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NTLive Small Island

National Theatre Live “Small Island”、記念すべき久々の映画館復帰をしました。
公開期間が短いので待ちきれず。

National Theatre at homeで近々YouTubeでも公開されるけど、字幕で見られるのと、なによりも幕間のインタビューを聞いたり劇場の観客の雰囲気をより近く味わえるのは映画館ならではの贅沢。
舞台は第二次世界大戦中のジャマイカと英国。
「母なるイングランド」に憧れ、ジャマイカから海を渡ってロンドンにやってきた、教師を志すホーテンス。
イギリスの田舎町リンカンシャーで両親の農場を手伝いながら、新しい生活を夢見てロンドンにやってきたクイーニー。
二人の女性の人生が戦後ロンドンの街で出会い、交錯していく。

二人の女性がそれぞれロンドンに来るきっかけになるのが「結婚」だということがすごく際立っていた。

ホーテンスはロンドンに渡るため同じくジャマイカ人で弁護士を目指すギルバートと結婚。
クイーニーは両親を残しロンドンに移るためロイズ銀行に勤めるバーナードと結婚。

ギルバートとホーテンスは、クイーニーが大家を務める下宿に住む。(クイーニーの夫バーナードは戦争に出て長い間戻ってこなかった)
ホーテンスとクイーニーをさらに意外なところで繋ぐのは、ホーテンスの従兄弟でジャマイカ人マイケル。実はこのマイケル、ホーテンスとクイーニーがそれぞれ心のままに愛したたった一人の男性。
クイーニーがマイケルの子供を身籠り産むのだけど、産まれた(黒人の)子供を愛せるか、この社会でどうやって育てていくか、悩んだ末にホーテンス夫婦が赤ちゃんを引き取ることに。(ホーテンスはマイケルの子だということは知らないまま…?)ここでいろんな想いが交錯する。産まれた赤ちゃんがどうか生きやすい社会になるように、と願わずにはいられないラスト。

ホーテンスが教師になる志も、ギルバートが弁護士になる志も、黒人であることを理由に社会から蔑まれるロンドンでの生活の中で失われていく。小さな部屋でフィッシュアンドチップスを食べるシーンが悲しくて美しかった。

(意図的な)酷い人種差別の言動や描写がたくさん出てくるけど、それに立ち向かうスカッとした台詞が役者から発せられたときに沸き起こる会場一杯の拍手。
時折映される客席には、様々な人種の人たちが並んで鑑賞している様子が伺える。
時代も違うし、舞台の中と観客席は別空間であることが見て取れるけど、観る人はみんな現代に残る問題とその背景を意識したと思う。

舞台セットも音楽もとっても良かった。

原作となるSmall Islandの著者Andrea Levyはこの舞台の稽古が始まってすぐのタイミングで亡くなったのだそう。
Andreaの両親もジャマイカからイギリスに渡ってきたウインドラッシュ世代ひとり。
自らの経験を基に書かれたリアルな叫び。今こそ多くの人に見られるべき作品だと思った。
もう一度、というか何度でも見たい!

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