわかるでしょ。もっと人の幸せを喜べるといいのにね。

でも、滅入ったほうがいいんです。今の首相とか滅入るのかね?? まあ一国のリーダーは滅入りたくても皆の前では滅入ることはできないだろうね。私もそう。
私、朗らかに見えるでしょう?オーディションは30カ国くらいから応募があるんですよ。その時、私が滅入ってたら?(せっかく応募して来てくれたのに)ダメでしょう?
だから朗らかにしているの。

お互い頑張りましょう!

※水田を畑に変える。それを鈴木氏は「地球の形を変える」と言っていた。

※SCOTというコミュニティについては、演劇に深く関わっていた友人から話を聞いたことがある。ある面から見ればカルト一歩手前ということになるのかもしれない。

〇アンケートに「ゲンロン友の会会員です」と書いてきました(蛮勇)。


〇エピローグ


ゲンロンもいつか畑をやると思う。

やろう畑。配ろうカボチャ。



〇おまけ1 駅弁


東京駅で買った駅弁。むちゃうまでした!

さす1200円。


〇おまけ2 『訂正可能性の哲学』バナナロングTシャツ、買いました!

Lは私(155cm)にはちょっと大きかったのでハカセに譲ることになりました。
やっぱりMにしとけばよかった!!!!!
ハカセはパジャマとして着用しております。


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