片働きの子育て家庭は、言われるほど少数派じゃないしお金持ちでもない

「働かないママ」の味方 はどこにいるのか – yuco – Medium

上記の、2年前に書いた記事とその反響を読み返していて、これよい記事だなあと自分でも思った(笑)のと、今ならもっと追加できることがあると思うのでそれを書いてみたい。

以前書いたのは、共働きでも片働きでも同等の子育て支援があるべきということでした。

さいたま市の「子育て支援型幼稚園」のように、行政用語としての「子育て支援」はすでに「フルタイム共働きを支援するために子どもを長時間預かること」という意味で使われつつあるのが現実です。しかしそれ以外の幼稚園は「子育てを支援していない」のでしょうか?

まず何度でも強調したいことは、子育て中(小学生以下の子がいる)の家庭で片働きというのは別に珍しくないし、共働きに比べて特にお金持ちでもないということ。

よくあるのはこういうグラフを引っ張ってきて、共働き世帯が専業主婦世帯の約2倍になっているから、これからは共働き子育てが主体でうんぬんかんぬんと、子育て支援を語るときに、どうせ近い将来に片働き世帯は絶滅するから無視していこうという趣旨で語られていたりします。

そもそも世帯数の下部が切ってあるインチキグラフであり、そのせいで専業主婦世帯があと数年で消滅しそうに見えることに加えて、このグラフには子どもがいなかったり、子どもが十分に大きくなった世帯が含まれています。これをもって子育てにおける片働き世帯を無視してよいというのは行きすぎです。出生数は年々減っているのですから、まだ小さい子供のいる家庭自体が減っているのです。

2年前の記事でも引用した「東京の子供と家庭」の最新版(平成29年度版)が出ていたのでそこから引用すると、両親がいて小学生までの子どもがいる家庭のうち共働き世帯は61.5%です。つまり東京の子育て世帯において、共働きと片働きの比率はおよそ6対4で、共働きの方が多いが、片働きも無視できるほど少なくはないのです。末子が幼稚園に入ったら短時間パートの共働き(それまでは片働き)という家庭も多いので、子どもが未就学児ならば、片働き率はさらに上がるでしょう。

世帯収入は、「東京の子供と家庭」のリンク先PDFの6ページに載っています。平均収入は示されていないのですが、グラフを見るかぎりでは共働きの世帯年収の方が多いと思われます。「「1,000万円以上」の世帯は、共働き世帯が 28.5%、共働きでない世帯が 18.0%となっている。」と本文にもありますし、「800万円以上」をみても、共働き世帯の45.3%、共働きではない世帯の33.1%となっています。

東京のような大都市で待機児童問題があるのは、不動産と人件費が高く、保育園を運営するための自治体の出費が多くなるからです。不動産と人件費が高い理由は、東京には大きな利益をあげている大企業があり、そこで働く高収入の人が住宅を買うし、人件費の水準も高くなり保育士よりも高給の仕事があるからです。そんな大都市で夫婦が子どもを預けて働くことで豊かな生活をしているのなら、保育園に預けるお金は自己負担とするのが筋ではないでしょうか。今までは認可保育園の保育料は高収入の人ほど高くなりましたが(それも上限があり、残りは税金による負担でしたが)、いま検討されている保育料無償化では、無料になります。幼稚園よりも預かり時間が長い分、保育園に通わせる家庭の方が税金による支援が大きくなります。

韓国では以前から保育料を無償化していて、政策としては失敗だったと評価されているらしいのですが、それを紹介する朝日新聞の記事によると、「自宅で子どもをみる専業主婦世帯にも手当を出す」そうで、「無償化は先進国の潮流だが、半日分の幼児教育・保育料のみを対象とする国が多く、韓国や日本のように全日分を無料にするのは珍しい」ともあります。また女性の社会進出が進んでいるといわれる北欧の国々では、もちろん希望すれば保育園に入れるのですが、自宅で育てることを選ぶ場合は自宅保育手当というお金をもらえるそうです。これについて解説されている記事はたくさんありますが、一例としてフィンランドの場合

つまり、いま日本で検討されている、専業主婦世帯への手当なし、半日(幼稚園)よりも1日(保育園)預けた方が得になるという、子どもが家庭にいる時間がより長い片働き家庭への配慮が一切ない制度は世界的にみても珍しいことがわかります。

私が言いたいのは、片働き家庭であっても税金を払っているのに税金による再分配を受けられない・著しく少ないのはおかしいのではないか?ということです。これがお金持ちから取って貧しい人に回しますとか、障害のある子どもへの支援とか、子どもの虐待対策に税金を使いますということならばまったく文句はありません。

でも、共働きか片働きかは各家庭がそれぞれの事情で決めていることで、平均をみれば共働きの方がお金持ちなのに、共働き子育ての方が金銭的に支援されている現状があります。輝く女性とかなんとか、人手不足と少子化が問題になっている現在の日本政府にとって好ましい生き方をしている人だから、賞賛されるべき存在だから税金によるリターンがあるのだろうか、それは税金の再配分という意味で全くおかしなやり方だといつも思っています。

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