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元カノがSM嬢になってた話

別れても恋人の事を忘れられないのは男性に多い…という説は嘘か誠か分からないが、彼はそのタイプだった。
ひょんなキッカケですれ違い、別れてしまった元カノのことを随分長く引きずっていたのだ。

その未練っぷりは別れてからも定期的に元カノのSNSを見るぐらいにはあった。

当然本アカはブロックされている。だから彼は新しくアカウントを作って、自分だとはバレないようにコッソリと元カノの様子を観察していた。

元カノは趣味で演劇をやっている。SNSでもその様子が定期的に上げられていて、写真を見る度に安心するような、胸が締め付けられるような、なんとも言えない気持ちになった。

『何かがキッカケで復縁できないだろうか…。』

そんな気持ちを抱いて悶々としていたある日の事である。
突然、元カノのアカウントにとある写真が投稿された。

ラバースーツ姿で鞭を持つ女性。
怪しいスポットライトが照らす中、ステージの上には裸の男性が四つん這いになっている。

(アカウントを乗っ取られたのか!?)

最初はそう思ったが、写真の女性は紛れもなく元カノだ。
なんと彼女はSMショーの嬢としてデビューしていたのだ。

少なくともこれまで付き合っていた中で彼女にそんな性癖は無かったと思うし、そんなプレイをした覚えもない。

彼女のSNSは日に日にSMショーの日記で埋め尽くされるようになった。

ある日、彼女のSNSにこんな投稿がされた。

『今度○○駅の○○というお店でSMショーに出演します!ぜひ遊びに来てください!』

今回は珍しく告知予告だ。しかも具体的な場所まで明記されている。これまでは事後報告的にしかショーの写真が上げられていなかったのに。

(チラッと見に行くだけなら…)

別れて時間が経ったとはいえ、やっぱり未練が捨てきれない。バレたら面倒なのは分かっている。だが彼女を一目でいいから見たい。

気付くと彼は会場に足を運んでいた。
彼女にバレないよう、息を潜めながら彼女の出番を待つ。

やもするとストーカーとも捉えられない行為だが、彼女に会えると思うと期待に胸が膨らんだ。

(元気にしてるだろうか?まだ彼氏は出来てないのかな?もし俺の事気づいてくれたら…。)

いよいよ彼女の演目が始まる。
パッと照らされるステージ。

…しかしいざ彼女の演目が始まるとその期待は一気に消え失せてしまった。

(あれ?なんかエロくないな…)

彼女のSMショーは見せ物というにはあまりにチープで、びっくりするくらいエロくないのだ。

なんというか動きがぎこちないし、やることもいちいち演技臭くて見ていられない。なんだったら前演目の中年夫婦SMショーの方が情緒があって良かった。

(なんかもう、いいかな…)

そう思うと、彼は早々に会場を後にした。
それからというものの、彼は彼女に対する未練を綺麗さっぱり無くしたという。