アルビノの私は、スカートを選ぶ度に脱毛したいと呟いている。

「はー、脱毛したいな……」

脚の出るスカートを選ぼうとして、ムダ毛を剃り忘れたことを思い出し、私はこう呟く。

女性の手足の毛などが元から生えてこないものだと信じこんでいる男がいるとどこかで聞いたが、そうだったらいいのになあ……と恨みのこもった視線をやりたいくらいだ。元からツルツルならレディースシェーバーなんぞ売っていない。

今回はアルビノの私が脱毛したいと思ったら脱毛できなかった話をしようと思う。

私が脱毛したいと思った最初のきっかけが何だったかは正直言って覚えていない。ただいつの間にか母のレディースシェーバーを勝手に使って毛を剃るようになったという事実だけがある。そのうちに剃るだけでなく脱毛という手段を知った。

あまりに脱毛したい脱毛したいとうるさいものだから母がエステサロンの脱毛カウンセリングを受けさせてくれた。綺麗なエステティシャンのお姉さんに、洗練された空気の漂うエステサロン。

その当時高校生の私は脱毛はエステサロンではなく病院でやった方が効果的でコスパもいいなんてことは知らなかった。あの頃私は無知だった。

綺麗なエステティシャンのお姉さんが料金形態などを説明していく。ああ、いよいよこの邪魔な毛とおさらばできるのね……! とちょっと感激さえしていた私は、次の言葉で、崖から突き落とされた。

「黒い毛を感知して、云々かんぬん~」

という説明は私にとって聞き逃せない一節だった。

黒い毛? そんなもの、どこにも生えてませんけど……? 白い毛が邪魔でそれを脱毛したくて来たんですが……?

母と二人顔を見合わせ、エステティシャンのお姉さんにその話をする。次第にお姉さんの笑顔が崩れ、難題に挑む人になった。

お姉さんが他の人と機械の仕様を確認した結果、出た結論は、「お嬢さんの脱毛はうちではできません」だった。 

がーん。邪魔な毛とおさらばして快適ライフ! と思っていた私はがっくりというレベルではなかった。

ま、まさか、こんなところで、黒い毛じゃなくて白い毛だから脱毛できませんなんて、そんな、そんなことがあるっていうのか。でも機械の仕様なら仕方ないな……。

そして、さらに数年の後。エステサロンでの脱毛より医療脱毛が効果的であることを知った私は医療脱毛のために病院のサイトを読み漁った。

医療脱毛なら、いけるかもしれない……! と淡い期待を抱いたのである。

そしてこの期待は、

「ダウンタイムに日光過敏になります」

というサイトの説明にもろくも崩れ去った。

元々日光に弱いアルビノである私が日光過敏になるダウンタイムがある施術を受けるなんて、そんなのはさすがに思いとどまった。

エステサロンもダメ、医療脱毛もダメ、となれば地道にレディースシェーバーで剃るしかないのか……。私は絶望した。

私は面倒くさいことが嫌いなのである。アルビノだから脱毛ができなかった(相手が悪いわけでもなく、そして勿論自分のせいでもなく)ことよりも何よりも、これからもレディースシェーバーで剃らねば理想の身体を手に入れられないのがつらかった。

だって、剃るのが面倒くさい。

執筆のための資料代にさせていただきます。