【感想】第48回城戸賞最終審査対象10篇

概要

こちらの記事は第48回城戸賞の公開されている最終審査対象10篇を読み、感想をまとめたものです。

感想

中山最終レース

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_nakayama.pdf

ファストなメロドラマ。
「なんだかんだでただ競馬やってるだけじゃん」との感想。
1話-3話とすごい自由な書き方されていて、作者はシナリオ術の本とかそんなに読まないタイプの人なんじゃないか?
セックスのト書きでいちいち体位指定してるのはどうかと思いました(映像化のこと考えてないのか?)
トウサクについては折原一さんの作品思い出しました。

天地知る

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_kondo.pdf

「西郷どんを江藤新平でやってみました」って印象。
これ史実が面白いだけじゃないのとは思ってました。
でもよく調べられていますよね。
家康から見た真田家みたいに、勝者側から認められた敗者に対する回想って型は使えそう。

今度選ぶなら君にしたい

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_kondo.pdf

「恋愛ミステリーもどき」って印象。
「すげー会話すんな」「立て続けに交通事故起こりすぎだろう」って感想。作者、女性なんだろうなと思ってたら案の定そうでした。
自分の体質が文体に拒否反応を示したため、読むの辛かったです。

SAKURA -さくら-

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_sakura.pdf

写楽の正体ファンタジー仮説時代劇。
タイトルが微妙にダサくないか?
話の流れは「魔法のランプ」とか「ドラえもん」みたいな流れ。
ベタな話なので話の筋を追っていて迷わないのはよかったです。

獣医はステキなことだらけ

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_jui.pdf

王道成長もの。
獣医の専門性と若者の成長描かれていて面白かったです。
ブラックな病院がブラックなまま終わるのは腑に落ちないですけどね。獣医って人手どうなんですかね? 労務署とかに訴えたらいいのにとか余計なこと考えてしまいました。
ついでに、この人、フォント凝ってますよね。

横濱ブラフ六十八番館

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_yokohama.pdf

こっちは大工で仕事もの。加えて、幕末ごろの時代もの。
参考文献が2ページでよく調べてますね。
出会いは最悪 → 恋人のふりしてくれよ → (ほぼ)恋仲になるって王道のストーリーラインもこの話なら全然アリだなって思ってました。
ここまで読んだ中なら一番面白かったな。

ひび

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_hibi.pdf

貧乏コメディー。
坂元裕二フォロワーなのかな? この人。
黒バナナとかいろいろテクニカルなことしててとっ散らかったまま終わった印象はありますが面白かったです。

ダイヤモンドを獲れ

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_diamond.pdf

野球のスカウトドラマ。
やってる事結構コテコテのスポーツモノだったな。
ストレイドックってチーム名は流石にないだろう。
王道の面白さはあったかな。
時間軸いじるとかなかなか技巧的なことしてるんですね、この作品。

僕たちの青空

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_bokutachi.pdf

ヤングケアラー兄弟の青春もの。
ヤングケアラー自体は最近新人脚本賞でよく取り上げられるテーマですが、兄弟にしたところに新規性を感じました。
筆者は40-50代の女性なんじゃないかな? と予想。
(調べてみたら割とお若かったです)
きっちりと社会問題を描こうとされているのですが、セリフがあまりに固すぎるのが気になりました。
ヤングケアラー系のドラマでは「干渉してくる他者 vs 身内」って構造にするのが多い印象。

奏でて

http://www.eiren.org/kido/pdf/230206_kanadete.pdf

兄弟音楽旅行同性愛もの。
ざっくりいうと「レインマン + グリーンブック」
その他ちょこまか色々要素組み合わせてはいるものの、この作品の個性があるのかって言われると適当な答えが見つからない作品。
例えば、主人公同性愛にする必要あった?
音楽で何か思い出すのは「僕たちの青空」と同じスタイルですよね。



総評

社会的にどうしても強い立場にいない人が主役の方がドラマにしやすいんですね。
この賞、フォーマットが割と自由なためか、そこで損してる作品たくさんあるかもなとは思いました。
一番面白かったのは「横濱ブラフ六十八番館」かな?
一本読むのに30分以上はかかりましたが、とにかくいい勉強になりました。

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