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岩のように動かない オペラ好きの日記

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「オペラは人生を豊かにする」と信じる愛好家目線で、映画や漫画、食べ物等々にかこつけたりしながら、全く知らない方にも興味を持ってもらえるよう、オペラの魅力をお伝えしたいと思っていま…
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記事一覧

【オペラ日記 14】9/16も必聴 マエストロ・ムーティ指揮「アッティラ」奇跡のオペラ公演

いまだ残暑が続いていますが、オペラの季節が戻って来ました。 イタリアオペラの巨匠、マエストロ リッカルド・ムーティが、オーディションで選ばれた若い指揮者を直接指導する「イタリア・オペラ・アカデミーin東京 」が9/3から開催中です。コロナ渦を挟んでもさらにパワーアップして続いている、東京・春音楽祭主催イベントの第4回目です。 すでに指揮受講生によるお披露目演奏まで終了し、あとはマエストロ自身による世界の一流歌手を呼んだ演奏(舞台セットのない演奏会形式)が残るのみです。昨晩

【オペラ日記 13】初オペラには世界最高峰の演奏を – 英国ロイヤル・オペラ&METオーケストラ来日公演

「初めて観るオペラはどんなものがいいですか」というご質問には、いくつか答え方があると思います。 演目で言うなら、よく上演されていて単純に泣ける「椿姫」(ヴェルディ作曲)、「ラ・ボエーム」(プッチーニ)などがいいとはよく言われるでしょうが、これはどちらもはかない女性の人生が描かれていますので、決め付けはよくないものの、女性の方がより感情移入しやすいかもしれませんよね。娼婦やパトロンなどが出てくるので、まだそういった社会背景の理解が難しいお子さんには不向きでしょう。 子ども向

【オペラ日記 12】「ロベルト・アラーニャ ソロコンサート」スターテノールのスタイリッシュな歌を堪能

昨日6月9日(日)、サントリーホールで開催された、イタリア系フランス人テノール、ロベルト・アラーニャのソロコンサートに行ってきました。 イタリアオペラやフランスオペラでどの版がよいか迷ったら、往年の名盤から選ぶなら、三大テノールの一人プラシド・ドミンゴ、近年のものならロベルト・アラーニャなら間違いないのです。二人ともレパートリーが広いのに、一つひとつの役の完成度が高くて、裏切られることがありません。 ですので、これまであらゆる演目でアラーニャの映像を観てきた訳ですが、今回

【オペラ日記 11】6月に2つの映画版が観られる、長崎が舞台のオペラ「蝶々夫人」

オペラをせっかく観るなら、世界で有数のレベルの公演を観て、オペラの世界感と興奮にどっぷりつかっていただきたいところですが、オペラ公演は大がかりですし、昨今の円安により、特に海外の歌劇場による日本への引っ越し公演のチケット代は価格上昇が止まりません。 大枚をはたかなくても、最近は海外のオペラ公演を、公演日からほどなくして、数千円で日本の映画館でも観ることができます。この2024年6月には偶然にも、日本に縁があるならタイトル位は馴染みであるであろう、プッチーニ作曲「蝶々夫人」が

【オペラ日記 10】没入感がハンパない、メトロポリタンオペラ 「ロメオとジュリエット」

5/10から上映しているMETライブビューイングの「ロメオとジュリエット」を観ました。ニューヨークでの今年3月の公演の映像です。 グノー作曲のフランス語のオペラですが、原作は言わずと知れたシェークスピアによる戯曲です。 というわかりきった筋ではあるのですが、オペラはそのロマンティックさ、悲しさを倍増させるのが得意だと改めて実感しました。 ジュリエット役は若手実力派アメリカ人ソプラノ、ネイディーン・シエラ。すでに世界的なスター歌手で、METライブビューイングでもすっかりお

【オペラ日記 9】今年は2回味わえる大興奮 東京春祭 マエストロ・ムーティ指揮「アイーダ」

毎年楽しみにしている東京・春・音楽祭のマエストロ・リッカルド・ムーティの演奏会形式のオペラ公演。2024年はヴェルディ作曲「アイーダ」でした。 これまで「リゴレット」(2019年)、「マクベス」(2021年)、「仮面舞踏会」(2023年)と続いてきましたが、今まで同じ演目で2公演に行ったことはありませんでした。オンライン配信で我慢したときもありましたが、毎年想像を超えた大興奮で終わるので、今回は予定されていた2回とも、東京文化会館に出かけました。 4/17(水)の公演は夜

【オペラ日記 8】残り1公演(3/23) おすすめでしかない!小澤征爾音楽塾オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」

もっとタイミングよく紹介するべきだったのですが、結局ギリギリになってしまいました。 昨日(3/20)、横浜の神奈川県民ホールで小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXX モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」を観てきました。多分今年日本で観られるオペラ公演の中でも、お得感いっぱいの公演だろうと思っていましたが、その通りでした。 結論として、オペラや特にモーツァルトのオペラに興味があるという方、はたまた、「コジ」は好きなオペラなので公演は選びますという方にも、3/23(土

【オペラ日記 7】Kバレエ「眠れる森の美女」でオペラについて考える

UnsplashのNihal Demirci Erenayが撮影した写真 ウェブ雑誌「ミモレ」でブロガーをしている小黒悠さんを始め、バレエ好きのお友だちに誘われて、K-BALLET TOKYO(Kバレエ)の「眠れる森の美女」を観てきました。東京、大阪、福岡の全15回全て完売の大人気公演です。 大昔のクリスマスに「くるみ割り人形」を観たことはあったけれど、記憶がほとんどなく、それ以降はガラ公演やオペラのバレエシーンを観る位で、バレエの全幕を観るのはほぼ初めてでした。 「眠

【オペラ日記 6】イブ・サンローランの映画でオペラについて考える

特に行く予定ではなかった、国立新美術館で開催中の「イブ・サンローラン展 時を超えるスタイル」に行ってきました。 最近、動画配信サービスでイブ・サンローランについての映画を、今更ながら2本立て続けに観たことがきっかけでした。 他にドキュメンタリー作品もあるのですが、2014年に、イブ・サンローランの伝記的映画が以下の2本制作されています。 私はこちらを先に観て、結構スキャンダラスだなぁ、と驚いていたら、 映画「サンローラン」予告編 メゾンが公式に認めた、こちらも見つけ

【オペラ日記 5】新星トッレ嬢の「フィガロの結婚」を堪能 ミラノ・スカラ座 “La Scala TV”

Photo by Martin Anselmo on Unsplash なかなかタイムリーにレポートできないのが悩みですが、10月17日(日本時間10月18日)にライブストリーミングがあった、ミラノ・スカラ座の「フィガロの結婚」を観ました。 スカラ座の公演は、今まで基本的にイタリア国内でのテレビ放送でしか観られなかったのですが、今シーズンから、”La Scala TV”という有料配信サービスができて、日本からでも問題なく観られるようになりました。 ウィーン国立歌劇場の総

【オペラ日記 4】ローマ歌劇場来日公演2023「トスカ」を観て、オペラ引っ越し公演について改めて思った

9月に来日していたローマ歌劇場の公演の千秋楽から、すでに二週間近くが経ってしまいましたが、備忘録までに書いてみます。 私は今回、プッチーニ作曲「トスカ」のみ、4公演中3回(9/17、24、26)観ました。「椿姫」もよかったと聞いていますが、「トスカ」の方も総合的に非常に満足の行く体験でした。 海外の歌劇場がオーケストラも合唱も、壮大な舞台装置もまるごとやってくる引っ越し公演は、コロナのせいで数年ぶりのことでしたが、やっぱりいいものだなぁと素直に思えました。 「トスカ」は

【オペラ日記 3】ローマ歌劇場来日中 「トスカ」あと2公演間に合います

現在、ローマ歌劇場が来日中です。 アフターコロナのオペラ来日公演として、今年6月にパレルモ・マッシモ劇場が来て、イタリア・オペラの空気を再度日本に届けてくれましたが、今回のローマ歌劇場はさらに大がかりです。やっとフル装備のオペラ引っ越し公演が帰ってきました。 演目はヴェルディ作曲「椿姫」とプッチーニ作曲「トスカ」の2つですが、私はトスカの方に集中することにしました。 「トスカ」はローマ歌劇場の前身の劇場で1900年に初演で、ローマ歌劇場の思い入れが強い作品です。往年の大

【オペラ日記 2】表も裏も楽しめる『のだめカンタービレ』アンコール オペラ編

遅ればせながら、オペラ好きとして読みたいと思っていた、二ノ宮知子作『のだめカンタービレ』の「アンコール オペラ編」をやっと読みました。 『のだめ』は大好きで、ドラマや映画は全て観ていましたが、原作漫画の方は途中まで読んで放置してしまっていました。オペラ編だけを読むよりも、本編の方も読み直そうと思って、2021年~2022年に発行された「新装版」(全13巻)をこのほど読破しました。 「新装版」には、書下ろしページも多数含まれていて、未収録ストーリーも入っているので、すでに『

【オペラ日記 1】 はじめまして

「オペラは人生を豊かにする」 オペラ好きの私はそう信じています。 「オペラ」は歌を中心に音楽によって進行する劇です。クラシック音楽の中でも別物扱いの感じがしますし、舞台芸術としても「高尚」で近付きがたいと思われがちです。 まず、歌詞が外国語なのが不利ですよね。加えて、歌手や合唱、オーケストラ、衣装だ舞台装置だ、と、たくさんの要素があって、チケット代が高くなりがちです。上演時間も長い。 敬遠したくなるポイントが盛りだくさんですが、実はそんなに小難しいものではないし、オペ