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秋の七草と人の暮らし

日差しはまだまだ強いですが、秋分も過ぎ、空気は確実に秋のものになってきましたね。

さて今日は秋の七草についてです。

万葉集には
「萩の花 尾花葛花 なでしこが花 をみなへし また藤袴 朝顔が花」
という歌があって、この7種類の植物が「秋の七草」と呼ばれています。

萩の花→ハギ
尾花→ススキ
葛花→クズ
ナデシコが花→ナデシコ
をみなへし→オミナエシ
藤袴→フジバカマ
朝顔が花→アサガオではなく、キキョウのことであろうと言われています。

春の七草は、寒い冬を越えて春に芽生えた植物を、一年の初めに頂くことで英気を養うものに対して、秋の七草はその姿を愛でて楽しむものです。

なぜこれらの植物が秋の七草と言われているのか、それは、昔はこれらの植物が人の暮らしのすぐそばにあって、秋になると人はいつでも愛でることができたからです。

秋の七草のひとつ、尾花はススキのこと。

尾花は、ススキの穂が風に揺れるさまを動物の尾に例えた名前です。

ススキは萱葺屋根(かやぶきやね)の材料や、(「萱(かや)」とは、ススキを含むいくつかのイネ科の植物の総称です。)昔の人が飼っていた牛や馬の飼料に、燃やして畑の肥料にと、暮らしの中で大量に、とても広く使われてきました。

昔の集落には「茅場(かやば)」という、広大なススキ野原が広がっており、人は定期的にそこからススキを刈る暮らしをしていました。

野原はどんな植物で構成されていても、放っておくと時間をかけてゆっくりと森になっていきます。

野原であるときは地面に日が当たり、そこに多種多様な草が生えますが、一度森になると地面には日が当たりづらくなり、日があまり当たらないところで育つような、限られた植物が生えてくるようになります。

人は定期的にススキを刈っていたので、ススキ野原は野原として維持され、足元の地面には常に適度な日が入り、どの季節にも多種多様な花が咲き乱れていたのです。

秋の七草もそんな草花で、人が定期的に自然に手を入れていたからこそ見られた植物です。

昔の里山で見られた、人と自然が共生していた環境が育んだ植物と言えると思います。

今は身の回りの植物を大量に、定期的に暮らしに取り入れることなくなってしまったので、昔当たり前に見られた秋の七草の中にはあまり見ることがないものも増えたかもしれませんが、秋の七草を目にすることがあったら、人と自然が今よりも近かった時代に思いをはせてみてはいかがでしょうか。


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