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夢日記:森の中の火葬場

こんな夢を見た。

私は子供の頃に住んでいた家の周囲を散策していた。
そして、懐かしい気持ちで細い路地や裏通りを辿っていくうちに、どんどん街から離れ、深い森の中へと迷い出た。

何処にいるのか、今は何時なのか、何も解らず途方にくれて青い空を見あげると、細くたなびきながら昇っていく煙を見つけた。

人がいるかもしれない、私はそう思い、煙の方へと向かった。
草木をかき分け進んだ先には、長く大きな煙突を持つ、3階建程の高さの廃墟が、緑の葉生い茂る木々の中に鎮座していた。
煙は煙突から出ていたが、廃墟はしばらく前に火事にでもあったらしく、ほぼ煤けた骨組みだけの姿だった。
廃墟の隣には大きな沼があり、白い蓮の花が幾つも咲いていた。
木漏れ日に照らされた煤けた廃墟と緑の沼に咲く蓮の花は、とてもとても美しかった。

私は強い興味を惹かれ、廃墟の中に入っていった。

焼けただれた骨組みの廃墟の中を歩くと、巨大な骸骨の中にいるような気持ちになった。廃墟の奥には炉があった。炉は骨組みの間から差す光に照らされ、その前にはスーツを着た男性がいた。男性は穏和な表情で、話しかけ易い雰囲気を持っていた。私は男性に何をしているのか尋ねた。

「火葬です。ここはね、火葬場なんですよ」
穏やかな声で、男性はそう答えた。

こんな廃墟のような場所で火葬なんて大変な作業じゃないのか、と私が問うと、
「この地区に住む人たちはみんなここで火葬されます。どんなに大変だろうと、ここでするしかないんですよ。それに、私はこの仕事が好きなのです」
と、男性は言った。

どこかで鳥が高く鳴いた。私は煤けた骨組みの合間から天高く佇む煙突を見上げた。

その先から昇る、細くたなびく煙は優雅で、私は何だか酷く、安心した気分になった。

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