[埼玉]ポーランド国立放送交響楽団 来日ツアー

2022年9月07日(水) 18:15/19:00
埼玉:川口総合文化センター・リリア

出演者
ポーランド国立放送交響楽団
マリン・オルソップ(指揮)
角野隼斗(ピアノ)

[プログラム]
バツェヴィチ:オーケストラのための序曲
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68

[ソリストアンコール]
パデレフスキ:ノクターン 作品16-4

 [アンコール]
モニューシュコ:
歌劇ハルカ
第1幕「マズルカ」
第3幕「高地の踊り」

ワクワクどきどきしながら迎えた、ツアーの初日。
このレポを書いている今も、心の興奮がおさまっていない。
上手くまとめられるか自信はないけど、この思い出を大切に心の中に鮮明なまま、残しておきたくて、スマホにぽちぽちと文字を打ち込んでいる。
音楽については素人な上、記憶違いなどもあるかと思うが、どうか温かい目で読んで頂ければありがたい。

入場

これは、まず書いておかねばなるまい。
今回、有料で豪華版のプログラムが、部数限定で販売されるので、入ったら、すぐに買うべし。
一部、1500円。
よって、現地に向かう際は、折り曲げや汚れ防止のために、クリアファイルはマスト。
出来れば、突然の雨に備えて、クリアファイルを入れる撥水素材の袋も欲しいところ。
その他、HAYATOSMのアルバムや、角野さんが作曲した楽譜も販売していたので、ご参考まで。

バツェヴィチ:オーケストラのための序曲

放送で開幕を告げるベルの音が聴こえてから、まだかまだかと登場を待つ時間は、いつもよりも、ずっと長く感じた。
扉が開くのをじっと待つ……ここで、ちょっとした驚きが。

オケの皆さん、何と壁の隙間から登場

扉あるのに使わないの!?
川口総合文化センター・リリアさんだと、これは普通なんだろうか……?
今まで、見たことがないケースにびっくり。

ちなみに、詳細をお伝えすると……
・オケの皆さん→ステージ奥の壁と、横の壁の隙間から登場。(ステージ奥側)
・オルソップさん→ステージ横の壁と、客席横の壁の隙間から登場。(ステージ手前側)
と言った感じだった。

オルソップさん、袖が赤いスーツで颯爽と入場。
そして、いよいよ本日一曲目、オーケストラのための序曲が始まった。

渦巻く音。
徐々に高まるエネルギー。


それと共に、客席の空気も少しずつボルテージが上がって行く。
最後に音色と共にぐわーっと観客の心を引っ張り上げ、盛り上がって来た所で締め。
短めの曲だからこそ、この後の演奏への期待を高める、コンサートの開幕にぴったりな印象だった。

ショパン:ピアノ協奏曲第1番

一曲目終了後、スタッフさんがピアノの蓋を開け、椅子を後ろの位置に下げて設置。
オルソップさんは一旦、舞台裏へ戻り、角野さんを伴って再びステージへ。

ピアノの脇に立ち、客席にお辞儀する角野さんを見つめながら、舞台袖でオルソップさんが角野さんに拍手を送る。

角野さんが、コンマスの方に挨拶し、着席後、オルソップさんと目線を合わせたかと思うや否や、演奏開始。

えっ、間を空けずにいきなり始めちゃうの!?
心の準備がまだ出来てない!
慌てて、私は心から雑念を追い払い、演奏に集中した。

オルソップさん、オケの各楽器のパートの皆さんとまめにアイコンタクトを取りながら、呼吸を合わせて、丁寧に音を紡いでゆく。

お人柄の暖かさを感じるような指揮。

オケの皆さんが生み出す音色は、ダイナミックレンジが広い印象で、一音一音を大切に鳴らしている、そんな風に感じた。

ピアノの演奏が始まるまで、少しの時間がある。

いよいよと言う所で、オルソップさんが角野さんにゆっくりと顔を向けた。
「さあ、行くよ。Cateen」
と優しく呼びかけるように。

ついに、その時はやって来た。

一音目から、音に泣いた。

いつもの角野さんが鳴らす音と、何かが違う。
心を揺さぶる音。
しっとりと繊細な音色。

過去の色んなことを思い返しながら、弾いていたのだろうか。
彼の心の中から浮かび上がった様々な感情がピアノに乗って、客席へと飛んで来るようだった。

オルソップさんとオケの皆さんが、優しく包み込むような音色で、寄り添うように、見守るように演奏する。
温かい空間。

音が途切れる際の最後の一音を、何と愛おしげに弾くのか。

一音、一音を万感の思いで弾いている、と感じた。

たっぷりと間を取って、音が伝える余韻を余すことなく聴かせる演奏。
こんな、ショパンの1番は今まで聴いたことがない。

心の琴線を優しく爪弾くような音に、一、二楽章は涙腺が刺激されっ放しだった。

そうして迎えた第三楽章。
パッと一音目から変わる空気感。
いつもの角野さんの音が戻って来た!

弾むような音。躍動感。
煌めく音の粒。
高まるエネルギー。

それでいて、一音を心から愛おしむように弾くのは、一、二楽章と同じ。

曲を弾く喜びや、終わりに向かう寂しさも感じながら弾いているのだろうか。
彼の感情がオケと溶け合い、増幅されて胸に迫って来るかのようだ。

こんなに、一つ一つの音がダイレクトに響いて来るのは初めての経験かもしれない。

そして、最高潮の盛り上がりを迎えての演奏終了後。終わった直後に、角野さんとオルソップさんが、熱いハグをした。
見ているだけでも、泣けて来る。
そして、二人で手を繋いで、お辞儀。

スタンディングオベーション。

カーテンコール二回を終え、沢山の拍手に包まれながら、角野さんがピアノの椅子に着席した。
マイクなしで客席に呼びかける。

「パデレフスキの曲を弾きます」

と言っていただろうか。距離があったので、正確な所はわからないが、そんなニュアンスのことを言っていた。

パデレフスキ:ノクターン 作品16-4

繊細な音色。
彼の心の奥深い所を垣間見させてもらっているような、そんな感覚を覚えた。
この時間そのものを愛おしむような演奏だった。

静かにアンコールの演奏を締め括り、その後カーテンコールを二回終えると、ホールのライトが点灯。

休憩時間である。

永遠にカーテンコールが続きそうな勢いだったので、程よいタイミングでライトを点けたのは、良かったと思う。

ブラームス:交響曲第1番

この曲はのだめカンタービレでお馴染みの曲なので、知っている方も多いだろう。
始まった瞬間、懐かしさを覚えたのは、それ故かもしれない。

ショパンの1番とアンコールの演奏で興奮状態の心を、クールダウンさせるつもりで初めは聴いていたが、いやはやとんでもなかった!

特に第四楽章。
クライマックス部分で、音の圧に腹の底まで揺さぶられた。
感情の処理が追いつかず、身体が先に感動に打ち震えている、そんな状態だ。

何度も、何度も、波のように音の衝撃が押し寄せて来る。
すごい、とにかくすごい。

いつしか、収まっていた筈の涙が湧き上がっていた。

演奏終了後、すぐさま立ち上がって、力一杯拍手を送った。
心からの感動を、オルソップさんとオケに敬意を伝えたかったからだ。

そうして、カーテンコールを一度挟み、まだ私が涙ぐんでる状態で、アンコールの演奏が始まった。

モニューシュコ:
歌劇ハルカ

第1幕「マズルカ」

オケの皆さんの浮き立つ気持ちが音に乗ったようで、浮遊感のあるサウンド
幸せ気分いっぱいの音色を全身に浴びて、うっとりした。

演奏終了後、客席の盛り上がりはさらに大きくなる。
止まない拍手。
そして、カーテンコール後、オルソップさんが再び指揮台へ。まさかのアンコール二曲目が来た!

第3幕「高地の踊り」

聴衆の盛り上がりを受けてか、オケの音がホール内を飛び跳ねているように聴こえた。

途中、身体でリズムを取りながら、オルソップさんが客席をチラ見。
自然と湧き起こる手拍子。
指揮者とオケ、観客が一体になった瞬間だった。

演奏後、ほとんどの人がスタンディングオベーション。

オケメンバーがはけていき、規制退場のアナウンスが流れる中、壁の隙間から人影が、ちらり……!

あれは、オルソップさんと角野さんだ!

ホールに背中を向け、観客と自分たちを自撮りしている様子。
客席から大きな拍手が湧き上がったのを受け、二人は振り向いてお辞儀をした。

二人が去った後も、ちょくちょく他のオケの方が写真を撮りに現れ、そのたびに、残ってるお客さんから拍手が送られた。

終わりに

ここまで、一気に書いた。
不思議と疲労感はない。
感動と興奮で、アドレナリンが出っ放しなのかもしれない。

本当に、幸せな音楽の時間だった。

まだツアーは初日。
チケットがほんの僅かだが、残っている会場はある。

一人でも多くの人と、この感動を分かち合いたい。
このレポを読んだ方で、チケット未購入の方、是非足を運んで欲しい。

各会場ごとに、彼の演奏がどうなっていくのか、皆さんの感想を読むのが楽しみで仕方ない。


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