【短編集】Arc "喜びの島" 2. Menuet
→1.Prélude
土美 四郎(つちみ しろう)の遺体は、土美家が所有するF県S市の海岸から数キロ程にある離島に建てられた洋館の書斎で発見される。大正初期に町の精神疾患者を療養、隔離する目的で建てられた施設を土美家が島ごと買い取ったもので、彼がそれを別邸としてリフォームし、四季折々にはそこで数人の使用人を連れて過ごしたのだった。洋館は明治期に来日し多くの設計を手がけた建築家ジョサイア・コンドル風の設計になっていて、彼はその意匠をとても気に入りできるだけそのままの形を残す