【戯言】喫茶:裕~ゆう
ここは、小さな喫茶店
表通りを二本入った
少しわかりにくい隠れ家みたいなお店
ぼくはマスターなんて呼ばれる柄じゃないんだけど
ぼくの大好きをみんなに味わってもらいたくて
開いた大切なお店
カランカラン
ぼくがカップを磨いていると
パンダさんが扉を開けた
「いらっしゃいませ」
パンダさんはカウンターのいつもの席に座る
「マスター、なんだか疲れちゃって」
「どうしたの? 仕事、大変なの?」
「まぁ、大変なのは大変なんだけどね」
パンダさんはそう言って、ふぅと溜息をついた
「同じことのくり返しで、なんだかな~って」
「そうなんだ。じゃあ、リセットしようか」
「リセット?」
ぼくは、酸味が強めの豆を挽き
熱いお湯をそそいだ
パンダさんのお気に入りのカップに入れて
カウンターにおいた
「どうぞ」
パンダさんは、ゆっくりと口にはこんだ
「なんだか、スッキリするね」
パンダさんは、もう一度カップに口をつけた
爽やかなコーヒーの香りがただよう
「酸味が強めの豆は、キレがいいからスッキリするんだ」
「そう。なんとなく、リセットされた気分」
「それは、よかった」
ぼくのお店は、コーヒーを楽しみにくるよりも
お話をしにくるお客さんが多いのかもしれない
それはそれで、楽しいのだけれど
「マスター、また来るね」
「ありがとう、いつでもどうぞ」
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