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投球動作における上半身のSSCを効果的なトレーニング方法②

どんどん論文のオリジナルまとめを蓄積していこうと思います!あくまで,自分のこれからの指導や研究のために活用しますが,それが誰かのためになればと思いそれをnoteに投稿していこう思います.社会的な価値があると思えば,一部有料にしようかと思いますが,それが実現するのはもう少し先になりそうです.なぜならば,まだまだ自分にも知識が足りず,影響力もないからです笑

今回も人に伝えると言う観点を入れているので,手短に要点だけをまとめて書いていきます.

今回の論文はこちら.
『投動作における上肢の伸長-短縮サイクル運動の有効性:伸長局面におけるみかけ上のstiffness特性に着目して』

田内ら(2003),体育学研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/48/2/48_KJ00003390778/_article/-char/ja/

今回も前回の投稿した論文内容と重複する部分ではありますが,メディシンボールを用いた反動ありスロー(RT)と反動なしスロー(CT)を各パラメータで比較し,その違いやパフォーマンスへの影響をみていく論文になります.
前回と違う部分は体幹のSSCではなく,腕(上肢)のSSC運動をターゲットにしていますので,また新たなトレーニングへの知見が手に入りそうです.少し,研究の方法を述べた後,結論部分を言うので,あくまで参考程度に見たい方はそこまで見ていただけるだけでも有益な情報かと思います.

今回の測定した動きは以下の写真のようになっております.

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ベンチ台を地面と平行を0度として,30度起こした状態で実施しています.体幹はベルトで固定し,CTはそのままボールを投させ,RTは検者が上から落としたボールをキャッチした反動を用いて投げています.力やパワー,貢献度,バネ指数,平均パワーの増加率などの算出式は論文に記載されているので割愛します.

結論を言うと,
①やはり,投動作において上肢のSSC運動は良いパフォーマンス発揮に重要な役割を果たしている
②硬いバネのような使い方ではなく,程よく柔らかく上肢を使用することが重要である可能性があるが,最も競技力が高い選手は硬いバネのように上肢を使っていた.
③この論文では,2次元的な分析をもとに述べているため,投球動作などにそのまま応用するのは適切ではない.

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ここからは鈴木の考えが入ります.
⑴ 上肢においてもSSC運動を効果的に用いる必要があると言うエビデンスには十分になりうると考えられるため,1つの観点として今後トレーニングを考えていく材料にはなるだろう.
⑵ stiffnessが程よく柔らかく使える群が肩の屈伸の貢献度が大きかったことから,体の中心部分を効果的に使う必要があることが読み取れた.
⑶ ハンドボールの選手において,このような刺激にはなれていないことが容易に予測させるので,実施する場合はまず両腕行うプルオーバーのような方法で行うのが望ましいと考えられる(写真を参考に!).

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⑷ 投球動作においては,最も貢献度が大きいとされる肩の内旋運動があまり含まれないトレーニングになるので,1つの有益なトレーニング方法として考える必要がある.

以下はこの研究で引用されていた部分で,興味深い部分や参考になった部分です.

*投動作においても,上肢のSSC運動が生じているであろうと推察し,その重要性を指摘しているが(平野, 1988;桜井ほか, 1990;Mero et al, 1994).
*プライオメトリクスの基礎は,主動筋の活性化,伸長反射の誘発,弾性エネルギーの貯蔵と再利用などを効果的に利用することにあり,そのためには伸張局面から短縮局面へ素早く移行することが重要であるとされている(Bosco and Komi, 1979).
*プライオメトリクスの指導には,“素早く”や”関節 をできるだけ固定して”などいわゆる”硬いばね”のような動き(図子・高松, 1996)が強調されている.
*田内ほか(2002)は,上肢のピストン型のSSC運動における力発揮特性を伸張局面における上肢のstiffness特性と関連づけて検討した結果,下肢とは異なる力発揮のメカニズムが存在する可能性を明らかにし,上肢の運動においては必ずしも関節を固定して硬く振る舞うことが最適ではないことを示唆している.
*SSC運動の効果は短縮局面の前半に顕著にみられることが報告されている(Cavagna et al, 1968;高松ほか, 1991 ; Walshe et al, 1998).
*SSC運動の効果を十分に利用するためには,伸張局面から短縮局面へ素早く移行することが重要である(Bosco and Komi, 1979).
*予備動作(阿江ほか, 1979)あるいは伸長局面における筋の活性状態(Kyrolainen and Komi, 1995;尹ほか, 1999)および身体のばね的な振る舞い(堀 田ほか, 1997;田内ほか, 2002)が非常に重要である.
*上肢のプッシュUP運動を用いた研究によると(田内ほか,2002),上肢を”硬いばね”のように振る舞った場合において SSC運動の効果を十分に利用できない原因として,上肢は解剖学的な構造や本来からもつ機能特性の影響により弾性的な機能に乏しいことなどをあげている.
*筋-腱複合体に過度の伸張負荷がかかる場合には,筋の活性レベルが低下する(Gollhofer and Schmidtbleicher, 1988)
*筋の活性レベルが低下することは大きなパワーを発揮できないだけでなく,効果的に腱組織を伸張させることができず,SSC運動の効果を十分に利用できなくなる要因の一つであると考えられる(尹ほか,1999),
*Schmidtbleicher et al.(1988)は,過度の伸張負荷であっても,トレーニング後には筋の張力発揮に対する抑制機構が抑えられることを明らかにしている.

それでは!


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