第2章 約束を守らないことに関して

本有料マガジンでは、「中国人とうまく付き合うために我々が理解すべき3つのこと」を説明しています。本記事は、その第2章として、3つのことの2番目、約束を守ること/守らないことに関して説明します。なぜ中国人は約束を守らないのか。

2-1 中国人が約束を守らない具体的事例

日本人から見た中国人の印象のひとつに、「中国人は約束を守らない(平気で約束を破る)」というのがありますよね。同じように、「平気で嘘をつく」というイメージもある思います。「(中国人は)息を吐くように嘘をつく」というフレーズさえもときどき目にします。これらは中国人と付き合っていて、ずいぶんと悩まされるものです。そしてこれらが、中国人の悪いイメージの大きな原因になっているのは間違いありません。
※約束を破ることと嘘をつくことは、まったくに同義ではないですが、中国人のこれらの行動は同じ理由に基づく行為なので、以降は、嘘をつくことも約束を破ることに含めて説明します。

ところで、どんな風に中国人が約束を守らないのか。
例をあげると以下のようなものだと思います。

【仕事上の契約や約束が守られない】
①決められた仕様通りの作業をしない。
②作業や製造品を手抜きをする。
③納期は守らない。
④監督人がいない作業は手を抜く。さぼる。
【アポのキャンセル】
⑤面会の約束はドタキャンがしょっちゅう
⑥デートの約束はいつもキャンセル。またはドタキャン。下手したら連絡なしのすっぽかし。
⑦というか、デートのお誘いをしたのに、返事すら来ない。
【時間を守らない】
⑧時間に遅れてくる。時間を守らない。
【前言撤回、虚偽の発言】
⑨言っていることが毎回変わる。前言をすぐに撤回する。
⑩平気で嘘をつく。
⑪自分でできもしないことをできると言い張る。実行前は調子のいいことを言って風呂敷を広げるが、いざ実行の段になると言ったことと全然違う。
【応用問題】
ケース1:仕事を依頼しておきながら、所定の報酬を支払わず、音信不通。
ケース2:頼みごとをしておきながらすっぽかす。
ケース3:不動産物件の引き渡しの際に最後の家賃を払わない。最後の光熱費を支払わない。
ケース4:月額で支払っている契約を打ち切るとき、最終月の支払いをしない。
ケース5:購入したマンションの内装が半年かかっても終わらない。
ケース6:納品時のトラブル(検収後の作業が取り決め通りなされていない)。

ここに掲げたこと全部が約束を守らなかったケースではないです。ですが、その根底は、約束を守らないことと同様の原因に起因する行動です。
※ただし一部は、前章で説明した「面子」も関係しています。

中国人の皆が皆がこうだとは申しません。しかしながら、私自身、過去に大勢の中国人と接してきて、実際に上記のいくつかを体験しました。似た例を含めれば、ほとんど全部体験したと言ってもいいでしょう。

ある程度長く付き合った中国人の場合、最低でも1回は、上記の何等かの行動をしてくれました。付き合いだして最初のころは、そんな目に合わずに、ああ、この中国人だけは約束を破らない、誠実な中国人だ、と思っていても、長く付き合えば、いつか何かしらやらかしてくれます。それはけして、最初のころ猫をかぶっていたわけではなく、単に、約束を破る機会(?)に恵まれなかっただけのことでした。

もちろん、私が接した中国人なんて、13億人いるといわれる中国人の中のほんの一部です。ひとことふたこと会話を交わしただけの相手でも、せいぜい1000人。それなりに深い付き合いをした中国人はもっと少なく、高々100人、200人といったところでしょう。しかも、全員から同じ目にあったわけではないです。でも、日本人や欧米人だったら、たとえ1万人つれてこようが、10万人つれてこようが、あり得ないような行為を、多くの中国人がやらかしてくれました。間違いなく中国人は我々と違います。

一度約束を破られる経験したら、こちらも学習します。二度と同じ目に合わないように対策を講じるわけです。すなわち、同じような約束はしないとか、同じ約束をしても、被害を受けないような段取りを組むとか、逐次念押しするとか。そういう対抗手段も講じるわけですが・・・彼らは、手を変え品を変え、約束を破ってくれました。別に彼らがこっちの裏をかこうとしているようでもないのですが、彼らの行動は先読みは不可能です。なので予防をしようにも限界があります。それくらい、思いもかけない行動をとられました。私は、彼らと行動するたびに、衝撃を受けました。

そして、約束を破られること以上に衝撃的だったことは、彼らが皆「善人」だということなのです。普段接している限り、ほとんどの中国人は善人です。明るくて真面目で、面子にこだわる意固地な面はあるにせよ、勉強熱心、仕事熱心。身を粉にして頑張る人達です。筋の通らないことは基本しない。彼らはけして悪人ではない。それなのに、信頼している相手からこのようなしうちを受け、ダブルでショックとなりました。

こと約束に関する限りは、彼らは人が変わります。あるとき急に悪人に変身します。この身の代わりようには、どうしてもついていけません。いったいどうしてなんでしょうか。


2-2 中国人の約束に対する考え方と、それに対しての4つの素朴な疑問。

といった状況下、長年数多くの中国人と接する中で、私はある結論を得ました。彼らの行動しくみがわかったのです。彼らは、決して約束を守らないわけではないのだと。むやみやたらに嘘をつくわけでもないのだと。むしろ、日本人や欧米人以上に、約束に忠実だし、正直なのだと。実際中国人自体はこういいます。「中国人にとって、約束を守ることは人生で最も大事なこと。約束を守らない中国人は、中国社会でも生きていけない。」と。そう、中国人が約束を守らないという見方は実は正しくはありません

と、こんなことを書くと、皆様からは、「頭が狂ったのか?」と言われそうですね。そりゃあそうですね。前節では、さんざん「中国人は約束を守らない」と書いておきながら、いきなり前言を撤回して・・・。まるで、約束を守らない中国人のようですが(笑)。なので狂ったと言われてももっともなのですが、これにはそれなりの合理的な理由があります。

実は、中国人の「約束を守る/守らない」には、からくりがあるのです。しかも、きわめて単純です。それはどういうことなのかというと・・・。

「中国人は自分の利益が得られない約束は守らない。」

ということなんです。非常にシンプルです。もう少し厳密に言うなら、「守るよりも破ったほうが自分の利益が大きくなる約束は守らない。」となります。守ったら損をするような約束や破ったほうが得をするような約束は守らないのです。逆に、破るよりも守ったほうが利益になる(または守ったほうが損をしない)約束なら、確実に守ります。

と書きますと、今度は別のツッコミが入るかもしれませんね。
「自分が損をする約束を守らないのは当たり前じゃないか。誰だって自分の利益にならない約束を守らない。それは中国人に限ったことではないのでは?」と思われるかもしれません。実はこれは、それほど当たり前のことでもないんです。少なくとも中国人と我々の間には大きな違い、隔たりがあります。ただ、簡単に説明できないので、これは「素朴な疑問①」として,のちほど改めて説明するということで、もう少し補足説明を続けます。「中国人は自分の利益が得られない約束は守らない。」というのを言い換えるならば、

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