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NPB2018戦力考察 セリーグ編

お久しぶりです。甲子園の真っ只中、ドラフトや編成の話も本格化してきたところではないでしょうか。ということで今回は8月時点での各チームの戦力分析と、今オフに予想される補強ポイントの洗い出しをしてみようと思います。今回はセリーグ編です。去年の順位順に書いてますので時間のない方は贔屓球団だけでも見ていってください。

なお考察にあたって「年齢・ポジション別のWAR分布」なるものと二軍成績をまとめたものを使用しました。

※年齢・ポジション別のWAR分布…8/12時点のWARの数値をバブルチャート化したものです。赤色がプラス、白色がマイナス、黒点はWAR=0、WARの絶対値が大きいほどバブルが大きくなります(ところどころ見づらい部分がありますがご了承ください)。オレンジ文字は育成選手です。

※二軍成績…100打席以上立った打者/20イニング以上投げた投手のうち

1軍で100打席以上立っていない打者/20イニング以上投げていない投手②27歳以下の選手

をピックアップしました。厳密な理由はないので若手を適当にピックアップしたものとお考えください。

◯広島

野手は丸、會澤、田中、菊池ら突出した成績の選手がセンターラインに配置されており、これが攻撃力で他球団を圧倒する要因になっている。その他のポジションも大きな穴は作っておらず理想的。いっぽう投手は先発・救援ともにチームFIPがリーグ3位と平均的な戦力だが、中崎、今村、ジャクソン、一岡など成績が下降線をたどる選手が多いのが気がかり。

主力選手のほとんどが働き盛りの28〜29歳前後で、今後1〜2年で大きくパフォーマンスを落とす選手はいないだろう(センターラインの選手が多いのは気になるが)。それより今後は戦力維持という大きな問題と戦うことになるだろう。今オフにはリーグ最高打者も過言ではない丸と松山が、さらに1年後は會澤、菊池、野村、今村、2年後は田中がFA権を所得する。広島は全ての戦力をそのまま保有できるとは考えづらいため、どの選手と契約延長しどの選手を他戦力で補っていくかを今後考えていかなければならない。これはMLBで解体後に作られたチームなども直面する問題であり、同年代の若手で作られたチームの宿命とも言えるだろう。

丸が仮に流出した場合、とりあえずことし台頭した野間を中堅に置くことはできるため比較的マイナスは抑えられるかもしれないが、それでも差し引きの戦力低下は免れない。この低下分をどのポジションで補っていくか…チームはこのような悩みと今後付き合っていかなくてはならない。

ファームでは坂倉が去年を上回る好成績。四球を選べていない点は気になるが大きな問題ではなく、守備力次第では會澤の流出問題も解決できそう。一方二遊間の人材は不足している。曽根の獲得はあったが解決策とは言えそうになく、菊池や田中の流出問題では頭を悩ませることになりそうだ。メヒアと堂林はそれぞれ一・三塁と外野争いに割って入ることができるか。先発投手では高橋昂と高橋樹が好成績を残している。一軍の先発層を見ても経験を積ませることはできそうだ。救援では一軍で即使えそうな投手は見当たらない。

今オフの主な補強ポイントは①先発、救援問わず即戦力投手②即戦力二遊間となるだろうか。特に即戦力投手の獲得に力を入れることになりそうだ。不振のジャクソンの外国人枠を考慮に入れ、ドラフト・助っ人両面で補強を考えることになる。あとは二軍で経験を積ませることのできる野手の指名があってもいいかもしれない。

◯阪神

糸井・福留が攻撃力の軸になっているのは変わらないが、二塁の糸原に加え捕手の梅野、遊撃の北條の台頭があるなどセンターラインにある程度の改善が見られる。いっぽう一・三塁と中堅が大きな戦力の穴になってしまっており、特に高山、中谷が伸び悩む中堅の打力不足が深刻。投手は先発がチームFIPでリーグトップ、量も充実している。救援も昨年よりは落ちるがチームFIPはリーグ2位とそれなりの質は保っている。

前述の傾向があるとはいえ戦力の重心はまだまだ高齢寄りであり、彼らのケガや衰えひとつで打撃力が激減するリスクが高い。チームの課題であった打線のベテラン頼みはまだ解決できていないようだ。前述のようにセンターラインの改善傾向が見られるため、打撃のポジションである一・三塁やベテランの守る外野で彼らが衰えても対応できるような打力をもった選手を引き続き確保しなければならない。ところがファームで突出した成績を残しているとまで言える野手は見当たらない。15HRを放っている江越も打率やK%の数値がかなり悪く、大きな期待はできない。台頭が必要なポジションに有望株がいない、あまり好ましくない状況だ。今後年齢的にはパフォーマンスが向上する選手が多いがどれ程伸びるかは不透明で、もし伸び悩めば将来的にかなり厳しい。

先発投手もベテランのメッセンジャーの貢献が大きいがこちらは若手の貢献値も高い。彼らは今後パフォーマンスが成熟していくと考えられるため貢献ちはさらに増加が期待できる。さらにメッセンジャーの日本人枠化で空いた外国人枠を当てはめることもできるため、将来的な心配はなさそうだ。ファームでは才木や望月などすでに一軍で投げ始めている投手に加えて好成績を残す馬場などもおり充実している。救援でも守屋、島本などはまずまずの成績を残している。

今オフの補強ポイントは①即戦力外野手②即戦力一・三塁手③高卒野手というところだろうか。FAの丸・浅村はともに補強ポイントに合致するため積極的に獲得に動くことになりそうだ。また前述の1枠空いた外国人枠も有効に活用したい。ここ数年高卒野手を取らずデプスのバランスが悪くなっているため、高卒野手の指名も必要そうだ。

◯DeNA

野手は宮崎の三塁や左翼の筒香の貢献値が高い一方で捕手、二塁、遊撃など打撃で大きな穴となっているポジションが3つも存在してしまっている。打者有利のホーム球場にも関わらずこの状況なのが深刻な攻撃力不足の原因になっている。逆に先発はチームFIPがリーグ5位だが球場を考えれば高い貢献値といえ、救援はチームFIPがリーグトップでチームの大きな武器になっていると言える。

全体的に戦力の重心が若手寄りなので、今後1〜2年で高齢による戦力低下はそれほど大きくないと考えられる。ただ一塁のロペスの貢献値の低下が顕著なのでこのポジションの世代交代は考え始めなければならないだろう。FA権は1年後に筒香と梶谷、2年後に宮崎が所得する。いずれも貢献値が高い選手ながらも打撃のポジションの選手であり比較的後釜を用意しやすいポジション(打者有利球場であるから尚更)なので、そのような存在が台頭すれば安心できる。ファームの成績からいえば二・三塁の山下や外野の楠本に期待だろうか。投手では高卒投手が順調に経験を積んでおり、また進藤や田村は好成績を残しているため上で経験を詰めればさらに救援の層が厚くなる。

補強ポイントは①即戦力捕手②即戦力二遊間③即戦力投手といった感じか。捕手は伊藤光の活躍も期待されるが、それを待って上手くいかなかった場合は苦しくなる。二遊間選手はレギュラークラスの選手を確保できれば人数の多い若手選手をじっくり育成して、層を厚くすることも期待できるだろう。先発でやや伸び悩む選手が多いため、即戦力先発も欲しいところだ。

◯巨人

遊撃の坂本頼みだった攻撃力だが、一・三塁の岡本が台頭。守備でWARを稼いだ二塁の吉川尚は離脱直前に好調だったため、今後に期待。ただ全体的に突出した選手がいないのは相変わらず。特に左翼のゲレーロが不振に陥ったのが痛すぎた。先発は菅野と山口を中心にチームFIPがリーグ2位と好成績を残しているが、救援は全体的にパフォーマンスが低調だった。

岡本や吉川尚に加え捕手の大城、二塁の田中俊など今後年齢的にパフォーマンスを伸ばしそうな選手が多い。一方でことし30才を迎えた坂本は今後パフォーマンスが低下し、遊撃を守るのが難しくなっていくだろう。坂本の打力がキープできるような内野整理を行えれば今後の見通しは明るい。一方外野は戦力の重心が高齢寄りで、若手で期待できそうなのは重信くらいか。ファーム成績は二遊間のマルティネス、若林がOPS.800越え。若林は外野もできるため今後出場機会があるはず。その外野では和田がOPS.916、石川も.856とハイレベルな数字を残している。

先発も菅野や山口俊は今後下降線をたどるはずで、田口が伸び悩む現状の若手投手陣を見るとやや心もとないか。メルセデスや今村の覚醒も期待したいところである。

補強ポイントは①即戦力外野手②即戦力投手即戦力三塁手ということになりそう。やはりFA権を所得する丸や浅村は狙っていくことになりそうだ。また先発・救援問わず即戦力投手も確保したい。今年も「強奪の巨人」となるのだろうか。

◯中日

野手の全体的な貢献値はまずまずだが、投手有利の球場を本拠地としているため実際の攻撃力は高い。ビシエドの守る一塁の貢献値が特に高かった。逆に京田の遊撃は低迷。中堅の大島も攻撃力での貢献は少なかったようだ。投手は先発・救援共に壊滅的。先発はハイパフォーマンスを見せた先発がガルシアくらいで、救援は誰もいないと言っていいかもしれない。ナゴヤドームを本拠地においてこの成績はかなり悪いと言わざるを得ないだろう。

先行きもあまり良いとは言えない。中堅の大島、右翼の平田と貢献値の高いふたりは30歳以上で今後パフォーマンスは下降線をたどるだろう。しかし1〜2年後に主力になるであろう27歳以下の野手に主力クラスの貢献値を出せる選手がほとんどいない。ファームにめぼしい若手もいないため突き上げもなく、彼らと28歳以上の伸び代の少ない選手に打席数を与えているという現状だ。この環境はいちはやく変えなければならないだろう。

これは先発でも同様で山井、松坂、吉見らの貢献値に頼っている現状はかなりリスクが高い。こちらも台頭するような若手が救援の木下くらいしかおらず厳しい状況だ。即戦力投手の補強はもちろん、若い柳、笠原、小笠原らからエースとなれるような選手が出てきてほしいところだ。

補強ポイントは①即戦力投手、特にエースとなれるような存在②レギュラークラスの即戦力野手、特に外野手が必要なところだろう。とにかく高卒〜大卒、高卒社会人など若い世代の野手が欲しい。他に即戦力三塁手、高卒野手全体も欲しいところではないだろうか。

◯ヤクルト

野手の貢献値は平均的で、神宮球場を本拠地とするにはやや寂しい数字となっている。山田哲の貢献値がずば抜けて高く、打力ではバレンティンも寄与している。打線は大きなマイナスをあまり作らないようにしつつこのふたりを軸にしているのだろう。投手は先発・救援ともにチームFIPがリーグ4位と平均やや下のレベルだったが、打撃と逆でこの本拠地でこの数値を出したのならば好成績だったと言える。

1〜2年後を考えると問題となってきそうなのが外野の高齢化だ。青木、バレンティン、雄平はいずれも34歳以上であり今後いつ衰えが来てもおかしくない状況。しかしファームに優秀な成績を残す若手もおらずかなり危機的な状況になってしまっている。この部分の補強はよく考える必要がありそうだ。一方内野は山田のFA権(海外含む)次第だが遊撃に西浦が台頭し、さらにファームで高卒ルーキーの三塁手・村上がOPS.882と凄まじい成績を残しているのも好材料だ。また谷内も内野のユーティリティとして期待できるかもしれない。内野全体の見通しは明るいと言えるだろう。

投手は石川やハフなどベテランの貢献値もそこそこ高いが、基本的に30歳前後の選手が多くすぐに崩れることはなさそう。高橋、梅野といった若手がファームで好成績を残しているため彼らをローテの1枠として一軍で育成できれば理想的ではないだろうか。

補強ポイントとしては①すぐにレギュラーを張れる即戦力外野手②即戦力投手即戦力捕手といったところか。前述のように外野手の指名は必須だろう。打者有利の本拠地のためいい投手はいくらいても困らないだろう。他には高卒外野手もやや薄いところか。

セリーグは以上となります。疲れた…


※データは1.02さんのサイト https://1point02.jp/op/index.aspx ,プロ野球データFreakさん https://baseball-data.com/ ,BaseballLABさん http://www.baseball-lab.jp/ からお借りしました。