「アイアンクラッド」

個人評価:★★★☆☆

 ジェームズ・ピュアフォイ主演

 王の権力を制限する大憲章「マグナ・カルタ」に署名させられ、激高するイングランド王のジョン(ポール・ジアマッティ)。大憲章を無効にして、それまでの権力を取り戻そうと、彼は傭兵(ようへい)軍団を引き連れて暴れ回り、国を混乱状態に陥らせていく。そんな状況に危機感を覚えたオルバニー卿(ブライアン・コックス)は、テンプル騎士団の騎士マーシャル(ジェームズ・ピュアフォイ)などを集めて反乱軍を結成。ロチェスター城に攻め入ろうとするジョン王たちを迎え撃とうとするが、1,000人もの軍勢を誇る彼らに対し、反乱軍はわずか20名だけであった。 

 あけましておめでとうございます。久々の更新となりましたが、年末に観た「インターステラー」が余りにも衝撃的過ぎて他の映画で薄めたくなかったのか、むしろ他の映画観ても「インターステーラー」で希薄されて楽しめないと思ったのか、自分でも不明ながら正月休み中はまったく映画を観ないというかなり珍しい事態となってました。丸々一週間以上映画を観ない日なんて、hulu契約しての数年間で初めてかも知れないです。

 で、年明け一本目は表題の「アイアンクラッド」を視聴。キャッチフレーズは「ハリウッド版7人の侍!」と、もろに「荒野の7人」のお株を奪う感じですが、キャッチフレーズを考えたのは恐らく日本の配給側なので、映画制作側に問題はないということで。

 13世紀辺りのイギリスが舞台になっている映画だけど、この時代ってまさに群雄割拠というか、ヨーロッパがかなりややこしいことになっているのか、人間関係諸々が非常に難解なんで個人的には歴史に疎い時代だったりする(他も詳しい訳ではないが)。それでも、十字軍が遠征の過程で「異教徒」の民衆に対してどれほど酷いことをしたかというのは知ってはいたので、ジェームズ・ピュアフォイ演じる(関係ないけどジェームズ・ピュアフォイってヒュー・ジャックマンに似てる気がする)主人公のトーマス・マーシャルが「十字軍の騎士」の段階で正直少し観るの止めようかなと思った。

 たま~に、「キリスト教」を全面に推し出した、妙に宗教臭い映画が洋画ではあったりするので、その類かと思われたからだ。しかし、冒頭でこの騎士は「剣を帯びず」「声を出さない」誓いを立てた設定となっており(この設定自体は直ぐに破棄されるのだが)、「おや?」と興味を持って観続けることに。

 明言はされていないけど、どうやらこの騎士はまさに「十字軍遠征での神の御名のもとになされた残虐行為」で信仰を見失い、剣を捨て言葉を捨てたという設定の様子。しかし、ジョン王が傭兵(あらすじでは書かれていないが、どうやらスコットランドのハイランダーらしい)を雇い領地回復しようと攻め入ってくることで、民衆のめに剣を取り言葉も話すようになる。

 どの程度まで史実に忠実なのかは不明だが、勧善懲悪のようにはなっておらず、先に書いたように主人公側である十字軍の残虐行為を匂わせたり、ジョン王に関しても「失地王」と領土を持たない王が王であるために持たなければいけない矜持であるとか、傭兵のスコットランド兵も王の傭兵として働かなければ、教皇の権力によってスコットランドが攻められるなど、全員が時代の流れの中で「やらなくてはいけない」ことを行っているだけとの演出となっており、片方に加担する視点でないところが歴史ドキュメントとしての面白みにつながっていたと思う。

 ただ、ラストの盛り上がりには少し欠けるかな? 20名で城に閉じこもり、1000名の敵を相手にするという絶望的な状況の中、実際に1人死に、2人死にと、最後は主人公、王妃、従者の若者の3人になってしまうのだけど、「フランス軍」が加勢に来れば助かるというのが分かっていて、恐らくこの3人は生き残るんだろうなというのが薄々見えるからかも知れない。

 こういう場合、いっそのこと主人公殺して、年若い従者が覚醒するとかだと、観客的にはどう感じるんだろうか? 


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