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「ローカルガストロノミー」イベントレポートno2

2020年11月「ローカルガストロノミー」をテーマに行ったイベントのレポートNo2です。舞台は発酵の町、秋田県湯沢市。秋田の伝統食材を使用し、未来に食文化を継承するべく「自然と人が共生する」を探究するべく、新しい地域の料理を楽しんだ1日目に続き2日目はシンポジウムを行いました。
そのシンポジウムの中で行われたポケットマルシェCEOである高橋博之氏と湯沢市長である鈴木俊夫氏のご講演についてこの記事を通して共有したいと思います。

キーノートとして始めにポケットマルシェCEOの高橋博之氏にご講演頂いた。話して頂いたテーマは「日本の地方のこれから」である。なぜこのテーマなのかと言うと、私たちは地方がこれからの日本の未来を創っていくと考えているからだ。
高橋氏は冒頭で「秋田は少子高齢化率一位で消滅まっしぐらである。でも革命はここから生まれるんじゃないか」と言った。確かに昔から火事場の馬鹿力などと言われるように、人は追い込まれることで想像以上の力を発揮できるのかもしれないと思った。同じように高橋氏が東大生の前で地方が大事だと講演をした時、講演後に東大生から「なんで地方が必要なのか。比較優位で考えると都市に人を集めて効率化する方が正しいんじゃないか」と真剣な顔で質問されたらしい。確かにそれは間違いではないかもしれないが、世界では人口爆発による食料不足が囁かれている中、食料の大輸入国である日本が今までのように食料を充分に輸入できるという保証はどこにあるのだろうか。また、高橋氏はその東大生のような考えを「人間中心主義」と呼び、気候変動を始めとする現代の社会問題の根源だと主張する。なぜなら、全てを人間の思い通りにしようとする「人間中心主義」は経済的利益だけを追求するために自然を手段化し、本来不可分だったはずの人と自然との分断を生み、命の美しさが感じられない社会になってしまうからだ。今年の夏は海水温が例年より2℃ほど高く、養殖している魚が異常なスピードで死んだり、気候変動で実被害を受けているのは自然が仕事相手である生産者なのだが、生産者と消費者とが分断する社会では、そのカナリアの声も届かない。我々人類は科学の力だけではどうにもならないということに気づかなければいけなく、今一度「本当の幸福とは何か」ということを考え直すフェーズにきているのではないだろうか。
そして、高橋氏はその分断を繋ぎ直すものこそが「食」であり、生産と消費とをこれ以上離さないことが自然と共生することではないかと言った。高橋氏がCEOを務めるポケットマルシェは、生産者と消費者をつなぐ産直 C2Cのプラットフォームであり、以前、末期ガンと闘っているポケットマルシェのユーザーがいた。そのユーザーは末期ガンの突然の宣告に生きる気力を失っており、家族でさえ手のつけようがなかったそうだ。しかし、ポケマルに出会い、生産者さんの気持ちの込もった食材を購入するようになると、「次はどんな食材が届くかな。そしてどんな料理を作ろうかな。」と生き生きとした毎日を送るようになった。それは、「食」が分断を繋ぎ直し、生きる意味を与えた証拠ではないだろうか。つまり、生産者はただ農作物を生産するだけでなく、生きる意味さえも生み出すような素晴らしい職業なのである。そんなかけがえのない生産者さん達のほとんどは、地方で業を営んでいる。そんな生産者さん達が真っ当に評価されるような社会にしていくことこそが、我々が本当の幸福を見つけることになり、地方から日本の未来を創っていくことに繋がっていくのではないだろうか。

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続いて湯沢市長である鈴木俊夫氏に歓迎のご挨拶を頂いた。市長には湯沢市の地域資源についてご紹介して頂いた。湯沢市にはかつて東洋一と謳われた院内銀山があり、その歴史とともに豊かな酒造りや米・味噌作りの文化が根付いた。さらに、日本三大うどんの1つにも数えられる稲庭うどんや800年の歴史を持つ川連漆器、豊かなる秘景二大景勝地にも数えられる小安峡大噴湯もあり、自然も豊かなところである。そんな地域資源に恵まれた湯沢市だが、他の地域と同じく、人口減少問題に悩まされているという。しかし市長はこう言った「東京から人がいなくなればただの廃墟と化すが、湯沢のような地方は人がいなくなっても自然や文化が残る」と。その言葉から、私たちはこのまま首都一極集中を進めていっていいのだろうか、将来世代のために残していけるものはなんだろうかということを真剣に考えるべきではないかと思った。

湯沢市長


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