日本センチュリー交響楽団 豊中名曲シリーズ Vol.25 100年後の楽しみ
はじめに
※コンサートの感想に行き着くまで、かなり前置きが長いので、遠慮なく読み飛ばしを推奨。
お急ぎでもなく、道中の旅レポ語りに付き合ってやろうと言う、心優しい方はそのまま続けてどうぞ。
直前まで仕事詰めっ詰めで頑張って、確保した休みにより行けたコンサート。
豊中市立文化芸術センターは阪急沿線。
阪急電車に乗るのは物心ついてからだと初めてだったので、ワクワク。
昔、「阪急電車 片道15分の奇跡」と言うタイトルの映画を観ていたので、レトロで可愛い茶色のボディなのは知っていたけれど、実際に実物の車両を見たら本当に素敵でときめきました。
乗ったら、木目調の内装に緑色の椅子が落ち着いた雰囲気を醸し出していて、これがまた良い雰囲気。
ファーストインプレッションで好き!
ってなりました。(何故か無駄に横文字)
途中、扉上部の液晶モニターと、駅の構内アナウンスで、人身事故によってダイヤが乱れてる旨の連絡があり、少し胸がざわつきましたが、無事に最寄駅の曽根駅に到着。
家、早く出て来て、良かった〜!
当日まで体調を崩すことなく、時間までにホールに到着して、演奏を最後まで聴けるだけでも、偶然ではなくて、実はたくさんの幸運が積み重なった結果によるもの。
トラブルに遭遇すると、普通に過ごせる有り難みを思い出します。(普段は忘れがちです)
一回一回のコンサートを大事に大事に楽しみたいと、改めて思いました。
到着した時刻はと言えば、無茶苦茶早く着いたわけでもなく、お昼時は過ぎていたので、ランチ場所を探すのには苦労しました。
何とか空いてるお店に滑り込めて良かった……!
と言うのも、当日は三月とは言え、結構寒く、時間を潰すなら、どこかのお店の中に一刻も早く入りたかったんですよね。
気分的には薄手のコートにしたかったものの、家から一歩外に出た瞬間、すぐ引っ込んで、薄手のダウンコートを引っ張り出して来て、丁度良い塩梅でした。
気温はまだまだ冬感強めな日でしたが、風景には春の訪れを感じさせるものがチラホラと。
車窓を眺めれば桜が咲いていたり。
最寄駅から豊中市立文化芸術センターまでの道には、花を咲かせた木々があちこちに。
知らない間に、めっちゃ春になってる!
バタバタして過ごしていると、季節感がなくなっちゃいがちですよね。
最近は、心に余裕がなくなっていたのかもと、ハッとさせられました。
忙しい生活の中にあっても、時折立ち止まって、周りの風景に目を向けたり、そんな時間を持つのは案外大事な事なのかも、とふと思いました。
もちろん私にとって、本日の一大イベントであるコンサートもその一つ。
生きていく上で、絶対必要じゃないように見えるものが、意外と心の栄養になって、自分を支えてくれていたりするのかもしれません。
話は少々脱線しますが、阪急沿線には木のぬくもりを感じる所がいくつかありました。
食事に入ったお店も、内装の一部が木目調。
豊中市立文化芸術センターの大ホールも、壁面のところどころに木が埋め込まれた不思議なデザイン。
(音響に何か違いが出ていたのか、気になります。私は素人耳なので良くわからなかったのですが、まろやかだけど、くぐもった感じはなく、ハッキリと耳に音が届いて来たように思いました)
デザインが気になって、豊中市立文化芸術センターのホームページを開いてみたら、興味深いエピソードが。
この日は見れませんでしたが、大ホールの緞帳は、ノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎さんの、「自発的対称性の破れ」の研究理論をベースにデザインされたものだそうです。
物理学の話がここで急に出て来るとは。
今回ピアノで参加している角野隼斗さんのツアーが、少し前に千秋楽を迎えたのですが、その中で、物理学のひも理論の話がちらりとパンフに書かれてあったんですよね。
不思議な偶然の繋がりを発見。
そうそう、開演前には、ロビーで朗読劇を一部、運良く聴くことが出来ました。
このコンサートは豊中名曲シリーズのラストを飾るものになるのですが、四回の公演のそれぞれに、何と小説が付いているんです。(素敵! 当日に朗読劇をする企画も最高!)
中身はネット上に公開されています。↓
開演前
開始直前になっても、完売しているはずの座席に空席がちらほらと目立つ……やっぱり事故の影響が出てるのかなと思っていると、コンサート関係者の思われる方が、マイクを持って舞台袖から現れました。
予想に違わず、阪急電車が例の人身事故のため、会場に到着出来ていないお客さんがおり、開演が十五分遅れるとのこと。
私も後少し来るのが遅れていたら、その中の一人になっていたかもしれません。
他人事とは思えず、臨機応変なホールの対応は良いなと感じました。
この後のかちどきと平和の演奏でも、楽章間に遅れたお客さんが少しづつ入っていたのか、間が長めで、マエストロとコンミスが客席を窺いながら、アイコンタクトを取ってスタートする姿が見られました。
思いやりに溢れた温かな空気感が、この後の素晴らしい演奏に繋がっていたのではないかなと思います。
かちどきと平和
日本人が初めて作った交響曲だと言う、記念碑的な作品。
今回のコンサートのチケットが取れなければ、おそらく知る機会のない曲だったので、聴くことが出来て嬉しかったです。
少し前にYouTubeで、関連企画トークイベントの動画が公開されていたのですが、それを事前に観ていたお陰で、すっと曲の世界に入っていけたように思います。
勇ましいタイトルなのは、初演されたのが第一次世界大戦開戦直後だったからかも。
タイトルから政治的な臭いを感じて、とっつきずらいように見えますが、思いの外キャッチーなメロディが随所にあって、最初から最後まで聴きやすく、楽しかったです。
雄大な川の流れを想起させるような音からスタート。
エネルギーに溢れた演奏に、曲の世界へ引き込まれます。
途中、優美なメロディからは西洋の宮廷のイメージが浮かびました。
最後は明るくかっこ良く盛り上げて締め!
今回、完全なる初聴きで、予習もしていなかったので、あっさりな感想ですみません……!
ここで二十分休憩を挟んで、お次はいよいよ、ソリストの角野隼斗さんを迎えてのラプソディー・イン・ブルー。
ラプソディー・イン・ブルー
※私が角野さんのファンと言うこともあって、かなり話が長めです。ご了承下さい。
角野隼斗のラプソディー・イン・ブルー
先に紹介したYouTubeで、水野蒼生さんが
「今、日本人で"ラプソディー・イン・ブルー"を弾かせたら、彼がベストというか、一番、俺は好きだなと思っている角野隼斗君が弾いてくれるということで、めちゃくちゃ面白いと思います」
と語っていましたが、私も同感です。
彼の演奏に魅せられてからと言うもの、この曲を弾くと聞けば、何度も足を運んでしまう位、角野隼斗のラプソディー・イン・ブルーのファンです。
普通、同じ曲、同じ演奏者のコンサートを何度も聴きにいくなんて、飽きてしまいそうに思いますが、彼は毎回新鮮なときめきに溢れた音楽を届けてくれるんですよね。
即興部分はその日その時限り。
全体の弾き方も、マエストロやオケとの呼吸の取り方も、コンサートによって様々。
一期一会の魅力の虜になるのが、彼の演奏なんです。
一度も体験したことがない方は、是非足を運んでみることをおすすめします。
過去の演奏との違い
直近の演奏は、ツアー中のアンコールで弾いたショートバージョンを除くと、名古屋のクリスマスコンサート、その前が大阪の一万人の第九の時。
名古屋での演奏はクリスマス感がふんだんに盛り込まれた、祝祭感溢れる演奏。
音の粒が雪の結晶に見えた場面も。
第九の時はキレッキレで格好良く、アメリカから戻ったばかりのタイミングでもあったからか、NYの夜景が目に浮かぶような演奏でした。
今回は良い感じに肩の力が抜けたような、穏やかな空気感で、かてぃん(角野さんの別名)ワールドに引き込まれました。
今回の演奏について
始まりはアレンジ控えめでしたが、この曲が十八番と言って良い彼がそのまま終わる訳はなく、鍵ハモ&ピアノの演奏辺りから、解き放たれたように弾き始めました。
鍵ハモのセッティングと片付けに要する数秒の空白、曲中の「間」も、曲がストップしている感覚はなく、それすらも音楽の一部になっていて、角野さんは完全に場をコントロールしているように感じました。
その際、ホールに流れた沈黙が実に心地良かったです。
それこそが、聴衆の引き込まれ具合を如実に表している、と思えたので。
皆、彼のこの後奏でる一音を心待ちにしている、わくわくを伴った、気持ちの良い静寂さ。
そこから先の即興演奏は、後半に向かうにつれて、どんどん自由に。
それにピタリと合わせるマエストロとオケの皆さんもすごい。どうやって合わせているんだろう……?
第九の時の音色が夜の街なら、今日はひだまりの森の中での演奏みたいで、温かで明るい。
ディズニーのミュージカルな歌唱シーンを思い浮かべて下さい。あの感じです。
演奏の印象をビジュアル化して説明すると……
音色の一つ一つに魔法がかかって、命が宿り、実体化して、妖精になり、舞台から客席に向かって次々に飛んで来る。
妖精が飛ぶ際にキラキラと輝き、ホール中が眩しい。
そんなイメージでした。
演奏そのものが魔法のようで、彼のラプソディー・イン・ブルーは何度でも聴きたくなります。
アンコール I Got Rhythm
YouTubeにアップされている演奏をベースに、角野さんが今の気持ちを乗せて弾いておられた印象でした。
この曲も、毎回即興が楽しいです。
ここでこう来るのか〜!
みたいなわくわくが散りばめられていました。
いつもより気持ちゆったりめだったような……たくさんの拍手で温かいホールの雰囲気を味わいながらの演奏だったのかなと感じました。
火の鳥
この曲も今回聴くのが初めてで、事前予習なし。
ファンタジーの絵本を読んでいる、もしくはロールプレイングゲームをプレイしている、そんな感覚を覚えた曲でした。
作曲者はストラヴィンスキー。
え、あの"春の祭典"の人? 本当に?(春の祭典くらいしか知らない人)
耳馴染みが良い音楽で、こんな曲も書く人なんだ、ちょっと意外かもと思ってしまいました。(失礼)
魔王カスチェイの凶悪な踊りの所は、もうボス戦の曲として、巷のゲームのBGMで流れていても、何の違和感もなさそう。
好き。
ラストも、ゲームクリアした感満々な、かっこ良くて壮大な締めくくりで、気持ちよかったです。
"火の鳥"と言えば、手塚治虫の書いた漫画を思い出すのですが、彼も火の鳥のバレエを観に行っていたとのこと。繋がりがあったんだ、と今回のコンサートがきっかけで知りました。
帰り道
この日、微妙な天気だったので傘を持って来ていた私。
素晴らしい演奏の数々で、魂が抜けかかっていたのか、ぼんやりしていた私はうっかり座席に置いたまま退席。
すると、近くにいたお優しい方が手渡して下さいました。
人情の街、大阪!
親切が沁みる……!
旅先で親切に触れたら、その街が好きになっちゃいますよね。
ちょっとした出来事一つで、その日のハッピー度合いが爆上がりすることも。
私も、もっと優しくなりたいものだと、人のあたたかさに触れる度に思います……!(これがなかなか難しい)
そう言えば、ホールの建物にマエストロと角野さんのサインを見付けたので、思わずスマホでパチリ。
演奏の感動と人の優しさに触れて、ほくほくした気分で帰宅。
そこから、記憶が新鮮なうちに思い出をばーっと書き出して、翌朝に整理。
曲の感想よりも、道中のレポの方が内容が濃いんじゃないかと言うへっぽこなnoteですが、ここまで読んで下さった方、ありがとうございます……!
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