絵のない絵本、音のない音楽

正月、Eテレ「switch」の再放送で三浦大知×内村航平を見た。

身体で美を表現する二人。ジャンルは異なれど、飽くなき追求を行うもの同士、の対談は面白かった。

内村航平の、口下手ながら訥々と語られる体操愛や理想の演技の話も良かったが、このところ三浦大知にはまっている私は、大地くんパートを集中して見た。
大地くんのターンは、ソロデビューしたライブハウスで行われた。ダンスの解説がものすごく面白かった。
「振り付けに緩急をつけると魅力が増す」「同じテンポで踊るのではなく、音楽に合わせて止めたり、早めたりすると見所が生まれる」。
実演を見たが、「同テンポ」バージョンと「緩急バージョン」は、全然違うのだ。一瞬の間に引き込まれる。まさに、『芸は間』だ。洗練って間なんだな。バレエとか古典ものでも、ブレスや微妙なニュアンスが、美を引き立てる。そういえば、ピアノを教えてた時、「言葉の“綾”、というでしょう。音の“綾”を作りなさい」なんて言ってたな、偉そうにな。

あと、今回の新曲「cry&fight」は、メロディとダンスが別物だから難しいとの事。歌は声だけで、ダンスは他の音(バスとか刻みとか)を豊かに表現しているそうな。声と身体で別のことやってりゃ大変に決まってる。つまり、一人オーケストラみたいなもんなんだ。
それを踏まえて、「cry&fight」のダンスを見ると改めてレベルの高さに驚く。そんな複雑なことが出来るんだ、という感じ。無音ダンスは音のない音楽だ。ダンスが音楽になってるんだ。そして、オケが入るとさらに凄みが増す。彼の手足を通過した音には、光と色がついて拡がり、煌めく。歌詞と、音と、身体でポリフォニックに語っているようにも見える。
余談だが、浅田真央ちゃんのステップシークエンスも同じだ。ステップと上半身が完璧に音楽に合っている。いや、音楽の隅々を表現している。見ているこちらの身体まで開かれていくような気がする。

よく、良い演奏を「文学的な演奏」というが、「音楽的なダンス」というのもあるんだな。
大地くん、新しい世界の扉を開いてくれてありがとう。またバナナムーンに遊びに来て、ヒムペキ解説付きダンスを踊ってくれたら嬉しいな。

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