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寺山修司『消されたものが存在する』の謎

図書館で寺山修司の詩集を借りた。 最近読んだ本の関係で詩に触れる機会が多くあり、詩に興味があったからだ。 どうして寺山修司なのか。詩に明るくない私でも名前を知っているくらいだから、有名な詩人なのだろうと思った。 私は、何かに新しく触れるなら、その世界で鉄板のものから入るタイプだ。 それに、寺山修司が好きな知人(Twitterのフォロワー)がいたのもある。 とにかく私は寺山修司の詩集を借りた。 目当てのものは別にあり、ついでに借りたから存在を忘れかけていたのだが、借

    • 太宰治・人間失格の考察

      この世には、絶対にばれない嘘がある。それは、自分がどう思っているかを偽ることだ。 もしあなたが目の前の人を殺したいほど憎んでいても、笑顔を貼り付け、技術の親切さで以て接していれば、相手には決してわからない。自分を好いてくれていると思った相手は、表面的には関係性を続けながらも、実は心の中であなたに嫌悪を向けているかもしれない。言葉で「あなたのことは嫌いじゃありません」と告げられれば、それ以上は言及できない。人の心は、当人だけがその真意を得る。 嘘は必ずしも悪い行為ではない。

      • 芥川龍之介・地獄変の考察

        芸術家は、芸術を求めるあまりしばしば人の道を踏み外す。 画家・良秀は醜く老いた容姿に傲慢な性格から周囲には忌み嫌われていたが、その腕前は超一流。大殿様にも認められるほどの芸術家であった。 そんな良秀には愛する娘がいた。娘は良秀には似ても似つかぬ愛嬌の持ち主で、周囲からはいたく好かれていた。大殿様も気に入り、なんとか良秀のような変人から引き離そうと勘案するが、良秀は頑として拒否しようとする。素晴らしい絵の礼として好きな褒美を与えようと大殿様が言うと、その度に娘を大殿様の屋敷

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