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【論文紹介】ウエイトボールを用いたトレーニングの投球動作への影響

今回は投球動作の指導で有名なマイク・ライノルド氏のブログ?で読んでおいてほしい論文に取り上げられていた論文の紹介です!マイク氏は,理学療法士,Abstract,CSCSコーチとしてスポーツバイオメカニクス的知見から投球に関する論文を多く執筆し,選手の指導もしている方です.最後のまとめを見て理解するだけでも十分です!

今回紹介する論文はこちら
Effect of a 6-Week Weighted Baseball Throwing Program on Pitch Velocity, Pitching Arm Biomechanics, Passive Range of Motion, and Injury Rates

M. Reinold et al. (2018)
Sports Health: A Multidisciplinary Approach (SPH)
Vol 10, Issue 4, 2018

https://peerj.com/articles/6003.pdf

要約

背景:近年,野球の投球速度を高めることに重点が置かれるようになってきた.特に,ウェイトボールにより投球動作のトレーニングが一般的である.ただし,これらのプログラムの物理的影響や安全性については不明瞭である.本研究の目的は,投球速度,受動的な運動範囲(PROM),筋力,肘関節のトルクおよび負傷率に対するウエイトボールのトレーニング効果を検討することであった.

仮説:6週間のウエイトボールトレーニングプログラムは,投球のバイオメカニクス的パラメータおよび身体的特性に変化をもたらすと考えられる.

研究デザイン:無作為化比較実験
証拠レベル:レベル1

方法:オフシーズン中に,38名の健康な投手をコントロール群とトレーニング群に無作為に分類した.投球速度,肩関節と肘関節のPROM,肩関節のトルク,肘関節の内反トルクおよび肩の内旋角速度は,両グループで測定した.次に,トレーニング群は2オンス(56.69g)から32オンス(907.71g)の範囲のボールを使用して,週に3回,計6週間のウエイトボールの投球トレーニングプログラムを実行した.コントロール群は,5オンス(141.74g)の公式球のみを使用した.両グループは筋力トレーニングプログラムも実施し,6週間後に測定を繰り返した.6週間のトレーニングプログラムとその後のインシーズンにおける負傷者を追跡した.ウエイトボールの投球トレーニングプログラムによるトレーニング効果は,P<0.05の事前有意水準の設定で2要因間分散分析をして評価した.

結果:平均年齢,身長,体重,テスト前の投球速度は,それぞれ15.3±1.2歳(範囲:13~18歳),1.73±0.28m,68.3±11kg,30.3±0.7m/sであった.投球速度はテスト群で有意な増加(3.3%)を示した(P<0.001).肩関節の外旋はテスト群で4.3°の有意な増加が認められた.全体の傷害率はテスト群で24%であった.テスト群では4名が肘関節の損傷を受け,そのうち2名がトレーニング中,残り2名がトレーニング後のシーズンに損傷した.コントロール群は,研究期間中に負傷した投手はいなかった.

結論:6週間のウエイトボールの投球トレーニング・プログラムを実施することにより,投球速度が増加した.しかし,このプログラムは肩関節の外旋PROMの増加と傷害率の増加をもたらした.

臨床的関連性:ウェイトボールトレーニングは球速を向上させる可能性があるが,このコホート(母集団)において,怪我や身体的変化が顕著に増加しているため,注意が必要である.


現にハンドボールの投球指導の現場で,ウエイトボールを用いた指導をしている方もいらっしゃいます!ですが,その裏にある危険性を考慮してトレーニング処方しなければならないことがこの論文からも言えると思います.また,至適重量をレビューした論文もあるので,これからはそこもみていこうと思います!ですが,あくまで量的な研究であり,エビデンスとはなり得ますが,信じきるのは得策ではないでしょう.なので,1つの重さのボールだけでなく,数種類の重さを用意しておくことをお勧めします.現にこの論文でもトルク(関節の回転力)などの変化は変化が見られなかったことから,おそらく投球腕の肩の外旋角度の増大がいわゆるLagging back(腕の後方遅延)を引き起こし,運動依存力を高め,投球速度が上がったのではないかと考えられます.

トレーニングプログラム

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主な結果

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まとめ

・選手に合わせたウエイトボールが必要となるため,数種類の重さを用意しておく

・ウエイトボールによる力の発揮の向上は見込まれない.

・投球腕の肩関節の外旋角を大きくできる.

・ボール速度の向上にはつながるが,怪我の恐れが高いので,長期的なトレーニングはお勧めしない.


それでは!

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