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たいち君の場合

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高校時代からの友人「たいち君」について、今まで書き溜めていたものを推敲・アレンジしたものです(R18な部分もあります)。僕は彼に翻弄されながら、恋愛感情を持ちました。その感情は未…
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#BL

たいち君の場合(8)

深夜いつもの「遊び相手」を探していたとき、偶然にも、あの時の相手を見つけた。たまたま彼も、近くに引っ越していたらしい。話は早かった。今度は逆に、僕が彼の部屋に行くことになった。僕のマンションからは少し距離があった。歩調を強めて歩いた。相手にたいち君を重ね合わせ、あの冬の日に、相手を貪り尽くした時の快感を思い出した。彼のマンションまでの距離は、もう一度それ求めてやまない欲求を何度も反芻させ、心と中心を疼かせ、脈動させ、破裂させるには十分すぎる距離であった。 リエゾンが切れかけ

たいち君の場合(7)

あれ以来、お互いに連絡を取り合うことは無くなった。いまだに彼があのマンションに住んでいるのかすら判らない状態であった。僕は大学院で転科したのでキャンパスが変わった(二年ぶりに戻った)。 引っ越すことになった。たいち君が紹介してくれた、あの場所から。変に緊張した彼が来て、変なケツ論を出した「あの部屋」から——。三月の初旬、下宿先が決まった。そのことを彼に連絡しようと思った。連絡を取るのは本当に久しぶりであったので、メールを送る瞬間は「返信が無かったらどうしよう」なんて緊張した

たいち君の場合(3)

あの夜の出来事の後、たいち君に急に彼女ができた。僕が知っている相手で、かつて同じサークルにいて、確か僕と同じタイミングか、少し遅れて辞めた女の子(仮名・みどりちゃん)だった。彼女も違う大学から、僕のいたサークルに入っていた。彼がどのような理由で彼女を選んだのか(同様に、彼もどのようにして、彼女から選ばれたのか)は判らないのだけれども、少なくとも「見た目」の点だけで言えば、彼女には大変失礼なのだけれども、とてもアンバランスだった。成宮君似(少し崩した感じ)と小柄・寸胴・エラが張

たいち君の場合(2)

前回の出来事があっても、僕たちは普通に(いや、僕は内心ハラハラしながら)友達として会い、ときどき夕食を作ってもらったり、一緒に飲みに行ったりしていた。そのまま泊まりもしたし、音楽の話をしながら、いつの間にか二人で寝てしまっていたこともあった。 コーヒーの香りで起きた。ロフトで(たぶん一緒に)寝ていた。ロフトからリビングを見下ろしてみる。先に起きていた彼は、フランス語のリスニングCDか何かをかけながら、フランス語の勉強をしている。カーテン越しに明るい光が差し込んでいた。おはよ

たいち君の場合(1)

たいち君は高校時代からの友達です。いつ友達になったのかはわかりませんが、大学生のある時までとても仲の良い親友でした。それが急にプツリと切れてしまい、いまだに音信不通です。彼はもともと「こっちの感じ」がありました。少なくとも私には、そんなそぶりを見せる・試してくる(ように感じました)。最初私は戸惑っていたのですが、いつの間にか、私の方が気になる存在になってしまい、連絡を取ろうとしたら・・・、ここで物語が終わります。 高校時代の彼は成宮君にそっくりでした。あの切ないドラマ「イノ