モチノキとモチノキタネオナガコバチの攻防
我が家から一番近くにある公園。
一年中濃い緑色の葉をつけているこの方。
この樹木は暖かい海岸地域にはよく自生していて、庭や公園にも植えられているモチノキ。
昔この木の樹皮から鳥もち(鳥を捕獲するために使う餅状のもの)を作っていたことが名前の由来になっています。
モチノキの葉は革質で分厚く、触るとひんやりした感じがします。
葉脈は薄く、小ぶりの葉っぱは全体的にのっぺりとした印象です。
こちらに越してきて3年目ですが、この木、同じ株でも実が赤くなるものと、いつまでも赤くならないものがあって不思議だなあと思っていたのですが、それには理由があるそうです。
モチノキにはモチノキタネオナガコバチという、長いけれどよく読んでみるとその意味が分かる名前(モチノキ タネ オナガ コバチ)の付いた虫がやってきます。
モチノキタネオナガコバチはその名の通りモチノキの種を食べる虫。
モチノキの実が赤くなるものとならないものがある理由にはこの虫の存在が関係しています。
モチノキタネオナガコバチはモチノキの実が発育中のちょうど今くらいの時期に、実の中に産卵管を刺して卵を産むそうです。
モチノキタネオナガコバチの卵は、モチノキの実の中で幼虫になって冬を越します。
モチノキの実は成ったばかりの時は緑色をしていますが、そのうち赤い色になります。
モチノキにとってみると鳥に認識されやすい赤い色になることで鳥に食べてもらい、種を落としてもらっているのです。
ところが、実の中で成長中のモチノキタネオナガコバチにとっては、モチノキの実が鳥に食べられてしまうことは自分が死んでしまうことになります。
そのためモチノキタネオナガコバチはモチノキの実が赤くならないように、実の中で操作をしているそうです。
モチノキにとってはこれでは種を鳥に撒いてもらうことができないのでモチノキタネオナガコバチは天敵なわけですが、モチノキもただただモチノキタネオナガコバチにやられっぱなしというわけではありません。
モチノキは受粉しなくても実を結ぶことができるそうなのですが、モチノキタネオナガコバチは実の中に産卵管を刺したとき、実が未受粉の場合は産卵はしないそうで、そうなるとモチノキタネオナガコバチは産卵管を刺す労力だけを無駄に使うことになります。
モチノキの未受粉の実は全体の実の30%にもなるそうで、モチノキはわざと未受粉の実をつけることでモチノキタネオナガコバチを疲弊させているのではないかと言われています。
私たちの知らないところでモチノキとモチノキタネオナガコバチはこんな攻防を繰り広げているのです。
植物は静かなようでいて、実は結構激しく生きています。
そんなギャップがたまらないなあと、今日もモチノキを見ながらしみじみと思いました。
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