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たいち君の場合

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高校時代からの友人「たいち君」について、今まで書き溜めていたものを推敲・アレンジしたものです(R18な部分もあります)。僕は彼に翻弄されながら、恋愛感情を持ちました。その感情は未…
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#今私にできること

たいち君の場合(6)

お互い近くに住んでいるにも関わらず、僕たちのリエゾンはますます細くなっていった。彼が就職活動で苦しんでいる頃、ある日僕は、所用でいつもの駅に行った。上り電車のプラットホームで、たしか階段近くで電車を待っていた。そのとき僕は、ブラームスが作曲したヴァイオリン・ソナタの1番「雨の歌」を聴いていた。もともと僕でも知っていた曲だけれども、たいち君は、チェロとピアノ用に編曲された「雨の歌」があることを教えてくれた。僕はその時、そのチェロ版を聴いていた。 これは最晩年のブラームスが、思

たいち君の場合(5)

「#いま私にできること」と言うハッシュタグを見つけた。 表現することは物を救うことであり、物を救うことによって自己を救うことである。三木清「人生論ノート」より 高校生の時に読まされました。大学生の時はよく読みました。 「いま私にできること」とは、やっと確保できた時間(now)で、辛い思いを吐き切ることだと思う。吐き切って、自己=過去と現在の私を救う——、これが「#いま私にできること」だと信じて「たいち君の場合」を続ける次第です(殆どポルノ小説です……)。 たいち君の場合