夢の中で
先日頂いた日本酒。辛口で美味しかった。
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Twitterで数年来、フォローはせずにリストに入れて観察している人がいる。
彼女は恋愛妄想癖があり、有名人に執着している。会ったこともないテレビの国の人と、心が通じ合っていると思い込んでいるのだ。
初めて見つけた時、彼女はとある芸人に恋をしていた。
テレビやラジオでの発言を、自分への(愛の)メッセージだと言い張ったり、分厚いファンレターを書いては嬉々と送ったりしていた。
また、言動を勝手に解釈し、待ち合わせ日時を「ここだ」と決めつけて、ひたすら待っていたこともあるようだ。当然本人は来ない訳だが、彼女は「約束を反故にされた」と、怒りをぶちまけていた。怖い。怖すぎる。
界隈では有名で、ネタにされていた時期もあった。
今日たまたま、久しぶりに彼女を入れたリストを開いた。
現在はとある人気ミュージシャンに入れ込んでおり、相変わらず激しい恋慕のツイートを記していた。そして、熱いファンレターも書いているみたいだった。
あまりの変わってなさに慄いた。もし友人や同僚がこんなだったら、どう接したら良いかわからない。
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人は誰もが何かに依存している。
それは身内や恋人だとかペット、或いは食べ物、趣味などであることが多い。そして映画やドラマ、音楽などの「作品」の人もいれば、そのご時世の「スター(著名人)」である場合もある。
ただ、彼女のケースは「誇大妄想の精神疾患」にあたると思われる。明らかに異常だ、会ったこともない人からレスを貰えてる、と思い込んで会いに行くみたいな行動はね。
とは言いつつも、自分も今は高橋一生に夢中だし、又吉さんは変わらず愛しているし、ドラマ「カルテット」面白かったなーってたまに見返してるし、人のことを言える立場にはない。まあ、「直虎」を楽しみに今週も頑張るか、くらいに収まってるから、疾患レベルではない、と思います。が、現実逃避対象を複数持って楽しんでいることに変わりはない。
つまり、ちょっと近いな、と感じるから、気になるのだと思う。
誇大妄想、こと恋愛妄想の原因ってなんだろう。
異性とのコミュニケーションの中で、過去に何かトラウマが生じたとか。後は両親との関係もあるのだろうか。
漫画「サイコドクター」では渇愛感のある生育歴と、レイプ体験や行き遅れの孤独感などが引き金になる、と描かれていた。
そういえば高校時代、恋愛妄想する友人がいた。が、えらく陽気だった。とあるバンドマンに夢中で、よく「もし〇〇さんとこんなことがあったら…」と嬉しげに語っていた。
夢見がちで天然だったけど、利発で人柄も良く、何より空想癖を隠さず楽しんでいた。厳格な父親との軋轢があったはずだが、思春期には良くある、という程度だったと記憶している。
そういう人は少なくないのではないか。2次創作の世界で遊ぶ、みたいなさ。
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彼女は恐らく20代ではない。少なくともアラサー以上だと思う。そして現実に恋人はいないだろう。
この先も、コツコツ妄想相手を変えながら、夢の世界で恋をしていくのだろうか。この先、夢の外へ出る事はあるのだろうか。
彼女をモチーフにした小説を書いてみたい。ついそう思ってしまう。村田沙耶香っぽくなりそうだ。
見ていると、幸せそうな時もあるが、長く妄想するうちに必ず相手に(無論勝手に)失望し、文句を言い、やがて新しい対象へ移る。ぜんたい、幸福なのだろうか。
案外本人は満たされているのかもしれないし、野次馬根性と余計なお節介が重なった気持ちだとは分かっているが、彼女に救いあれ、と願うばかりだ。その心に嘘はない。多分。
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