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ラクウショウ~鳥の羽と呼吸する根~

我が家の近くの公園。

それぞれの季節ごとに植物の変化があってとても楽しいのですが、どの季節に行っても変わらず毎回心惹かれているのがこの方。

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この木はラクウショウ(落羽松)。


名前の由来は、鳥の羽のような美しい葉が秋になると落ちてくる様に由来します。

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植物にはいろいろな名前があって、中には可哀そうな名前の植物もいるけれど、ラクウショウの名前はとても素敵ですね。


ちなみに名前に「松」という漢字が入っているものの、ラクウショウは松ではなく、メタセコイアなどのスギの仲間です。


私が惹かれるのは背高のっぽの樹形と葉の姿でもあるのですが、ラクウショウの中で一番私が惹かれている部位はというと、、、


ここ

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ラクウショウの足元にあって、、、


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この何とも言えずヘンテコリンで愛らしい、、、


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この方たち。

もののけ姫に出てくる「コダマ」のようでもあります。


この方々の正体は「呼吸根(コキュウコン)」といいます。


植物の根は呼吸をしているのですが、沼地や湿地などに生える樹木の場合、土中から酸素を取り込むのが難しく、呼吸をするために根を地上部に突出させているのです。


ラクウショウは別名「ヌマスギ」。沼などの水辺の近くに生える木です。こちらの公園では池のほとりに生えています。


ラクウショウの原産地のアメリカの湿地帯では、呼吸根が2メートル近くにもなるものもあるそうです。


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植物の根は本当に面白くて、例えばキヅタならほかの植物などに「付着根」という根をピタッとつけて自分の体を固定し、樹木の高い場所によじ登るように生えることで、太陽の光を得るための工夫をしています。


ヤドリギの根は「寄生根」といって、他の樹木の枝の内部にまで侵入して、その樹木が光合成によって作り出した養分をちゃっかりもらっています。(ただしヤドリギは生きるための養分を全て他の樹木からもらっているわけではなく、ヤドリギが緑色であることからわかるように、自分でも光合成をしています。こんなヤドリギのような植物のことを、「半寄生植物」と言います。)


そんな植物ごとの生きる工夫が現れている根ですが、ラクウショウに戻りますと


この、一見がっしりとしているような呼吸根の内部は、意外とスカスカだそうです。

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それは、ラクウショウの呼吸根が、取り込んだ酸素を自身のより細い根の部分に送るために敢えて細胞を死滅させて、細胞間に酸素を通す隙間を作っているからです。


こういった、植物が自発的に自身の細胞の一部を死滅させることを「プログラム細胞死」と言います。


ラクウショウの呼吸根は、何とも言えずとぼけた雰囲気を纏いつつも、その内側ではダイナミックに生と死が融合しているのです。



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★★★

「根っこにはなぜいろんな形があるのか」「花はなぜ咲くのか」「種は芽生える時期をどう判断しているのか」などの、植物の生き方全般のお話を「植物生理学」と言います。


植物生理学はハードルが高いイメージをお持ちの方も多いと思いますが、知ると植物の姿が違って見えてきます。植物の生き方への理解が進むと、さらに植物が愛おしくなります。

私自身学びを深めるほどに、驚きとワクワクする気持ちがどんどん湧いてきてもうここから抜け出せません(笑)

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