激人探訪スピンオフ QUADRATUM From Unlucky Morpheus "Loud Playing Workshop"発売記念スペシャルインタビュー
どうも皆さん、YU-TOです。
年が明け、2021年がスタートして約1ヶ月。
正月ボケもそろそろ抜けて、いよいよ本腰を入れてやるべき事に着手し始めている方々も多くなってきていると思う。
年が明けて間もない時期に緊急事態宣言が再発令され、世間全体としては決して"良い状況"とは言えないスタートになってしまった2021年であるが、国内メタルシーンは早々から新たな動きを見せるアーティストが出て来た。
この激人探訪シリーズではお馴染みとも言える、Unlucky Morpheusの楽器陣達がQUADRATUMなるプロジェクトを立ち上げ、1月27日に『Loud Playing Workshop』と銘打たれたフルアルバムをリリースするのだ。
このQUADRATUMというプロジェクトバンドは、既に公式でインフォメーションされている通り"カバーバンド"である。
RACER-XやDREAM THEATERといった、Unlucky Morpheusのルーツとも言えるバンドの"インスト曲"のみをチョイスし、そこに彼ら流のアレンジを加えた表現をするといった趣旨のプロジェクトで、カバーされてる楽曲は思わず"ニヤリ"としてしまう往年の名曲ばかり。
普段、Unlucky Morpheusの制作指揮を取っているのはリーダーである紫煉氏であるが、今回のQUADRATUMで指揮を取ったのは仁耶氏。
デモ制作、アレンジ、レコーディングのディレクションまでを一挙に引き受け、この作品の"核"となって動いた仁耶氏であるが、今回のインタビューで彼は"原曲へのリスペクト"と"劣化コピーにはしたくなかった"という言葉をしきりに口にしていた。
いかに"原曲との差別化"を上手く図れるているかが、"カッコ良いカバー曲"のポイントだと自分は思っている。
だからこそ、インスト曲のカバーはとても難しい。
歌モノの楽曲であったのならば、もう"歌い手が違うだけでOK"という図式が成立し、それだけで原曲との差別化が図れると思うのだが、インスト曲ではそうはいかない。
まして今回は"レジェンドバンド"の楽曲で固められているし、単にコピーするだけでも大変な、高いテクニックが要求される楽曲ばかり。
ライブであったのならば話は別だが、今回収録されている楽曲を弾き手の違いだけで原曲との差別化を図ろうとするのは至難の技であろう。
原曲通り忠実に再現したのでは「本家を聴けば良い」と聴き手に思われてしまうだろうし、妙なアレンジを施せば「リスペクトが無い」と思われてしまう。
しかし、QUADRATUMには他には無い1つの強力な武器がある。
それは、Jill氏の弾き出すアグレッシブかつ流麗なヴァイオリンだ。
Unlucky Morpheusにおいて、ギターとヴァイオリンのツインリード的プレイはバンドの強みの1つであると思うのだが、QUADRATUMはその"強み"に振り切ったプロジェクトであると言える。
今回の作品で、仁耶氏は往年のギターサウンドをどう上手くヴァイオリンに置き換えるか?という事をひたすらに考えていたと語っていたし、他メンバーも「今回の主役はJill」と言い切る場面もインタビュー中にあった。
また、FUMIYA氏と小川氏の楽曲に対する"温度差"も、今回の話で面白かった事の1つ。
激人探訪でも語っていた通り、小川氏は決してメタルがルーツにあるプレイヤーでは無い。
だから全曲では無いにせよ、今回初めてちゃんと聴き、初めて実際にプレイしたような楽曲もあったようで、レコーディングにかなり苦戦した曲もあったようだ。
しかし、FUMIYA氏に至ってはドラムフレーズが彼自身の血肉に刻まれた楽曲ばかりであったらしく、曲を覚える必要も無いくらい、今回のレコーディングはスムーズであったと語っていた。
元からそうであると分かってはいたが、今回のインタビューではそんなリズム隊のルーツの違いもより鮮明に浮き彫りにされ、とても興味深い内容の話を聞く事が出来たと感じている。
そんな個性豊かなUnlucky Morpheusならではのメンバー間の違いが分かる話や、制作の裏側、カバーされた楽曲への愛、2021年の展望など、ファン必読の充実した内容のインタビューを今回はお送りしたいと思う。
このインタビューを読んで、より一層Unlucky Morpheusというバンドの根底にあるものを知ってもらえたら、とても嬉しい。
"スピンオフ"という事で多少砕けた表現もあるが、その辺りも含めて楽しんで頂けたら幸いです。
※記事中の敬称は略させて頂いています。
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ー本日はお忙しい中、ありがとうございます!。早速なんですけども、このQUADRATUMの企画が出たのはいつ頃だったんですか?
仁耶:結構前、何なら一昨年くらいの段階から、あんきもで洋楽のメタルカバー作品を作りたいという話が出ていて。
それで元々は、歌モノとインストで1枚ずつ作りたいって話をしてたんですけど、諸般の事情からそれがインストだけになったっていう形ですね。
ー"インスト曲だけで作品を作る"って、またいつもの制作とは少しやる事が違ってくるとも思うんですよ。この話が出た時は率直にどう思いました?
仁耶:初めてこの話が出たのは大分前なので、あんまり覚えて無いんですけど、、(笑)。でも、特に違和感とかは無くて「やろっか〜」みたいな感じだったと思いますよ。
ーなるほど。もうインストってなったら当然、Jillさんのヴァイオリンがメインにもなってくるとも思うんですけど、Jillさんはこの話が出た時どう思いました?
Jill:私も、大分前の事なのであまり覚えて無いんですけど(笑)。
でも、昔"The Dance Of Eternity"(訳注:今回の作品にも収録されているDREAM THEATERの楽曲)のカバー動画をYouTubeにアップした事もあって、その時も「ゆくゆくはFar Beyond The Sunとかも演りたいな」とは思ってたんですよ。
結局、それはずっと出来ずにいたんですけど、今回演れる事になって「あの時出来なかった事が出来て嬉しいな」とは思いましたね。
ーそうだったんですね!。でもインストってなったら当然、いつもより物理的な弾く量も増えてくる訳で。プレッシャーみたいなのは無かったですか?
Jill:いや、プレッシャーは無かったですよ。気持ちの面ではやっぱり"責任の重さ"みたいなものは感じましたけどね(笑)。
でも、それがプレッシャーとは全然思わなくて「やったるぞ!」みたいな感じでした(笑)。
ーおおっ、さすが(笑)。あと、インストってなったらドラムのアプローチ的にもFUMIYAさんの得意分野なんじゃないかな?って思ってるんですけど、FUMIYAさんはどうでした?
FUMIYA:もうね、今回の収録曲の8割くらいは元々コピーした事がある曲だったから何かもう、あまり悩まずにすんなり。
"The Dance Of Eternity"とかは俺がDREAM THEATERで1番最初にコピーした曲だったし、もう日常的に叩いてたから身体に凄い入っててね。
ただ、時期によってドラマーが違うバンドもあるから、YouTubeで各バンドの色々な時期のライブ映像を観まくって、それぞれの手癖をめっちゃ研究して複合的に演ってやろうって思って。
だから、本当に細部まで聴いてる人達の「この時期のドラマーのこのニュアンス!」っていうのに応えられるようなドラムを目指してはいたかな。でも別に大変な事は特に無かった。本当に"すんなり"って感じで。
ーかなり馴染みがある曲達だったんですね。今回は曲のアレンジってどうやって進めて行ったんですか?
仁耶:まず大枠を僕が作って、全曲のデモみたいな音源を紫煉さんも含めた全員に聴いてもらうところから始めて。
そこから「リードギターとリードヴァイオリンの割合はこうして欲しい」みたいなザックリした指示だけ紫煉さんから貰って、細かいところは僕が独自で進めて行った形でしたね。
でも当然、ギター以外の細かいアレンジは出来ないので、あくまで大枠だけ作って後は参加者にお任せって感じでした。
ーもう今回は、紫煉さんはほぼノータッチで?
仁耶:そうです。元からそういうコンセプトというか、企画だけしてもらって制作はこっちでやって欲しいと言われていて。
ー今回の制作のディレクションなどは仁耶君がメインでやっているという話は元から聞いていたけど、それはやっぱり紫煉さん的に"作業を分散させる"みたいな狙いがあっての事だったんですかね?
仁耶:そういう意図もあると思いますし、去年はそもそもライブがやりたくても出来なかったから、その穴埋めとしてはやっぱり「作品を沢山作らなくちゃな」って当然なると思うんですよ。
普通、バンドって1つの作品に対してしか制作が出来ないですけど、こういう風にチームで、、もちろん"一丸となって無い”っていう見方はされたく無いんですけど、会社で言うと"部署を分ける"みたいに2手に別れたら一気に2つの作品を作れるじゃないですか?。
実際、これを作っている間に紫煉さんは次にリリース予定の作品を制作する猶予も生まれたわけで、そういう狙いもあったんだと思います。
ーなるほど。でも普段は紫煉さんが全てのディレクションをしていて、今回はそれを全楽器隊の1人1人がやる事になる訳だから、少し勝手が違うのかな?とも思うんです。例えば、 Jillさんがヴァイオリンのフレーズを独自でアレンジするみたいな事もあったんですか?
Jill:フレージ自体をアレンジする事は無かったです。ヴァイオリンでは出ない音域とかもあるので、それを1オクターブ上げたり下げたりとか、そのくらいはしましたけどね。でも、基本的にはコピーでした。
ーいやでも、普段からメタルをプレイしているとはいえ、メタルのギターインスト、それこそYngwie MalmsteenとかSteve Vaiみたいな人達の楽曲をヴァイオリンで演ってしまうなんて、自分的には考えられない事ですよ(笑)
Jill:ふふふ(笑)。やっぱり実際に演ってみると、いわゆる"クラシックの難曲"を弾くのとは違う難しさがありましたね。
例えばイングヴェイの"Far Beyond The Sun"とかだったら、スウィープのやたら速い「こんなの本当に弾けるの?」みたいなフレーズがあって(笑)。"人間の限界に挑戦する"じゃないですけど、そういう新しい難しさがあって面白かったです。
ー例えば「これ速過ぎてヴァイオリンじゃちょっとな」みたいなフレーズとかもありました?
Jill:いや、"速過ぎて弾けない"みたいな事は無くって、物理的に出ない音域とかもあるから、そういう場合は紫煉さんか仁耶君に相談しつつフレーズを変えていきましたね。
仁耶:僕も僕でギターインストの速くてややこしいフレーズをヴァイオリンで弾いて欲しいってなった時に、同じ弦楽器と言えど「これ弾けるのかな?」って思うようなフレーズも結構あって。
ーそうだよね?(笑)。かなり高度な事だと思うんですが、、
仁耶:ギターインストのフレーズってやっぱり"ギターに特化したフレーズ"じゃないですか?。
スウィープとかスキッピング、ピッキングをしないレガート的なプレイだとかが多く出てくるので、「そういうのってヴァイオリンで出来るのか?」って思ったんですけど、思いのほか最初からクオリティの高い再現だったので、「意外といけるものだな」って思いましたね。
ーそれはJillさんだからいけたんじゃないんですか?(笑)
仁耶:そうかもしれないです(笑)。
Jill:(笑)。
ーどんなクラシックの凄いヴァイオリニストでも、メタルの楽曲を渡して「はい、よろしく!」ですぐ出来る訳では無いと思うんですよ(笑)
仁耶:"For The Love Of God"とか出来ないと思ってましたもん(笑)。
ーじゃあもう"無謀"というか、"出来るか出来ないか"すら分からない曲に挑戦してた訳ですね?
仁耶:そうですね。出来るか出来ないか自分にも分からなくて、「とりあえず話は振ってみよう」みたいな感じで色々とJillさんに相談してた感じではありましたね。
ーその一方で、FUMIYAさんはもう完全に独自で自分の演るべき事を決めていった形だったんですよね?
FUMIYA:そうだね。でも結局、入れるような手数って自分のドラムセットの中で演る訳だから、あんきもで普段演ってるようなアプローチにはなってるよね。
う〜ん、、、本当今回はね、あんまり喋る事が無いくらい凄いすんなり録れちゃったんだよ(笑)。
ーははは!
FUMIYA:何にも悩まなかったしね。紫煉さんとかにそんな相談しなくても、予めYouTubeで色々なドラマーのフレーズを持って行った上でバァーっと1曲仕上げて演って、別に何も言われなかったから。
仁耶からも特に何も言われなかったし、ちょっと前に仁耶と2人でRACER Xを軽くコピーして動画を上げてたりもしてたしね。
ただ、意外と俺ってスティーブヴァイとかマイケルシェンカーとかをあまり通ってなくて、そういうレジェンド達の曲をコピーしてみて色々なものが見えたなってのはあるね。
ーほうほう
FUMIYA:特に今言った2アーティストは歴代で結構ドラマーが違うから、時代によって全然アプローチが変わってて。それを自分の中で「どう上手く消化しようかな?」とはずっと考えてたかな。
もうひたすらYouTubeで掘って掘って掘りまくって、「この曲のAメロからBメロまではこのドラマーのフレーズにしよう」とか「どっちのフレーズが自分に合うかな?」っていうのをひたすらやってたね。
そのくらいかな?、大変だった事は。でも、大変というよりは凄い楽しかったな。高校時代にコピーしまくってた事が"ようやく形になるんだ"みたいな。
しかも、ヴァイオリンがメインでそれを演るなんて思っても無かったっていう(笑)。
ー確かに(笑)。ところで、今回カバーする楽曲って誰がメインで決めていったんですか?
仁耶:ほとんどが紫煉さんで、"Far Beyond The Sun"とか"Technical Difficulties"とかは確定であったんですけど、他をどうするか?ってなった時に、紫煉さんがツイッターで「あんきもでカバーアルバムを作るんだったら誰の曲をやって欲しいですか?」っていうアンケートを取って、その時の案で色々と見えてきた曲とかもありましたね。
ーでも他のアーティスト、それこそRACER Xとかは、、
仁耶:もうRACER Xが2曲入っているのに関しては僕とか小川さんの趣味というか、"あんきも的な趣味"というか、、(笑)。
FUMIYA:あんきも的な趣味、、(笑)。
ー「"愛"だな」とは感じましたよ(笑)。やっぱりインスト曲ってなったらミックスとかの音作りもフレーズのアプローチ面も、普段と違ってくると思うんですよ。
仁耶:もう、全部違いますよね。
ーまして今回は"カバー"である訳だし、「普段のあんきもの制作とは違うな」と感じたポイントってどこですか?
仁耶:普段のあんきもの制作では割合としてはバッキングの方が多いんですけど、今回に関してはリードの方が多いし、僕の制作上の立場も違って、"アレンジ"って程でもないですけど、曲の土台の部分から作っていく役割もあったから、脳味噌の使う部分がいつもと全然違ったんですよね。
ーなるほど。それこそJillさんとかはどうでした?。やっぱり、もう物理的な弾く量が普段よりかなり多くなってくるとも思うんですけど、、
Jill:そうですね。いつもはあくまでもボーカルがあって、そこに絡むフレーズだったりするんですけど、今回はリードを取る事になるので弾き方とかも変わってきますし。
やっぱり"演奏する上での姿勢"みたいなのが違った感じはありますね。
ー例えば"弾き方"という部分ではどういう所ですか?。例えばいつもより繊細に弾かなくちゃいけなかったりだとか、寧ろその逆であるとか?
Jill:うーん、いつも割と"ボーカルを邪魔しないように"というか、こういう言い方が正しいかは分からないんですけど、ちょっと1歩引いた立場で演奏してるんです。
でも、今回は自分が"全面に出るんだ"という意識で、"圧"をいつもより多めに出していったかもしれないです(笑)。
仁耶:"圧"、、(笑)
FUMIYA:"圧を多めに"って、、(笑)
ー(笑)。もうどちらかというよりは、"繊細さ"よりも"力強さ"を意識していった訳ですね?
Jill:そうですね!。もちろん技術的な意味では繊細さも求められるんですけど、姿勢としてはもう"ガッツリ"みたいな。
ーもうガツっと全面に出る!みたいな。それこそ今居ないですけど(※小川氏、遅刻の為不在)小川さんのベースプレイも普段とは、、、って言ったら丁度来た!(笑)
仁耶:今、起きて来ましたよね?(笑)。目で分かる(笑)。
小川:寝起きだね(笑)。もう何でも聞いて下さい。遅刻した事も書いて下さい(笑)。
仁耶:YU-TOさんは言われなくても書くつもりだったみたいですよ(笑)。
ーははは!。ちゃんと書かせてもらいますよ(笑)。質問に戻りまして、今回の作品ってインストじゃないですか?。普段の歌が入った楽曲とはベースのアプローチも少し変わってくると思うんです。その辺はどうでした?。
小川:言うほど違くも無いし、少し違うしって感じ。演る事は変わらないっちゃ変わらないから。いつもよりソロがちょっと多いくらいじゃないかな。
ー小川さんはTRICK BOXもやられてましたし、インストには慣れてるのかな?って思うんですよ
小川:インストバンドは結構やってるよね。Flavor LAとかもそうだしね。でもやっぱり、ジャンルがメタルだからね。
"インスト慣れ"はしてるかもしれないけど、"メタル慣れ"はしてない(笑)
ーははは!!
FUMIYA:10年やってるのに!!(笑)。もう慣れたでしょ?!、流石に!(笑)。おかしいよ、それは!(笑)。
小川:20代のメタルベーシストよりは慣れてない(笑)。まだ慣れてないね、苦手意識がある(笑)。
仁耶:CD作っといて、インタビューでそんな事を!(笑)。
FUMIYA:やべーな(笑)。
小川:「まだ本気出してないぞ?」的な(笑)。
ー(笑)。普段やっているようなインストとメタルのインスト曲との違いってどういうところですか?
小川:インストだけじゃなくてメタル自体がそうだけど、ベースはあくまでもメインの楽器を引き立たせる脇役というか。
TRICK BOXとかFlavor LAは"みんなで"というか、"誰が目立って"とかじゃなくて、4人だったら1/4みたいな片割れって感じなんだよね。リズムも隙間だらけだし。
今回の作品はリズムに隙間が無くて、そういうのが全然違う。
ー確かに
小川:DREAM THEATERはね、「苦手だな。」って思った(笑)。
FUMIYA:だってDREAM THEATERをちゃんと演ったのって初めてだったんでしょ?
小川:そうそう。初めてコピーしてみて「苦手だな」って感じたね。
仁耶:そんな事言うインタビューあります?(笑)
小川:正直なんだよ(笑)。
ー何か、面白いですね。初めてコピーした人とコピーしまくった人でリズム隊を組んで音を合わせるとか。
小川:もうそこに関してはYouTubeとか観て「こんな事演ってるのかー」なんて思いながらコピーしていって。本当にDREAM THEATERは通ってなくてね。
もう、セクションが変わったら全然違う曲みたいになるじゃん?。だから大変だったな。10曲分くらいのデータ量だったよ(笑)。
ーははは!。FUMIYAさんなんて"1番馴染みがある曲"って話してたのに(笑)
FUMIYA:俺は1番馴染みがあったのに、小川君はずっと死んでたから(笑)。まあ、普通そうだろうと思うけどね。そりゃそうなんだよ。
小川:もう2度と演らないと思う。
ーいやいやいや!(笑)
FUMIYA:本来は予定してたツアーがあって、そこで地方ごとに何曲かインスト曲を披露しようって話もあったんだけど、それが無くなって良かったんだね、小川君的には(笑)。、、、ってヤベーな、このインタビュー(笑)。大丈夫?(笑)。
ー(笑)
Jill:やる気無いし(笑)。
仁耶:基本"後ろ向き"って事で(笑)。
小川:まあ、良いんじゃない?。
ーそれも個性ですからね(笑)。
小川:あっ、あと今回はギターとベースはリモートで、全部それぞれの家で録った。
仁耶:そうなんですよ。全部自分の家で録って、Hiroさんの所(STUDIO PRISONER)で音を作ってもらうっていう進め方で。
小川:そういう部分では、今までのあんきもとは少し違ったレコーディングだったね。
ーでも、Jillさんはスタジオの方で録ったんですよね?。かなり大変だったみたいな事をツイッターに書いてましたが、、
Jill:大変でした(笑)。とにかく難しくて。今回は1曲1曲がかなり長いので、1曲録るだけでも滅茶苦茶エネルギーが必要だったんですよ。
普段のあんきものヴァイオリンソロくらいの物量がずっと続くみたいな感じだったので、、。
ー大体、1日で何曲くらい録ってたんですか?
仁耶:2曲くらいだったような、、。
Jill:1日1曲っていう日もあった気がするけど、、大体は2曲だった気がします。
ー今回は1曲が6〜8分ありますし、、。それのメインってなったらかなりグロッキーになりそうですね(苦笑)
Jill:本当に(笑)。エンジニアのHiroさんもやっぱりギターを演ってらっしゃる方なので、今回録る曲もよくご存知だったみたいで「この曲はこうなんですよ」というのを色々と教えてくれて。
その曲の雰囲気に合わせた録る場所の環境作りとかも結構してくれて、面白かったですね(笑)。
ー照明を変えたりだとか?
Jill:そうです!(笑)。もうHiroさんと話してる内に「この曲、こういう風に録ったら面白いんじゃないですか?!」とか色々と盛り上がっちゃって(笑)。
1曲、真っ暗にして録ったんですよ(笑)。
ー、、、えっ?(笑)
Jill:"For The Love Of God"なんですけど、「その方が雰囲気が出るんじゃないか?」ってブースの中を真っ暗にして録ったんです。
そしたら、暗過ぎて弓がマイクに激突してしまって(笑)。
ー(笑)
仁耶:いきなり"ゴンっ!!"って音がして(笑)。結構デカイ音でしたよ(笑)。
Jill:すいません(笑)。「流石に暗過ぎるんで光量上げて下さい」って(笑)。
ーははは!。やっぱり違いが出ましたか?
Jill:出ましたね!。その曲は凄い浮遊感があって、雰囲気が独特な曲なので。
照明も赤か青か選べたので、薄青い感じに暗くしてもらって演りました。凄い良かったですよ。
ーへぇ〜っ。それこそ今回はギターインストだから、仁耶君の"本領発揮感"があるのかなとも思うんですよ。そういう感じはやっぱりありました?
仁耶:えー、どうなんですかね?。ギタリストってリードを弾きたがる人と意外とそうでも無い人とに分かれると思うんですけど、ネガティブな意味じゃなくて僕は「リードを弾きまくるぜ!」ってタイプでも無いと思うんですよ。
でも、元々中高の頃は"ギターヒーロー"が大好きで、今回演ってるようなギターインストのコピーもしてたので、その時の思いみたいなのを形に出来たのは凄い良かったなって思いますね。
"本領発揮"かどうかは分からないですけど、"エネルギーは全部使った"みたいな感じというか(笑)。
ーおおっ(笑)。じゃあもう、仁耶君とFUMIYAさんは、自分自身のルーツがガッツリと今回の作品を通して出せた感じなんですね。
仁耶:そうですね。RACER Xの2曲はコピーしてましたし、"The Dance Of Eternity"も中高くらいの時に半分くらいは弾けたので。まあ半分以降は諦めちゃいましたけど(笑)。
割と今回の収録曲は馴染みのある曲で、、、だから本領発揮は、、出来たのかな?(笑)。
FUMIYA:お前も後ろ向きだなっ!(笑)。
仁耶:いや、うーん、"本領"と言って良いのかが分からない(笑)。
FUMIYA:言ってしまえ言ってしまえ(笑)。
仁耶:まあ、自分のルーツにある事を形には出来ましたよ。
ー良かった(笑)。小川さんはどうですか?。DREAM THEATERとかは初めて演ったとさっき仰ってましたけど、他の曲とかは?
小川:RACER Xとかイングヴェイは聴いてたし、あとスティーブヴァイとかもライブDVDとかめっちゃ観てたから、結構知ってたね。
でも流石にTony Macalpineとかは分からなかったね。Impellitteriとかも存在は知ってたけど、こういう曲があるって事は知らなかったし。
ー割とメンバー間でも温度差があるというか
小川:あんまりコピーとかはしてなかったよね。でも、MIにいた時とかは皆んながそういう曲を演るから、もう当時のギターDX科(訳注:音楽専門学校MI JAPANに当時あった速弾き専門の学科)って感じの選曲だよね。
ーもうアルバムタイトル(訳注:LPW。MIのアンサンブル授業も同じ略名で呼ばれていた)からしてMIですよね(笑)。思わずニヤリとしてしまいました(笑)。
小川:そう、LPWね(笑)。ヤングギターのDVD収録をMIでやってた時期くらいの"MI感"があるよね(笑)。
ー(笑)。とまあここで、今回の『Loud Playing Workshop』収録曲の話を1曲ずつ聞いていきたいと思います。1曲目は"Far Beyond The Sun"で原曲はYngwie Malmsteen。もうYngwie Malmsteenの曲をカバーしてレコーディングするって発想自体が異常だと個人的に思ってしまうんですけど、、(笑)
仁耶:この曲に関しては、リードギターとヴァイオリンの"VS"みたいなのはありますけど、もうヴァイオリンで殆どのメロディ部分を弾いてもらってるんです。
「今回のアルバムはヴァイオリンを押し出してるぞ」っていう姿勢もこの1曲目で見せられるんじゃ無いかと思うし、紫煉さんも多分そうしたくて「この曲はほぼヴァイオリンで演って欲しい」とは言われていて。
ある意味、この曲をギターでカバーするのってありきたりじゃないですか?。でもヴァイオリンでこの曲をカバーしてるのって聴いた事がないので、そういう面白さを聴いてもらえるんじゃないかと思ってますね。
ーじゃあ、もうこの曲はほぼJillさんがメインという感じなんですね。さっき「前から弾きたいと思ってた」と仰ってましたけど、Jillさんは元々この曲を知ってたんですよね?
Jill:そうですね。この曲は最初のメロディからしてめちゃくちゃキャッチーだし、ヴァイオリンで演ったら絶対カッコ良いだろうなとは前から思ってたんですよ。
ーあのギターをヴァイオリンで表現するって、自分は「大変だな、、」って思ってしまうんですが、、
Jill:大変でした(笑)。基本は完全にコピーにしようと思って、「あまりギターと違わないようにしよう」って考えて演りましたね。
どうしても楽器の特性上弾けない音域があるのは仕方ないんですけど、フレーズは完全にコピーしたし、この曲がギターでどのくらい難しいのかはあまり分からないんですけど、ヴァイオリンだとかなり難しかったですね。
テンポをとにかく凄いゆっくりから練習して、毎日10ずつBPMを上げていくみたいな練習をずっとしてました。
ーじゃあもう、この曲は持ってるテクニックだけでは対応出来ない曲だったんですね?
Jill:そうです。"1日ガッツリ練習すれば弾ける"って感じではなくて、数ヶ月スパンでちょっとずつ弾けるようにしていく形で、割と本腰を入れて取り組まないと弾けなかった感じでした。
もう、この曲が今までの音楽人生で1番苦労したレコーディングでしたね(笑)。
仁耶:これギターで演っても凄い苦労するから、この曲も僕はヴァイオリンでは再現出来ないと思ってて。
例えば、ポールギルバートみたいに速弾きでもちゃんと1音1音が確定してる感じだったらまだ弾きやすいんですけど、イングヴェイって"その場のノリ"みたいな感じがあって、音が結構曖昧なんですよ。
ーああ〜、何かわかります
仁耶:"その場のアドリブ"みたいなプレイが凄い多いので、それを譜面に起こしてヴァイオリンで再現するのは難しいだろうなと思ってたんです。
ギターだったら、速さゆえに一音一音は多少曖昧でも、フレーズ全体の盛り上げ方次第では最高にかっこいいソロになるわけなんですが、ヴァイオリンでそれが出来るのかな?っていうので「これは大変な作業になるな」とは思ってましたね。
ーリズム隊はどうでしたか?
小川:そんなに大変じゃなかったかな。そこまで聴き込んでた訳じゃないけどこの曲は知ってたし、あんきもに比べたら速いフレーズとかも無いし。
仁耶:リフはシンプルだけど、展開は意外と多くないですか?。
FUMIYA:ちょっと展開は変だよね。あの年代特有の何か"ニュアンス"な感じ?。カッチリしてない「えっ、まだこのセクション続くの?」みたいな(笑)。
小川:確かにそういうのはあった。
仁耶:全体のテンション感は一定なんだけど、何かちょっとずつ展開が変わって行くんですよね。だから覚えるのが結構大変でした。
ーでも、レコーディングは通しで弾く感じで?
FUMIYA:この曲は、俺は目をつぶっても出来るくらいで。高校の頃に速弾き系ギタリストのアルバムをめっちゃ買い漁ってて、もうイングヴェイはブートビデオも買い漁ってたくらい凄い好きなんだよ。
当時のドラマーだったAnders Johanssonのプレイをめっちゃ聴き込んで「ああ、こんなんだったなー」って。
もう曲展開はほぼ覚えてたし、身体に入ってたからスッと出来るけど、でもやっぱり「セクション変だな」とは改めて思った。固い頭で入ってたら多分覚えられなかったと思う。
仁耶:最初のテーマが終わった後の"ジャッジャッ!"ってところとか、CD聴いても4/4拍子なんだか3/4拍子なんだかよく分からなくて、、。
思うに多分どっちでも無くて、もうイングヴェイに合わせてドラマーが叩いてるから、あそこ拍子の概念無いんじゃないかと僕は思ってるんですよ(笑)。
FUMIYA:最近のイングヴェイは割と4/4で演っちゃってる(笑)。でも当時は違ったんだよ。
仁耶:最近のイングヴェイを聴きながら土台を作っていったんですけど、4/4で出したら、「これCD版と違う」って言われて。
それで、「どちらかと言うと3/4っぽいな」ってなって音源は3/4拍子になってるんです。
FUMIYA:そのくらい、音源版のイングヴェイは良い意味でのブレがある。
仁耶:そういう作業をやってみて、イングヴェイの「俺に付いて来い」感みたいなのを強く感じましたね。
マジであれ、イングヴェイにドラムが合わせてますよ(笑)。
FUMIYA:絶対そうよ(笑)。合わせなかったら、基本的にドラマークビにするから(笑)。メンバーチェンジが激しい激しい(笑)。
ーははは!!。それで次曲の"The Dance Of Eternity"はDREAM THEATERの楽曲で。これはもう小川さん以外は"お馴染み"という感じがしますが、、
仁耶:もう"難しいギターインスト"と言ったらこれですよね。テクニカルギターインスト界の"ラスボス"だと僕は思ってて。
ーJillさんも、以前コピーして動画をアップしてたってさっき仰ってましたよね?
Jill:はい。そのコピーした当時に初めて知って演ったんですけど、今回はその当時弾いてたアレンジを元にしてて、原曲ではキーボードのパートを弾いてるんです。
なので、それこそ同時に出せない音とかもかなりあるんですけど、前回は「無理だ」って諦めたところとかも今回はチャレンジして、より忠実に再現してたりするので、前にコピーしてたのとは少し違ったものになってると思います。
ー動画を上げた当時とは、見えてくるものが違ってました?
Jill:そうですね。違ってました。その時の動画を改めて何回も観直したり、原曲を何回も聴いたりして。
ーまた"動画を撮る"っていうのとちゃんとレコーディングするっていうのでは勝手が違う部分もあると思うんですけど、その辺はどうでしたか?
Jill:いや、それはあまり無かったですね。アップデートした部分は大変だったんですけど、割ともうすんなりと。
ーへえ!。それこそFUMIYAさんもずっとコピーしてて、すんなりとレコーディングは終わったんですよね?
FUMIYA:もう、日常でした。本当に今回レコーディングする事になる前から、毎週家で好きに叩いてたくらいだったから。「いやー、ラッキー!」っていう(笑)。
こんな曲を1から覚える奴は大変だろうと。ねっ!。
小川氏:(苦笑)
仁耶:もう選曲の時点での小川さんの"演りたくなさ"が、、(笑)。
FUMIYA:もう凄かったもん(笑)。「演んの?」って(笑)。
小川:いや何か、「こういう事演りたくないから色々な事を勉強してきたのに」みたいな(笑)。
ーははは!
FUMIYA:結局、演る羽目になるんだよ。
小川:去年、2020年の1番大きな仕事で、録り終わった時に「もう今年終わった」って思った、、、もう今年の残りは"惰性"だと(笑)。
ホントにDREAM THEATERはずっと避けて通ってたから。
ーある意味では、"因縁の相手"みたいな
小川:いやでも、コピーしてみて改めて「凄いな」とは思ったよ。
ー本当に、温度差が凄い(笑)
FUMIYA:この曲が1番温度差ヤバかったよね(笑)。俺は演った方がむしろ1曲覚える手間が省けるくらいだったから、もう大率先して「演る演る演る!!」って(笑)。
小川君だけもうゲンナリよ(笑)。まあ、君が1人死んでくれたお陰で3人が活きたわけだから(笑)。
ーひどい(笑)
仁耶:でも、僕も演るって決まった時は「しんどい戦いになるな」とは思ったけど、僕よりしんどい人がいるので前向きになれました(笑)。「小川さんよりはマシだな」って(笑)
小川:仁耶にギターのデータもらって、オクターブ下げてベースにしてデータ送ろうかなって何度か思ったからね(笑)。「面倒くせぇーっ!」って(笑)。
一同:(笑)
仁耶:でも、送ってもらったデータ聴いたら「ああ、全然これで良いじゃん」って思って。凄い良いデータが来ましたね。
小川:頑張ったよ。マジで。
ー次、3曲目の「Into the Arena」はMichael Schenkerですね。
小川:この曲、有名で存在は知ってたけど聴いたこと無くて。Michael Schenkerって俺達の10歳上くらいの人達のヒーローだよね。
FUMIYA:そうだね。
ー仁耶君はMichael Schenkerとか通ってます?
仁耶:いや、ダイレクトには通ってないですね。僕にとってはレジェンド枠なので、、。ちょっと言い方は変ですけど、ジミヘンとかに近いというか。
もちろん知ってはいましたけど、リアルタイム感は自分にとってあまり無くって。
ーそれこそ、JillさんにMichael Schenkerのイメージは全く無いですね。
Jill:そうです。今回初めて弾かせてもらいました。
仁耶:ヴァイオリンどう入れようか凄い悩みましたね。結局、リフとユニゾンさせる形になりましたけど、「もうヴァイオリンアレンジしようがないじゃん」って思って。
ーもうそのままな感じで。自分もMichael Schenkerはもちろん知ってますけど、"ドラマーが誰"とかまではちょっと分からないですね。
FUMIYA:俺はこの曲、1回ライブで演った事があったんだよね。その時は何となくのコピーだったけど、今回は本当に細部にまでこだわって。
それこそ、ジェフポーカロかサイモンフィリップス、どっちの時期をコピーするのかってところから始まって、結局サイモンフィリップスの時期にして彼の手癖とかを研究したんだけど、クッソ難しかったっていうね(笑)
もうYouTube観ながらゲンナリして、、多分俺はこのアルバムの中で1番難しかった。でも、凄い勉強になったな。
この曲、唯一途中にリズム隊は隙間があるよね?
小川:あるね。原曲はルートをずっと弾いてるんだけど、何となくここはソロで自由に遊んでみようって。レコーディングも1人で演ってるし(笑)。
仁耶:元々はドラムソロっぽいところだけあるんですよね。あそこは「ベースソロにして欲しいな」とは思ってました。
FUMIYA:時期によってはライブで演ってたりするんだよね。
小川:そう。色々な人のライブ映像観て、演ってる人もいれば演ってない人もいて。でも、CDでは演ってないからどうしようかな?って思ってたんだけど、とりあえず家で"決行"してみて。
仁耶:"決行"(笑)。
小川:誰も止める人いないし(笑)。もう「好きに弾いて良いか」って。
仁耶:あれは大正解でしたよ。
FUMIYA:あれは演るべき場所だったと思うね。そこはインスト慣れしてるから分かるでしょ?。「この空白はソロ演るべきだな」みたいな。
小川:でも、いわゆる"アドリブソロ"では無いからね。最初は「アドリブで出来るだろう」って思ったんだけど、分からなくなって来ちゃったから、フーミンのドラムを暗記して、そのアクセントに合わせてフレーズを作っていったんだよね。
FUMIYA:そこのセクションが1番インストっぽかったよね。一番生っぽいというか。
仁耶:"セッションしてる感"がありますよね。それぞれの楽器が反応し合って盛り上がっていく感じというか。
ー割と今回の中では異色なナンバーかもですね。次の"Hundreds Of Thousands"はTony Macalpine。自分は全く知らないアーティストでした
仁耶:Tony Macalpineは知ってましたけど、この曲は多分聴いた事はあるんだろうけど知らなかったです。
FUMIYA:いやいやいや。Tony Macalpineと言ったらこれですよ。
ーこの曲は今回の中で1番"メロスピ感"がある曲ですよね
FUMIYA:だから高校の時にどハマりしたんだよ(笑)。いや〜楽しかった。もう高校時代から「この曲をバンドでコピーしたい!」っていう夢があって、やっと叶った。
でも意外と知名度が無くて、メンバーに全然馴染みが無かった(笑)。
小川:通ってないね。Tony Macalpine通った人に会った事すら無い(笑)
FUMIYA:"褐色のイングヴェイ"って呼ばれてたんだから(笑)。そのくらい、俺の中ではヒーローなんだよね。CDもめっちゃ持ってるし。
仁耶:Tony Macalpineの存在は知ってたけど、曲を弾いた事は無かったですね。実際弾いてみたら、凄い変則的なフレーズが多いなという印象でした。ネオクラっぽい事を演ったりもしてるんですけど、僕は"変則イングヴェイ"っていう印象を受けました。
ーJillさんも知らなかったですよね?
Jill:全く知らなかったですね。名前だけは知ってるけどくらいな感じで。
この曲はクラシックっぽいフレーズが多かったので、ソロ以外はそんなに難しくは無かったですね。
ソロは高速スウィープを完全再現してしまったので難しくなっちゃいましたけど、他の曲も含めてこういうソロを今回コピーした事によって、自分の中で結構変化があったみたいなんです。
ーおお、どういった変化が?
Jill:ちょうど昨日レコーディングで、昨日録った曲は自分でソロを考えたんですけど、Hiroさんから「すごいギタリストっぽいソロですね」って言われて。
全然意識はしてなかったんですけど、よく見てみたら高速スウィープのフレーズとかを無意識に入れてたりしてて、何かやっぱり影響があったのかな?って丁度タイムリーに昨日思ったりもしました。
ーアプローチが無意識に変わってきたみたいな。
小川:この曲、コード進行とかも不思議だよね。行きたいところに行くんだけど、行かないみたいな。
Jill:そうそう!。行く時と行かない時があるんだよね。
小川:イングヴェイとかは行きたいところに行きまくるんだけどね(笑)。だから気持ち良いんだけど、この曲は行って欲しいところに行かない気持ち良さみたいなのがある(笑)。
仁耶:良い意味で変則的というか。
小川:俺達が「ネオクラってこういう感じだろ?」って凝り固まってたんだと思う。それを打ち壊したよね(笑)。「そういうのもありなんだ!」みたいな。
ーなるほど。次の"Scarified"はRACER-Xの曲ですが、もうこれはお馴染みですね。
仁耶:定番ですね。
ーギターインストに詳しく無い、自分でも知ってる
小川:俺ら世代の"MI JAPAN校歌"みたいな(笑)。
ーはははは!!
FUMIYA:あっ、そんなレベルなんだ!(笑)。
小川:みんな弾いてたよね。
ーじゃあもう、この曲は全員もともと弾けた感じで?
小川:いや、俺はちゃんと弾いたのは初めてだった。でも多分、セッションとかで1回くらい演ってるとは思うけどね。
ー仁耶君は当然コピーしてましたよね?
仁耶:してましたね。でも、"めちゃくちゃ難しい曲"っていう認識が自分の中にあって、今回やるって決まった時も「大変な事になるぞ」とは思ってましたね。
もう、1番テクニカルな頃のポールギルバートの曲なんですよ。あの人が自分のテクニックを披露するために作った曲みたいなところがあって、大変でしたね。
"メカニカルな曲"みたいな、さっきまでの曲達とはまた違うテクニカルさで苦労したというのもあるし、あとScarifiedって原曲のCD版だと、もう少しテンポが速いんです。
最近、ポールがScarifiedを演奏する時、段々とテンポが落ちてきてて。
ーへえ!そうなんだ、、
仁耶:それは本人の好みでそうしてると思うんですけど、今回は最近の演奏に寄せたテンポ感にしてるんですよ。
"最近"と言ってもここ10年20年の話ですけど、バカ速かった80年代から離れて、今回はこっちのテンポ感にしてみました。あれと同じくらいですね、「Spaceship One」の時と。
FUMIYA:はいはいはい。
小川:あと半音違うしね。
仁耶:全体的なアレンジは「Spaceship One」を意識して作ってますね。
小川:ベースはRACER X時代に寄せてる。
仁耶:結構、色々な時代の感じがマッシュアップされてるんですよ。
あと、曲中にギターとヴァイオリンがツインでひたすらハモりまくるパートがあるんですけど、RACER-Xってポールギルバートとブルースブイエって2人のギタリストが看板で演ってたんです。
その2人のギタリストが高速でハモるっていうのがこの曲の売りであり、RACER Xの売りだったんですけど、これはもうヴァイオリンとツインにしなきゃいけないでしょって。
ーそれをギターじゃなくてヴァイオリンってまた難しそうだな〜(笑)
仁耶:ギターとヴァイオリンのハモりはあんきもでも演ってたので、そんなに難しさは感じなかったんですけど、「フレーズ的に大丈夫かな?」というのはありましたね。ギターでも弾きにくいのに、「ヴァイオリンだとどうなるんだろう?」みたいな。
ーJillさん的には、どうだったんですか?
Jill:いや全然、逆に弾きやすかったです。ヴァイオリン的には弾きやすいフレーズでした。
小川:そうなんだ。ポールってギタリスト的なフレーズが多いよね。
仁耶:"ギターで弾きやすいフレーズ"が多いですね。
Jill:これはギターで弾きづらい?。
仁耶:まぁ、「ギター的ではあるけど簡単とは言っていない」みたいな感じですね。めちゃくちゃ難しい笑
ーこの曲のリズムのチェンジアップがあるようなフレーズって、あまりヴァイオリンで弾くようなフレーズじゃない気がするんですよね。ドラム的な観点ですけど、リズムがちょっと変じゃない?。
仁耶:メインリフの部分とかは確かに。でも、個人的には"慣れ"があったんで、あんまり問題視はしてなかったです(笑)。
ーまあ、お馴染みですからね(笑)
小川:唯一、俺が聴いてたメタルだから(笑)。
ーそれこそ、FUMIYAさんも馴染みある感じですよね?
FUMIYA:これももう、高校時代ガンガンコピーしてたからね。RACER Xに関しても通りまくってるよね。
小川:ドラムも難しいんじゃないの?
FUMIYA:いや、そこまでじゃないよ。さっき、「Spaceship One」に寄せたって話が出たけど、その時のドラマーのマルコミネマンがイントロで"チーン!"でベルを叩いてるのを入れてるんだよ(笑)。
それは音源版には無くて、ニヤってして欲しいなって思ってて、今回のアルバムはそういう細かいところを結構狙ってて、あの"チーン"には反応して欲しいなー(笑)。
本当、それだけです(笑)。あとはもう、「懐かしい」って高校時代を思い出しながら演ってたね(笑)。
ーもう、皆んなが知ってる名曲ですからね。それこそ、次のVan Halenの"Eruption"も皆んなが知ってる曲ではありますけど、、「これ普通カバーするか?」って思ってしまうのですが(笑)
FUMIYA:いやー、びっくりしたね。演るって話を聞いた時は(笑)。
小川:いやー、これはJillさんが頑張ったよ。
FUMIYA:もう、それしか無いでしょ。
小川:俺達、3音くらいしか弾いてないもん(笑)。デーーーっ、、のみ、以上!(笑)。
ーそうなりますよね(笑)。Jillさん、どうでしたかこの曲は?。弾く曲じゃなくないですか?(笑)
Jill:そうですよね(笑)。最初、紫煉さんから「この曲ヴァイオリンで演ったら面白いんじゃない?」って言われた時は「マジでどうしよう?」って思いましたね(笑)。
まずもう、フレーズがフレーズっぽくないし、もうどの音を弾いてるかも分からない、適当にバァーッと弾いたようなフレーズなので、「どうやって採譜しようかな?」って。
一応、譜面を買ってみたりしたんですけど、それも結構原曲と違うんですよ。なので半分くらいは自分で手直しして作っていきました。
ーこれ、Van Halen本人もフレーズを決めて弾いてない感じがしますけど、、
仁耶:決めてないですね。決めてる部分もあると思いますけど、ライブだと本当にギターソロ扱いで、最後のタッピングフレーズは必殺技として決めて弾いてるんですけど、その前は割とアドリブというか。
小川:1個1個のセクションがヴァンヘイレンだから、"技"なんだよ(笑)。
仁耶:"その技のソロ"って感じがしますね(笑)。この曲に関しては完コピじゃなくて、その技をヴァイオリンで再現して、あとは全部自由に弾くものだと思ってたら完コピしてたんで、「おお〜っ!」って(笑)。
Jill:その"技"っていうのも知らなかったし、タッピングフレーズのところは「決めて弾いて欲しい」とは言われてたんですけど、あとは"何が肝なのか"っていうのも分からないし、「完コピしてやるぜ」っていう変な気負いもあって(笑)。
ー完コピも何も、この曲にBPMの概念があったのか?って話なんですが、、
仁耶:無いですよ(笑)。
Jill:面白いのが、クラシックのヴァイオリン教則本があるんですけど、この曲にそのフレーズが入ってて。
ーへぇ〜!
Jill:たまたま一緒になっちゃたのか、知ってて敢えて演ったのかは分からないんですけどね。でも凄いマイナーな教則本なので、、。
小川:あれ?、ヴァンヘイレンの親ってヴァイオリニストじゃなかったっけ?。
FUMIYA:音楽は演ってる、確か。
小川:だからあり得るよね。あと、タイミング的にも去年亡くなったしね。
FUMIYA:そうなんだよね、、。
小川:だから、「早く聴かせたいな」とは思ってたよね。今調べたら、ヴァンヘイレン、普通にヴァイオリン演ってたっぽいね。
FUMIYA:じゃあ、そうじゃん!。すげぇ〜!。
Jill:マジか!。
小川:ピアノとヴァイオリン演ってる。
ーじゃあもう、敢えてそのフレーズを入れてたんですね〜。というか、この曲ドラムは"ジャーン"って伸ばしてるだけですよね?(笑)
FUMIYA:タっドゥルドゥンドゥルドゥン、ジャーン、、終わり(笑)。
ーレコーディングってどう演ったんですか?(笑)。クリックは無し?
FUMIYA:無し無し。もう原曲流してもらって、ここら辺でくるかな?ってとこでドゥルって叩いて、もうそれで終わったよね。
もう、他の楽器が何にも入ってない状態でこれを演ってるの、凄いシュールだったと思う(笑)。
ーははは!
FUMIYA:「俺、何演ってるんだろ?」って(笑)。"1曲"って換算していいのか?、これは(笑)。
ーまあ、普通カバーはしないだろっていう(笑)
仁耶:発想がYouTuberっぽいですよね(笑)。しかもそれでCDを作っちゃうっていう。
小川:これに似た事は皆んな演ってるんだけどね。完コピはしてないと思う。
ーですね。次曲はSteve Vaiの"For The Love Of God"ですが、これはバラード的なナンバーで。隙間がある感じというか。
小川:言ってもSteve Vaiの曲って隙間はあるけど遊びが無いっていうか、何か全て考え尽くされてるんじゃ無いかなってくらい雰囲気がある。
この曲は「どうするのかな?」ってずっと思ってたね。
ーこの曲も、1回仁耶君がまとめた感じだったんですか?
仁耶:土台は作って、皆んなに弾けるか確認してって形で進めてはいましたけど、、。
メインテーマ部分をヴァイオリンで弾くっていうイメージはすぐに出来たんですけど、後半部分まで演るっていうのは「出来るのかな?」って。
小川:逆にメロよりソロを完コピしてるのが凄かった。
Jill:大変でしたよ、マジで(笑)。
小川:ニュアンスもあるし、スティーブヴァイのリズムって独特なんだよ。7連符とかも出てくるから。でも、適当に弾いてる訳じゃ無いんだよね。
あとアームの感じとかもね。それをちゃんと演ってるのは偉いなーって。
ーそれを採譜した訳ですよね?
Jill:もうめちゃくちゃ大変で。かなりゆっくり曲を再生して、「どうなってるんだろう?」って。もう訳分からなかったです。色々な譜面をみたりしたんですけど、どれも違うし。採譜するのがとにかく大変でした。
ー実際に弾くってなった時はどうでした?
Jill:単純なテクニックもそうなんですけど、"表現"っていう意味で1番苦労した曲が圧倒的にこれで。
雰囲気が独特で、ロングトーンを表現しなければならない箇所が多かったんです。ヴァイオリンって音に表情を込める時は、基本ビブラートの強弱でやるんですけど、原曲は"ホワァーン"っていう1つの音なんですよ。
ビブラートも掛かってなければ強弱もあまり変わらない。でも音にすごい情報量があって、その1音に物凄い表情があるんです。それをどうやってヴァイオリンで表現するかめちゃくちゃ考えて、1週間くらい24時間ずっとこの曲を家で再生してたんですよ。
ーすごい(笑)
Jill:ずーっと聴き続けて、とにかくその世界に浸ってみようって。
結果、どういう表現になったかは聴いてもらえば分かると思うんですけど、例えば簡単に出せるような音も敢えて難しいポジションで出してみたり、そういう"ちょっと無理してる"感じで表現してみたりだとか、あとは少し特殊な奏法を使ってみたりとかもしましたね。
あとはさっきお話した通り、ブースを真っ暗にして雰囲気を出したりとか(笑)。
ーまだ視聴映像で聴いたくらいなんですけど、あまりヴァイオリンっぽく無い響きになってるなと感じました
Jill:そうですね。Hiroさんも言ってたんですけど、中国の二胡みたいな感じというか、、。
ーそうそう!。それです!
Jill:どこか"アジアの風"を感じるというか(笑)
ーそう!。アジアの風を感じられる(笑)
Jill:この曲を家で流しながらYouTubeで色々と映像を観てたんですけど、ちょうどその時に中国の自然を映した映像を観ていて、何かその雰囲気が合うなって。
そのイメージで弾いたら、Hiroさんに「何か中国っぽいですね!」って言われて、「あっ、わかります?」みたいな(笑)。
仁耶:すごい分かる。"中国の竹藪"みたいな(笑)。
小川:この曲はJillさんのギターソロのコピーが凄いよ。これも早く聴かせたいね。
Jill:めっちゃ大変でしたけど(笑)。単純に速くて音数が多くて大変というのもあるんですけど、この曲はイングヴェイのそれとは全く方向性が違う大変さなんです。
イングヴェイはひたすら「どや!?っ」って感じですけど、この曲はフワっとした中にさり気なく速くてテクニカルなフレーズが入ってて、"速いから凄い"っていう速さじゃ無いんですよね。
あくまで曲の表現の一環としてこうなってる感じがして。
小川:何か、スティーブヴァイってレコーディングの時に断食するんだって。
FUMIYA:すげぇー!。
Jill:それ、聞いた聞いた(笑)。
仁耶:僕の聞いたスティーブヴァイのよく分からないエピソードなんですけど、自宅の中にピラミッドを作って瞑想するみたいなのがあって(笑)。
FUMIYA:あー!何か、知ってる知ってる!(笑)。
ーJillさんはその世界観に浸ったという(笑)
Jill:そうですね(笑)。今回のアルバム全編に通して言える事なんですけど、全然知らない人達が弾いた曲を私がどうやって表現しよう?っていう。
例えば、あんきもの曲だったら紫煉さんがフレーズを書くし、紫煉さんとは信頼関係が出来てるじゃないですか?。でも、スティーブヴァイとは信頼関係が出来てないので(笑)
一同:(爆笑)
ー確かにそうですね(笑)
Jill:だから、「どういう風に弾いたら良いんだろう?」っていうのを凄い探りながらの作業でしたね。もう、どの曲にも言える事ですけど。
小川:でも絶対、今後活きてくるよ。
Jill:本当そう。
仁耶:この曲、ギターは一瞬も入ってないんです。アレンジする上では「4人で演ってるんだから自分のパートも作らなきゃ」とは思ったんですけど、入れる余地が無かった(笑)。
ーははは!
仁耶:もう余りにもヴァイオリンが頑張ってくれてたんで。
Jill:えっ?、頑張らなければ良かった?(笑)。
仁耶:(笑)。もう途中でギターが入ってくるとその後ギターで弾くしかなくなっちゃうから、何か"ヴァイオリンカバー"って感じでは無くなっちゃうんですよね。
この曲をギターでなぞると、本当にただの劣化コピーになる可能性が高いんですけど、ヴァイオリンで演る事によって"ならでは"が出せたかなって思ってます。
小川:俺、このアルバムでこれがイチ押しだね。
仁耶:僕のギターが入ってない曲が1番好きという事ですね?(笑)。
小川:余計な音が無い(笑)。音が澄んでる(笑)。
FUMIYA:余計な奴が1人いねぇー(笑)。
仁耶:トライアングルにする?(笑)。
FUMIYA:"ピラミッド"だしね(笑)。
ー若干の問題発言が出ておりますが(笑)
小川:今、1人脱退しました(笑)。
FUMIYA:そうかそうか、"ピラミッド"ってそういう事か(笑)。
仁耶:インタビュー中に、1人脱退しました(笑)。
ーやめて下さい(笑)。次の曲はまたRACER Xの曲で、"Technical Difficulties"ですが、、
仁耶:これはもう、"ご存知"。
FUMIYA:必修科目よ。俺ら世代は皆んな知ってるんじゃないか?ってくらい。
小川:これはもう、ギター的にも中級から上級に行くまでの"練習曲"というか、何か皆んな演ってたよね、この曲。
仁耶:確かですけど、元々ポールの教則ビデオか教則本だかの曲なんですよね。そもそもが練習曲なんです。だから速弾きギタリストを志す者は絶対というか、聴いた事くらいはあると思うので、"お馴染み"って感じですね。
ーもうRACER Xが2曲も入ってるっていう。
仁耶:この曲は前にコピーした事もあったし、僕からも「演りましょう」って提案したんです。
その上で"Scarified"も演った事あるし、皆んな知ってるし、あとはツインリードが活きる曲だったので。
小川:あとね、"メタル"という縛りでインスト曲ってもう無いんだよね、意外と。何だかんだ歌入ってたりするし。
ーああ、確かにこれ以上はもう無いかもしれないですね
小川:あとはインストで"有名"ってところで。メタルのインストで有名な曲っていうところは、このアルバムでほぼ全部押さえたんじゃないかな?。もう殆ど無いと思う。全て演ったんじゃないかな?
仁耶:"全て"って言ったら怒る人もいるんじゃ無いですか?(笑)
ー界隈のマニアックな人達がね(笑)。これはJillさん的には弾きやすかったですか?
Jill:そうですね。弾きやすかったです。元々曲も知ってましたし、今までやってきたバンドのメンバーがリハスタで必ず弾き出すとか、周りで結構演ってる人も多かったですし。
ー定番曲ですね。確か、この間の配信で仁耶君はPaul Gilbertの手の大きさについて言及してましたが、、。
仁耶:そうなんですよ。この曲よりは"Scarified"に多いんですけど、手の大きさをアピールするようなフレーズが結構入ってて。僕も割と日本人としては手が大きい方なんですけど、それでもやっぱり辛いですね。
この曲ではあまりそういうフレーズは出てこないですけど、"かっちりした速いフレーズ"を楽しめる曲なんじゃないかなって思います。
イングヴェイは良い意味で自由奔放な感じなんですけど、ポールは1音1音カッチリと決まってる感じの速弾きなんですよね。
小川:音楽性がちょっとLAメタルからの派生みたいな感じだから、他とは違うメタルかもね。もしかしたら嫌いな人もいるのかもしれないけど、俺はそっちばっか聴いてたからさ。
仁耶:この曲も"Scarified"もドラムから始まるんですよね。パターンも凄い独特で。
FUMIYA:そうだねー。
仁耶:"Take Cover"とかもそうですけど、ポールの考えたドラムパターンって独特で面白いです。
小川:ポールが考えてるかどうかは分からないよ?。
仁耶:そうじゃないですか?。さすがに、この2曲はそうだと思いますよ。ポールが作りそうなドラムのイントロ感ではあるんですよ。
ーこの曲はFUMIYAさん的にはどうでした?
FUMIYA:もうこの曲も学生時代にコピーしてたから、何て事は無いかな。もうRACER Xの2曲は何の苦労も無く録れちゃったから何も言う事が無くて(笑)。
イントロのフレーズはドラマー的には目立つし、「キッズがコピーしがいのあるフレーズだな」と改めて思ったな。意外と演ってみると、16分16分で最後6連だったりだとか、"ストレッチ"っぽい(笑)。だから1音1音ちゃんと分離する意識で叩かなきゃとは意識したかな。
小川:フーミン、今回知らない曲あったの?
FUMIYA:えっ?多分ない。あっ、"Eruption"は知らなかったかも。でもドラム殆ど入ってないし。そういう意味では全部知ってる。
だから本当に、何度も言うけど今回はマジで負荷が1番無い(笑)。
小川:フーミンの夢を叶えるのと、Jillさんのヴァイオリンを目立たせるだけのCDだから(笑)。
FUMIYA:そう、そういうことだよ(笑)。
小川:だからもうね、、"不条理"(笑)。
ー"不条理"って(笑)
仁耶:旨味が無い上に、ただただ大変(笑)。
小川:そういう事をね、分かって欲しい(笑)。それを書いて(笑)。
FUMIYA:仁耶のデータ作りと小川君の曲を覚えるという"苦行"に俺達が乗っかってるだけだから(笑)。やったぜ!、夢叶うし、ヴァイオリン目立つし。
Jill:ふぅ〜っ!やったー(笑)。
ー(笑)
小川:俺達もそれなりの仕事はしたんだけど、そんなに報われてる感じがしない(笑)。
ーちょっと!(笑)。そうなんですか?(笑)
小川:Jillさんが一生懸命頑張ってコピーしたっていうのは外から見ても凄い分かるの。でも"データを作る"とかさ、"曲を覚える"って作業は外からは分からないからさ(笑)。
どんだけ大変だったかっていうのは伝わらないじゃん?。だから「不条理だな」って(笑)。
仁耶:"カバーする"って言ってもどれだけのレベルでカバーするのかっていうのは凄い迷って、完璧にカバーするんだったらやっぱりテンポも原曲に完全に合わせなきゃいけないじゃないですか?。
この年代の楽曲って殆どそうなんですけど、テンポがかなり揺れるんですよ。
小川:そうなんだよなー。
仁耶:1回曲に合わせてクリックを作っても微妙に速くなったり遅くなったりするんですよ。そういう難しさがあって。
結果的に原曲にテンポを合わせて無い曲とかもあるんですけど、「寛容な時代だったんだな」って思いましたね。
小川:ただコピーするのだけじゃつまらないし。ある程度アップデートされた俺達の価値観で"良い"と思えるものを録りたいなとは思ったけど、リスペクトも無いとダメ。そのバランスが難しかったかな。
仁耶:"劣化コピー"じゃ意味がないですからね。
ーそうですね〜。最後の曲になりますが、"17th Century Chicken Pickin'"。これはIMPELLITTERIの曲ですね
小川:インペリテリって有名だけど、俺あんまり聴いてなかったんだよね。
ーそれこそ昔は、速弾きといえば"ImpellitteriかPaul Gilbertか"みたいな風潮があった気がしますけど、、
小川:昔はイングヴェイと似た音楽性だから比べられてたけど、プレイ的にはポールっぽいよね。
仁耶:そうですね。"速さ特化型のポールギルバート"みたいな。まあ、それもおかしな話何ですけど(笑)。ポールも特化してるのに(笑)。
FUMIYA:そうだね(笑)。
仁耶:より速さに全振りしたポールギルバートのイメージはありましたね。
FUMIYA:確か、当時速弾きのギネス記録持ってたもんね。
ーこの曲、もうずっと弾いてる曲ですよね?(笑)
仁耶:そうです。呼吸が無い(笑)。
ーまだQUADRATUMバージョンを聴けて無いんですけど、もうずっとヴァイオリンで?
仁耶:基本ずっとヴァイオリンで、ソロバトル的な部分はギターも入れてます。
ーこんなずっと速弾きしてるような曲を弾くのはJillさん的にどうだったんですか?
Jill:これはひたすら速いことが辛いという感じでした(笑)。
FUMIYA:もうずっと教則フレーズって感じでしょ?。
Jill:もう永遠に続くって感じ。
FUMIYA:ギターのチキンピッキングっていう奏法使ってて、それが曲名になってるんでしょ?。
仁耶:そうなんですよ。普通ギターってピックで弾くけど、中指も使って"タカタタン"みたいな弾き方をして、それが永遠に続く。
ーもうテクニックを曲名にしてしまうって、、(笑)
FUMIYA:もうそれが凄いよ(笑)。いやー、でも中高の時流行ったな。まあ当時の俺の3人くらいのメタルコミュニティでだけど(笑)。
小川:弟子屈の?(笑)。
FUMIYA:そう、弟子屈の(笑)。もう「チキンピッキングって何だ!?」ってギタリストの友達達がこぞって演るんだけど全然出来なくて、「インペリテリやべぇ!」って皆んな言っててね(笑)。
ーもう"テクニックの為の曲"って感じですが、その辺も仁耶君は完全再現で?
仁耶:どのくらい完コピしたかな〜?。でも、今回の作品でこの曲だけ、"辛かった"とかそういう思い入れがあまり無いんですよ(笑)。
小川:そうなんだよ(笑)。ベースは全然大変じゃなかった。一番シンプルだったし。
仁耶:他の曲が辛かったから(笑)、この曲は案外シンプルですからね。
ーもうずっと弾いてるだけといえば弾いてるだけですからね(笑)。とまあ、収録曲を全部振り返ってみてもらいましたが、この『Loud Playing Workshop』は総じてどんな作品になってますか?。さっきはFUMIYAさんの夢を叶える為とJillさんを目立たせる為の作品と仰ってましたが(笑)
小川:もうJillさんをプロモーションするCDだから(笑)。俺は言い切るよ(笑)。
FUMIYA:本当に完成品聴いたらJillちゃんが主役なのよ、完全に。どう聴いてもJillちゃんの1人勝ち(笑)。そのくらい頑張ってたし、そのくらいヴァイオリンが凄く良かったから。
俺は8~9割の曲は学生時代からコピーしてきた曲な訳だから、ギターのニュアンスも身体に入ってるの。もう"まんま"。その手のファンが聴いても唸る。
イングヴェイとかインペリテリとか聴いてビックリしたもん。「チョーキングとかビブラートのニュアンスまでコピーした!。こいつやべぇ!」って流石に震えた。
Jill:頑張ったよ〜(笑)
小川:これ"LPW"じゃなくて、"JPW"だから(笑)。"Jill Promotion Workshop"(笑)。
ーはははは!!
FUMIYA:ははは!なるほどね!。"Jill Promotion Workshop"だったんだ、これ(笑)。
小川:Jillさんのプロモーションとフーミンの夢の為に、俺は一夏を捧げたから(笑)。
そういう事をちゃんと書いといて(笑)。激人しか拾ってくれないから、こういう事は(笑)。
ー了解しました(笑)。そういえば、現在1日おきに仁耶君とJillさんが配信を行ってますけど、反応はどうですか?
仁耶:凄い良いですね。今回の配信で「『Loud Playing Workshop』の収録曲をどのくらい知ってますか?」って聴いたら「知らない」って人がめっちゃ沢山いて。
FUMIYA:ええっ!?、そうなの!?。
仁耶:「全然知らないけどあんきもが出すので買ってみます」みたいな人が結構いて、「あっ、なるほど」って。
メタルを知っててもギターインスト知らない人って多いんだなって事が分かって、知ってる人は"ニヤリ"として欲しいし、知らない人には「僕達の通ってきた道はこれですよ」って事をアピール出来て良いかなって。
"自分達がどういう音楽を通ってきたか"というのは知ってもらいたいし。
FUMIYA:"窓口"になるんだね、俺達が。すごい変な感じ(笑)。もう当然のように聴いてきた曲だったから。
小川:でも俺らもさ、ジミヘンとかを聴いたのってイングヴェイとかポールとかが、ライブの最後にジミヘンの曲でセッションするのを聴いてそこに辿り着いたわけだからね。そういうのは大事だよ。
FUMIYA:そういうポジションにいるんだなって思うと、ちょっと今、感慨深さが出てきた(笑)。
ーははは!。そんな作品の"主役"であるJillさんはどうですか?。そういう「自分が主役なんだ」っていう自覚はあります?
Jill:やっぱり、ヴァイオリンでヴァイオリンの曲を弾いても当たり前なので、「ギターをヴァイオリンでこんな風に表現してみたけど、どうですか?」ってアルバムだと思いますね。めちゃくちゃ挑戦もしましたし。
ーあんきもとは別の、メタル以外のヴァイオリンの仕事にも、その挑戦は活きてきそうですか?
Jill:はい。絶対活きると思います。
小川:「またやりたい?」って聞かれたらどうする?
Jill:いや、ちょっとしんどい(笑)。
ーははは!
小川:それは俺も一緒だね(笑)。
仁耶:まあ"Workshop"なんで、修行みたいなもんですよ(笑)
ーああ、そういう意味で"Workshop"なんですね(笑)
仁耶:いや、すいません、それは後付けなんですけど(笑)。そういう意味で修行みたいなものだなって今思いました(笑)。
ーなるほど(笑)。とまあ、そろそろ締めに入ろうかなという感じなんですが、、。今、世の中がまた変な感じになってしまってますけど、これからの抱負などを1人1人聞かせてください。
仁耶:そうだな〜。やっぱり、もう今まで通りのライブって出来ないじゃ無いですか?。それ自体は誰も嬉しく無い事だと思うんですけど、そのお陰で出てくるアイデアっていうのもあって。
だから今まで試せなかった事を試すチャンスだと思って、今だから思いつくチャレンジを前向きにやっていきたいなって思ってますね。
ー今だからこそ出来る事も沢山ありますからね。Jillさんはどうですか?
Jill:例えば今だったら配信であったりだとか、あんきもはこの状況だからこそ出来る事をやれてる方だと思うんですけど、私の配信を両親が観てくれてたりもするんですよ。
今までは、あんきものライブに行ってみたいとは言ってたんですけど、もう歳も歳だからスタンディングも辛いし、東京まで来るのもキツいってなってライブを観てもらった事が無かったんですけど、配信ライブになって観れるようになって。
それはうちの両親だけじゃなくて、今まであんきもを知らなかった人達にも届けられるチャンスなんじゃ無いかとは思っていて、もちろんライブが出来ないのはマイナスですけど、マイナスだけじゃ無い"取っ掛かり"みたいなのを、今の時期に作っていきたいですね。
ーすごくよく分かります。FUMIYAさんはどうですか?
FUMIYA:もうあんきもの2020年の動きを見てもらえれば分かると思うんですけど、世の中は活動が難しい状況になっていても、正直うちらはあまり難しくは無かった。
多分、印象としては"動いてるな"って印象しか周りに持たれて無かっただろうなって思うし、知り合いからも「あんきも動いてるよね」って言われるし、それがうちらの強みなので。
あんきもの売りって時代の動きに対して柔軟に対応出来るっていうところで、このバンド形態とジャンルでその辺はうちらがトップだと思ってるし、それがお客さんにも伝わってるのを感じてるから、それを根強くやっていくだけかな。
ー引き続き、精力的な活動を見せて下さい!。そんな感じで小川さん、締めの言葉をお願いします。
小川:まあ、基本的には皆んなと変わらないんだけど(笑)。
でも、ライブやれなくても大丈夫ではあるけど、やっぱりライブってミュージシャンにとっては大事で。だから去年は「ライブって大事だな」って改めて感じた1年でもあったね。
ライブが無くって1番嫌なのはやっぱりミュージシャンだよ。お客さんも大変だけど、ミュージシャンって"ライブ中毒者"だから。皆んなはどうか分からないけど、俺なんて自分のバンドやってる時に金払ってライブやってたから。
「やって何の得があるの?」って思うかもしれないけど、ただライブがしたかった。人が少なくてもやってたかったし、それが無くなるのはやっぱり辛い。
去年ライブが出来なくて、「今年もよく頑張ったな〜っ!」ってやっぱり思えなかった。何か色々やってたはずなんだけどさ。
ネットの方が毎回1000人~1500人の人が観てくれてて、数的にはライブハウスより多いんだけど、やっぱり生で"ワァー!"ってなった方がアドレナリンは出るしね。
でも、それが出来なくってやれた事もあるし、やれ無いなりにやるしかないんだよね。それをやってたら何か新しい事をやれるようになったとかもあるかもしれないし。それをやるしかないよ。
まあ、あんきもは大丈夫だよ。結局ライブはやりたいんだけどね。ライブやれたら良いよね。
ーそうですね。あんきものこれからの活動にも期待してます!。本日はありがとうございました!。
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