ユブネの往復書簡①-2
ユブネの往復書簡①-2
送り手:スティールパン奏者 pandelight
寺本裕也・小絵佳 さん
宛先 ユブネの東善仁
見知らぬ人に声をかけるという行為には勇気がいるもので、少なくとも僕はそう。大人になってお酒を覚えてからは、お酒の力を借りればまだそのハードルが下がるような気はしていたが。
スティールパンという楽器は見た目、音色は、他のポピュラーな楽器に比べて実際に触れる機会は圧倒的に少ない。なので、屋外で練習していると必ずといっていい程、誰かに声をかけられる。
単純に興味から声をかけてくれるのだと思うし、とはいえ、その楽器のルックスと僕のルックスで声をかけるのは勇気がいるのではないかと。少なくとも僕は、見知らぬ人に声をかけるのは勇気が物凄く、いる。
夜の西梅田公園。スケボー少年、お芝居やダンスの練習をする若者、闇に身を潜める恋人たち、浮浪者がそこの常連で、僕たち夫婦はちょくちょくスティールパンの練習をしに行っていた。
ある日の練習時、自信なさそうな男性に突然声をかけられた。
それが東さんとの初めての出会いだった。
スティールパンに興味を持っているだけでなく、公園近くの会社に勤めているという事や、近所に住んでいる事、名刺をくれ、自己紹介してくれた。妻の仕事にも縁がありそうな内容だったので「この人はきっと面白い人に違いない」と直感した。
2回目に会ったのは中津高架下のワインバル「ムーランキッチン」で偶然。
スティールパンをヤフオクで競り勝った時の高揚感は忘れられない。(補足:その時競っていた相手は、妻の同級生だった事が後に判明した。覚えてますか?)
僕は演奏、東さんは乗り換えの那覇空港でバッタリと出会ったのも縁を感じる。
後々数々のイベントに一緒に参加したり、主催イベントに呼んでもらったり、と。僕たちの親交は時と共に重なっていく。まさかあの時の出会いが今後の自分の人生に大きく関わっていくとは微塵にも思っていなかった。
出会いから9年、お互い新しい家族も出来、スティールパン、仕事の事、子を持つ親として、会って話をする時は話題に事足りない。
東さんの印象も初めて会った時の自信のなさそうなカンジからはだんだん離れていった。
振り返ってみると僕たち出会ってからまぁまぁいろんなこと共有してきたね。
緩い雰囲気は相変わらずそのまんまでも、意外に頼りになる。
会えば必ず心がホワホワする、大切な仲間。
それが僕にとっての東さんである。
pandelight 寺本裕也・小絵佳