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「PORTABLE」制作から7年ーあの時もらった言葉。

先日ラジオの収録で「PORTABLE」の話に触れることがあって、
気づくとこの頃のことを振り返ることが増えました。

あの頃はメジャーの契約も終わり、
フリーになったばかりで、おまけに震災もあり、
私は結婚も妊娠もあり、時代も人生も、転換期の真っ最中でした。
悠もまた悠で、大きな大きな変化の中にいたと思います。

Dewというユニットとして同じ道を歩んではいたけれど、
でもその道は決して一つではなくて、
私たち二人はあくまでも違う人生を歩んでる、
そんなことを私は深く意識していた時期でした。

でも、私はなんとなく自分の道を歩けていないような
もどかしさや焦りみたいなものがずっと胸中にあって。
おまけに自信も無くしていた時でした。

でもね、素敵な出会いだけはいっぱいあったんです。
そのおかげで、この出会いに見合う人になろう!って
思えたことが自分を繋いでくれたんだろうなと思います。


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そんな中、当時のことを思い出すと必ず蘇る思い出があります。

今もよくライブをさせてもらっている吉祥寺のキチムで一度、
「BGM演奏してみなよ」、と声をかけてもらい、
クラムボンの伊藤大輔さんや、SPANOVAのお二人など、
錚々たるメンツの中に、ぽん、と入れてもらったときのことです。
(書いてるだけでもドキドキして手が震えそう...!)

そもそも私は「セッション」と名のつくものをしたことがなかったのです。
私はクラシック一筋で15歳までピアノを弾いてきたから、
決められたものを楽譜通りに弾く、それが私にとって音楽で、それは
メジャーデビューしてからも、J-POPを演奏する分にはあまり変わりませんでした。

でも、セッションは違う。

生き物のように、同じ曲を弾いてもそこから派生した新しいフレーズが
生まれ、限定された正解もなく、目の前でどんどんその時だけの
生きた音楽が生まれていきます。

それはただ自由に弾けばいいというものではなくて、
私たちの普段の会話にもなんとなくルールがあるように、
セッションにも最低限のルールがあって、
それをみんなが暗黙のうちに了解して、音楽を奏でています。

でも、私はそれさえもわからないまま飛び込みました。
まるで、無免許運転で高速道路を走るような行為です。(笑)

2日ほどさせてもらって、案の定撃沈!

でもその間、クラムボンの郁子さんがふらっとお店の様子を見に来られて、
私たちの演奏を遠巻きに聴かれていました。
もうこのシチュエーション、今思い返しても逃げたくなる・・・(涙)

けれど当時の私は自信はないくせに度胸はあったようで。
隙を見つけて、あろうことかあの郁子さんに

「どうやってセッションてされているんですか?」って確か
聞きにいきました。


あーーーーーもう逃げたい。

だいたい、「どうやって」ってなんて質問だ(笑)
漠然としすぎているではないですか・・・

でも、こんな私に郁子さんは、
「は?」みたいな顔を微塵も見せずに、


「おしゃべりするのといっしょだよ〜
普段でもさ、誰かが喋ったらその人の話聞くでしょ?それとおんなじ。
こんなことがあってさぁ〜って誰かが言ってきたら
あ、そうなんだ〜わたしはこんなことあったんだよね〜って。
それを音楽でするだけだよ」


というような内容を私に言ってくれました。

そのあと、ふらーっと自分のキーボードに向かわれて、
おおはたさんや永積さん(ハナレグミ)たちもやって来られて、
超豪華なセッションが始まりました。

私はそれを聴きながら、3人が言葉のように自由に音楽を
奏でながら会話しているのが見えました。
あーこれがセッションなのか。

それが初めて分かった瞬間でした。

私は「弾く」ことに精一杯で「聴く」ことは全然していなかった。
当時、悠にもいつも「もっと聴いて!!!」って言われていたんです。
でも、私は私なりにちゃんと「聴いている」つもりだったから、
悠が何を聴いてと言っているのかがどうしても掴めなかった。

でも、あのセッションを聴いた時に、
ようやく私の中に今までとは違う「聴く」という感覚が
目覚めた気がします。

でも、それを使いこなせるようになるまでには、
またそれはそれで時間がかかるんですよね・・・
7年経った今も絶賛修行中です。

でも、郁子さんにあの言葉をかけてもらった次の日、
もう一度だけ、セッションに参加させてもらいました。
相変わらず撃沈だったけど、みんなの音をおしゃべりのように
捉えてみて、誰かが喋っているときは聴く、話終わったら
ボールを投げてみる、ということをちょっと意識はしてみました。

そのセッションも郁子さんは後ろの方でお店の手入れをしながら
聴いてくれていて、その日のセッションが終わって楽器を片付けていた時、

郁子さんの方から私に

「そうそう、今日のあんなかんじだよ〜」

と声をかけてくれて、慰めとはいえ、
あんなちっぽけな私の変化を聴き取ってくれて
すーーーーーごく嬉しかったのを覚えています。

そのあと行なった「POTABLE」のリリースツアーは、
悠の歌がレコーディングの時と確かに違って聞こえて、
すごく楽しかったのを今でも覚えています。

あれから7年。
そのあと音楽に打ち込んで過ごした7年というよりかは
出産、子育て、転勤・・・と逆に少し距離ができてしまった7年ではあったけれど、音楽を辞めずに、そしてまたDewとして活動できることを嬉しく思います。

あの時の出会いにふさわしい人になるには、まだ100光年くらいかかると思うけれども!(笑)

諦めずに今日も歌おう。

「PORTABLE」は現在もCDでの販売に加え、
OTOTOYというサイトで配信を行なっています。
そちらで公開されているライナーノーツはこちら→https://ototoy.jp/feature/20130314

CDのご注文はこちら
https://dewwebshop.thebase.in/


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