見えてきたもの

あの日から、一週間以上が経過した。
今日は2018年9月15日。本日から、延期されていたオータムフェストも開始。よく晴れたおかげで、初日は賑わっていたようだ。

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物流は、徐々に回復している。
昨日の夕方、スーパーへ行ったら肉・野菜はほぼ通常モードになっていた。
ただ、豆腐・納豆、卵などはまだ足りていない。水やカップラーメン、乳製品も、完璧とは言い難く、時間帯によっては棚に隙間が空く。どの店も、ちょっとずつ不足がある感じだ。
電池や懐中電灯などは、停電直後よりは入手しやすくなっている。が、普段よりは買いにくい。
我らがインフラ「セイコーマート」は、通常より早めに閉める店がいくつもある。
そして、節電だ。
今週は、「8:30〜20:30に2割減」と謳われていたが、なかなか達成は難しかったようだ。
地下鉄は現在、平日10:00〜16:00の本数を減らして対応している。JRも、減便・徐行がまだ多い。全休か、全便運行なら楽だそうだが、調整運行は現場が大変らしい。知り合いのJR職員からも、くたびれ果てたメールが届いていた。
お店関係は、大分ムラがある。ショーケースの灯りを消している店もあれば、煌煌と看板をつけているところもある。「暗いと、気分がねえ」なんて声も聞いた。
自分は、コンセントをマメに抜くとか、家事を早朝か夜にやるなど、工夫しているつもりだが、正直うまくいっているのかどうかは分からない。
これから冬になる。北電は今、むちゃくちゃ頑張ってくれているが、みんなで協力しないことには始まらない。

……
先日、酒場へ向かうべくタクシーに乗った。
運転手さんに「どうですか?」と聞くと、食い気味に「ヒマです。まずいです」との返事。
「僕、昨日、朝から夜の2時まで乗ってたんですけど、付いたの、たったの4本ですよ。もう、どうしようもないですよね」
「うわ、そうなんですか。キツいですね」
「みんな、こういう部分(交通費等)から、引き締めますからね。そもそも、すすきのに出る人も少ないですし」
確かに、夜の街は全体的に静かだった。そして少しだけ暗かった(物理的に)。
ビール園などは、観光客の大キャンセルにより、店員の方が多い日もしばしば、とのこと。飲み屋で仕入れた情報によると、現在、飲食はかなりの打撃を受けており、バイトを休ませたりしている、と聞いた。つまり、アルバイターらは収入が激減しているのだ。これは飲み屋だけではあるまい。バイト雇用の人たちは、最近怖い顔をしている率が高いもんな。
その日は、行く先々の飲み屋で毎回引き止められた。それだけ、人が入っていないのだろう。
北海道は基本、低空飛行の景気でお馴染みだ。全国規模の会社も、こちらに支店を出す際は、形式上別会社として、給料等を地元の価格に合わせるくらいである。
つまり、それでなくても「試される大地」が、更に危険水域へ踏み込もうとしているのであります。
ただ、土木や建築・建設関係の人たちは皆、深酒しないように気をつけていらした。需要があるという事なのだろう。

……
体調を崩す人も、少しずつ増えている。
停電疲れに加えて、季節の変わり目でもあるから尚のことだ。
渦中にいると、本当に情報が入りにくい。ラジオのみだ。ただ、日頃から慣れている人でないと、音声情報だけで状況を把握するのはとても難しかったようだ。
実際、通電後にテレビを見て、初めて状況を把握できた、という人も多かった。
現実を突きつけられてから、更に疲労が増した人もいたのかもしれない。

また、電気復旧が早かった地域の人や、元々の備えがあった人、或いは「なんとかなるでしょう」と大らかに構えていた人が、「騒ぎすぎでしょう」などど変なマウンティングをしている、という話も見聞きした。
たとえ、同じ条件下にあったとしても、捉え方は人それぞれだ。自分が無傷だったからといって、そうでない人に刃を振りかざしていい訳ではない。
こういう「際」になると、どうしても人間が露わになる。
逆に、意外な人が周囲を支えようと奮闘したり、強さを発揮したり、という場面も見た。
何れにしても、虚飾や無理が剥がれ落ちたのかな、と思う。

物流が回復し、景気が上向きになったとしても、跡が残るだろう。良くも悪くも。一度壊れたものは、決して元の状態には戻れないのだ。
生々流転は世の常であります。

……
あの日、電気が止まった日。
都市部なのに、音が極端に減った世界。右往左往する人の声が妙に近くに感じられた日。
窓から見えたのは、秋をはらんだ風が、優雅に街路樹を揺らす光景だった。こんなにひどい日なのに、風は知らん顔して木々や建物をなでている。
とても変な感じだった。それは、身近な人が亡くなったのに、世の中が普通に動いている時に去来する疎外感に似ていた。
その時、突然に悟った。地球は生き物なんだな、と。
人間は生活向上のため、脳内ワールドを地上に具現化した。便利な道具で世界満たし、アスファルトの上に社会を作った。快適さはしばしば、生きる厳しさを忘れさせる。
でも、そんなことは地球には関係ない。ヒトの社会がどう変わろうと、容赦無く星は動く。

つい真面目になってしまったが、あの日、「日常なんて簡単に崩れる、でもそれが世界の全てではない」と痛切に感じたのでありました。

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どう考えてもこれから大変になりそうなのだが、結局は「やるしかないっしょ精神」で、頑張るしかないのな。助け合いながらさ。

あと、道外の皆様よ、ぜひこちらへ遊びにいらして下さい。ご飯も空気も美味しいですよ。

こんな感じで、お待ちしております。

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