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【戯言】月夜の狼

今年初めの満月を見上げていると、
となりでオオカミが遠吠えをした

「素敵な声だね」
「ボクの声、変じゃない?」

オオカミは不安げな表情で、ぼくに訊いた

「変じゃないけど」
「そう? なんかね、可愛らしいって言われるんだ」
「可愛らしいのは、ダメなの?」
「ダメだよ! カッコよくないと」

オオカミは満月を見上げて、
泣いているように鳴いた

「ぼくの友達の女の子はね」
「うん」
「背がとても低くて、それが嫌だって言ってたんだ」
「うん」

「でもね、小学校の先生になって、喜んでた」
「なんで?」
「子どもたちと同じ目線で見られるからって」

「嫌だなって思うとこは、武器になるんだよ」
「ボクも武器になるかなぁ」
「なるよ」
「ほんとに?」

「キミの声が素敵だから、友達になれた」

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