空白
何にもできない日。
何もかも空っぽで、無気力で、傍には諦めがある。
死にたいんじゃなくて、ただ消えたい。
「わたし」という人間がどういう人間かをまだ誰も知らないところで、ひっそりと生活したい。
私にまとわりついた鉛色のベールを引き裂いて、1秒ごとに更新されていく私でいたい。
課題の締め切りがいつだとか、どこかのお偉いさんの半径1000ミリメートルしか伝わってない説明とか、心身を蝕む労働力にまるで見合わない単位取得のための小狡い攻略法なんていらない。
誰が何を言ったかとか、誰がどこに行ったかとか、誰がどうしたとか、そんなたった2秒で流れるものなんていらない。
わたしの大切なろうそくが揺れてしまうような有難い思想なんていらない。
今日は何時に起きて、
どのような服を着て、
何時に家を出て、
いくつのタスクがあって、
それから、明日はなにがあったっけ。
いつでもどこでも目の前には黒のマジックペンで"やることリスト"にぎっしり文字が書かれている。
そんなもの。
思いっきり破ってしまえばいい。
何もかもに疲れ果てて、考えることさえも嫌気がさしてきて、
仰向けになって手を伸ばせば、もう少しで届きそうな白い壁をひたすらに見つめ続ける。
その白い壁に紅色で私の明るい未来を描いてしまえばいい。
何にもしない日。
それは、今まで必死に日々を生きてきた軌跡。
何にも手につかない日。
それは、今は時の流れをゆっくり感じる時期だという証拠。
何もかも空っぽな日。
それは、これから新鮮な陽が差し込む象徴。
何にもできない日。なんて存在しない。
明日も生きようとする日。なのだから。
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