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ヒロアカの件で思うこと

名前は大事だ。どう呼ばれるかは大事だ。
という記事を書いた後にマンガの登場人物の名前が炎上してしまいました。
個人的には「無知」と「感覚の違い」なのだろうなと思うのです。

注意)
書き方でそう捉えられてしまう可能性はありますが
私自身としては、特定の作品や個人、団体へ責任を追及するような意図はございません。あらかじめご了承ください。

事態の内容

3日発売の「週刊少年ジャンプ」に掲載された人気漫画「僕のヒーローアカデミア」で、改造人間を生み出す医師が「志賀丸太」の名で登場した。旧日本軍の731部隊が戦時中、中国人捕虜らを「丸太」と呼んで生体実験を繰り返したとされることから批判が寄せられ、作者の堀越耕平氏は自身のツイッターで、名前を差し替える意向を明らかにした。

旧日本軍731部隊が人体実験をしていた際に使っていた隠語を登場人物の名前にしたことで、主に海外の読者から非難が起きています。
国内からはどちらかというと擁護する声が多く、表現規制にならないように考える兆しが強くあると思いました。

最近、非難で取り下げることが多すぎて(特に見てる側が)嫌になっている漫画アニメ業界という感覚があるので、余計に炎上している気がします。

隠語とは

ところでこの問題になっている単語は「隠語」だったといいます。
隠語ってなんだろう?と思って調べてみました。wiki先生。

隠語(いんご、Jargon)とは、ある特定の専門家や仲間内だけで通じる言葉や言い回しや専門用語のこと。

「専門用語」なんです。
一般的に社会広く使われる言葉ではないんです。

つまり生活として日本語を使っていたら、戦争で使われていた「隠語」が出てくる場面ってそうそうないと思います。

言葉を「使ってる」人と「知ってる」人の違い

第一に漫画の読者は「生活で日本語を使う人」を想定していると思われます。
輸出されて読まれていることは知っていたとしても「第一」には不自由なく日本語で漫画を読める層「生活で日本語を使う人」を想定しているでしょう。
漫画読むために日本語を知った人ではないのです。

編集部すら問題に気づかなかったのは「隠語としての言葉」自体を「生活で日本語を使う人」は知らないからなのではないか、と思うのです。
そもそも学校教育で戦争の史実を勉強したとしても、旧日本軍がいかなる「酷いこと」を各国にしてきたかはほとんど教科書上では語られません。
少なくとも、今の30代(私と同世代)の教科書では、旧日本軍の「悪い行い」は語られていなかったと思います。(南京のお話くらいでしょうか)

その状況で731部隊の「隠語」つまり「専門用語」まで知っている人はいるんでしょうか…
設定が直結していても、すぐに連想が及ばないのは「知らない」からなんです。

一方で「生活として日本語を使っている」と単なる「木の幹を切ったもの」でしかありません。
ただ、昔から「人の身代わり」として「木の幹を切ったもの」を使われることが多いと思われます。実際に使われたというよりそういう描写は漫画や時代劇を見ていても多いですよね。
忍者が入れ替わった時とか、刀の練習相手とか、人に見立てて何かを練習したりする場面ではよく「木の幹」が登場すると思うのです。
人に見立てた代わりとしての表現されるモノだ」という理解が「生活で日本語を使っている人」にはありますし、その表現は強く根付いていると思われます。

だから「人に見立てたもの」つまり「改造人間」というときに、その単語をつかうことは、生活日本語として一般的な感覚だとも思います。
逆に言えば当時の「隠語」として使うことになった理由もおそらく同じ感覚なんですよね…
そういう意味では本来は人に向かって使うものではない「名称」なんです。
だからこそ敵の名前だったんじゃないかなって思っていますが…。

「命名にあたり、作者や編集部にはそのような意図はありません」

こういう説明も「生活で日本語を使っている人」には納得です。

逆に「日本語を勉強」「日本を勉強」「日本との関係を勉強」していると
おそらくそれよりも先の戦争の内容に触れることも多いのではないかと推察します。
実際「生活で使われる意味」よりも先に「隠語としての意味」を知ってしまう。
そうやって知ってしまった言葉の印象って簡単には変わらないと思うのです。

全然重みが違う例えでものすごく恐縮ですが
「pen」と「apple」って日本では「なんでその組み合わせか」ほぼ皆んなわかると思うんですが、「生活で英語を使ってる人」にはサッパリわからなかったんだろうなって思いません?
この「言語感覚」としての「認知の違い」って似ているんだと思うのです。

BTSの原爆Tシャツの逆バージョン?

思い出すのはBTSの原爆Tシャツです。
こちらは事態を振り返った記事ですが、わかりやすく分析しているので載せておきます。

11月9日放送のテレビ朝日系『ミュージックステーション』に登場予定だった韓国のボーイズグループ、BTS(防弾少年団)の出演が急遽中止となった。
番組側は、メンバーであるジミンが過去に着用していた原爆投下の写真がデザインされたTシャツを問題視、「総合的に判断した結果」として出演見送りを決定したという。
BTSがナチス・モチーフの衣装を着たライブは、2017年9月に開催されており、すでに彼らがグローバルな認知を生み出し始めた時期と重なる。その時期にライブの衣装として当該衣装が選ばれることはまさに悪手であり、事務所として浅慮であったと言わざるをえない。
(略)
すなわち今回の問題は、グローバル化が進む第3次韓流ブームのなかで、ある意味で想定外の成功を収めたBTSだからこそ、生まれてしまった綻びであるといえる。

結論として引用した部分はナチの件の部分で原爆モチーフについては筆者はそれほど問題視していません。
ただ日本では「原爆」モチーフは忌避されていることを考えれば
殊、日本では特定の意図の有無に関わらず上の記事より強めの問題としての非難が集中することになることは必至で「浅慮」が対日本であったと言えると思います。
私が某コンテンツでビジュアル面に関わった時、爆発する時の煙の形は「キノコ型」にしてはならないという倫理規定があったくらいには、現実として「原爆」のモチーフは忌避されています。

一方でこの問題が起きる以前から韓国では原爆のモチーフが安易に使われることが多かったようです。

いずれも、原爆にまつわる映像を、被害者感情などを深く考えずに使っていることが、両者のコメントなどから読み取れる。
被爆者の感情を無視したとも言えるこうした問題が時折起こる背景に、原爆への関心が韓国内で高くないことがある。

幼い頃から一般的な学校教育で原爆の悲惨さを知っていれば、それをファッションにしたり「かっこいい」などとは思えない次元の話だというのは理解できます。

関心が高くないのが問題だと言うより知る機会すらないことの方が多いんじゃないかと思います。(ナチデザインについては日本人もやらかしてるし…)
−知らないんです。
戦争のこと、他国がどう受け止めたか、何がどう傷つくか、どういう意味を持っているか、なんてぜんぜんもう知らない世代が大人になっているんです。
そういう意味では「お互い様に知らない」のです。

別に痛めつけられてるのも「お互い様」だからいいじゃんとは絶対に言うつもりはありません。

みんなで意識が変わればいい

正直、私は漫画アニメ界の「非難からの変更」についてはアホかっていうくらい嫌気がさしている側のひとりです。嫌なら読まなきゃいいし、非難によって「倫理」という枠組みで表現規制が進んでいくのも嫌だというのが私のスタンスです。
傷ついたから変えろって言って良いなら
即刻「家族団欒シーンのCM」も「仲の良い高校生活の描写のあるドラマ」もすべて変えてほしいくらいですよ、私は。
でも責めない。それは私が痛いだけだから。

ただこの「戦争」にかかわる問題だけは少し違うと感じています。
それでも、国内向けに描かれてるのに国際社会向けにっていうのも重いという感覚は少し残ってるんですけども…
「日本の漫画アニメが世界に通用する文化」だって言うのであれば、国際社会ってことを意識しなきゃいけないでしょう。

「歴史」は変わりません。
各国が先の戦争でしたこと、受けた傷は脈々と受け継がれている部分があります。
それは私が原爆ドームで感じる心の痛さだと思います。
その痛みを嘲笑われて、嫌な気持ちがするのは当たり前です。

そしてそれぞれの受け継がれた痛みを知らないほど時間が経ちました。
その一方でそれぞれの文化的交流は多くなりました。

そして「知らなかったから良いじゃん」とも思いません。
「知らないわけがない!」って責めるのも違います。
それもまた思考停止なんじゃないかなと思います。
だからこそ「知らなかったけど、どういうことなの?」って進んでいくことは、できないんでしょうか。
歴史を知って、お互いの痛みを知って、
お互いにとっての戦争理解っていうのがあっても良いのではないかとも思うのです。

傷ついた記憶でまた傷つけ合うより、もっとお互いを知っていく方が幸せになれるんじゃないのでしょうか。

今回の件で言えば
先生や編集部を責めてる人はちゃんと事実と感情を説明する方が、
非難してる人を責めてる人はそういう事実と感情が存在する事を勉強する方が
よっぽど前に進むと思うんです。

個人的な気持ちとして、余計なことを言うと…
昨年さんざん上皇陛下の在位中の行動を報道で見てもなお、こういう世の中なのかと思うと「学び」ってなんなんだろと残念に思いました。あーあ。


読んでくれてありがとう!心に何か残ったら、こいつにコーヒー奢ってやろう…!的な感じで、よろしくお願いしま〜す。