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【大阪】Official Fanclub 8810 presents Hayato Sumino with String Quintet

■2024年9月3日(火) 開場18:00 開演19:00
大阪:ザ・シンフォニーホール

Artist
角野隼斗(ピアノ)
成田達輝(ヴァイオリン)
石上真由子(ヴァイオリン)
鈴村大樹(ヴィオラ)
ルドヴィート・カンタ(チェロ)
ダニエリス・ルビナス(コントラバス)

Program
かすみ草
角野隼斗:短編アニメーション映画「ファーストライン」より
角野隼斗:追憶 (弦楽五重奏版)
坂本龍一:Last Emperor (弦楽五重奏版)
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 (弦楽五重奏版) 

アンコール
坂本龍一:アクア
バッハ:羊は安らかに草を食みBWV208
モーツァルト:トルコ行進曲
カプースチン:トッカティーナ



かすみ草

確か、この曲は事前予告になかったのでは。
配られたプログラムに曲名を見つけた時は、嬉しくなりました。

演奏が始まると、まあるい音が、心の奥深くにあるあったかい記憶の扉を開いて、セピア色の風景がいくつも思い出されました。
気付くと、涙ぐんでいた私。

人生の中の心温まる瞬間の感情が蘇る、そんなひとときでした。

ファーストライン

映画のサントラが組曲形式で演奏。
映画館や配信音源で聴いた時とは違い、弦の音はくっきり、ピアノの音はふくよかさを増して響いて来ます。
かすみ草からのあたたかな雰囲気を引き継ぎつつ、迷ったり悩んだりした時の主人公の心象風景を追体験するような気分に。

最後にアイデアを掴み取る瞬間のピアノの音が、ハッとするような煌めきがあって、印象的でした。

追憶

まさかの弦楽五重奏版での演奏。
この曲は、私にとっては角野さんの心の奥を垣間見るような感覚になる曲です。
演奏される度に、その雰囲気を変え、深みを増していく追憶。

今回聴いてみて感じたのは、今までのピアノのみによる演奏が、心の核になる所の音のみ抽出したもの、弦楽五重奏版はその周辺のふわっとした記憶や感情までもが弦の音になって表現されていたように感じました。

ものすごく彼の心の深い所にある、言葉にならない揺蕩うものを見せてもらえたような。
ファンクラブコンサートだからこそ、ファンを信頼して見せてもらえたものだったのかなと感じました。

Last Emperor

最初の一音目から、ホールの雰囲気がガラッと変わったのを感じました。

頭の中には、はっきりとしたイメージが浮かびます。
黄昏時、落日の城の風景が。

頬を撫でる風は冷たく、周囲に人の気配はありません。
広大な敷地の城には、寂しい雰囲気が広がっています。
もしかすると、頭に浮かんだのは滅んだ城跡だったのかもしれません。

角野さんが以前にラジオで坂本龍一さんの演奏は、諸行無常を感じると仰っておられた
9/1放送 J-WAVE ACROSS THE SKY内のMUSIC OF THE SPHERESにて)
ように記憶しているのですが、まさにそれを感じさせる演奏でした。

学生の頃に暗誦させられた平家物語の冒頭部分も懐かしく連想させられました。

ピアノ協奏曲第2番

私はクラシックの素人なので、実際にこの曲の作曲された経緯には明るくありませんが、演奏を聴いて感じたことを書き残しておこうと思います。

第一楽章

先が見えない将来への不安、ショパンの揺れ動く心みたいなものがドラマティックに表現されているように感じました。

第二楽章

雰囲気はより内省的なものに。

調べてみた所、当時の恋人への想いを表現した楽章だとのことですが、実際に生で聴いてみて、純粋な愛の心の繊細な動きを、音にそのまま表してみたような、宝石のように美しい演奏でした。

特に、冒頭のピアノの音色はまばゆいばかりに光り輝いていて、あまりの美しさにこの世のものとは思えない程でした。

この衝撃は、忘れられない体験です。

第三楽章

希望の光が見えて、迷いから抜け出し、決意して未来に一歩踏み出す、若き日のショパンの心の動きを追いかけるような気分になった、そんな演奏でした。

事前に配信音源で予習していた時には、ピアノ協奏曲1番と比べると、やや暗い雰囲気の、お洒落で感じの良い曲と言った、ふわっとした感想しか持っていなかったのですが、生で聴くと受ける印象がかなり変わってびっくり。

角野さんの信じられないくらい美しいピアノの音色と、本当に弦楽五重奏なのかと思うほど厚みのある弦の音色が合わさって、感動的な演奏体験でした。

もともとピアノ協奏曲の1番が好きすぎて、こちらはあんまり好みではなかったのですが、今回生演奏を聴いて、大好きな曲になりました。

アンコール

プログラム終了後、チケットの半券を用いた抽選プレゼント企画を用意して下さったですが、その際、当たった人に挙手してもらって、その人に角野さんに弾いて欲しい曲のリクエストを訊く(!)と言う、何とも贅沢な時間でした。

プレゼントは欲しい、けれども推しているピアニストご本人と会話するのは緊張しすぎてやばい!
リクエスト、いきなり思いつくのか。
舞台に向かって聴こえる声で叫べるのか?
……みたいな、すごいドキドキなひと時。

結局私は当たらなかったのですが、残念半分、ほっと一安心な気持ち半分(笑)。

二曲が二票ずつ入ったので、その二曲を弾きましょうかと言いながら、演奏を始められたのですが、結局他のリクエストも組み込んで、弾いて下さったのでした。お優しい……!

一曲ずつバラバラに演奏せずに、全部違和感なく繋いで弾いちゃう、ハイスペックな角野さん。

リクエストを受け付けて、次々に繋げて演奏していたYouTubeライブの雰囲気を懐かしく思い出させるお姿でした。

アクア

前回のファンクラブコンサートでもアンコールに演奏されていたアクア

あの時は、坂本龍一さんが亡くなった直後のタイミングだったこともあり、角野さんの祈るような、涙の音がするピアノに、聴いているこちらも胸が揺さぶられて涙が止まらなかったのですが、今回は穏やかな空気感の演奏。

されども、一音一音がじわっと胸に染み入る音色で、優しさに包み込まれて、静かに泣きたくなるような、切ない演奏でした。

羊は安らかに草を食み

そこから、聴いている人の心をひだまりに誘い、温めてくれるような演奏へ。
ぬくもりある音色にとても癒されました。

トルコ行進曲

穏やかなバッハから、トルコ行進曲への違和感のない繋ぎ方がすごい。
癒された心をより元気にしてくれるような明るい演奏。

トッカティーナ

ノリノリな演奏に、ここまで聴いていて浮上していた心に、より活力を注がれた感。
ワクワクしながら聴いているうちに、パワフルな弾きっぷりにエネルギーを沢山頂いたように思います。
楽しかった……!

おわりに

書きながら今もまだ余韻がさめません。

全体を通して感じたのは、角野さんの心の中の世界を色んな曲を通して、共有させてもらった感覚になったと言うこと。

そこから、作曲家さんの世界を覗いた思いがする場面もあったり、自分の過去の記憶や感情が呼び起こされることも。

心の旅をしたような、不思議な体験でした。
静かな感動がそこにはありました。

幸運にも貴重な機会に参加することができて、感謝でいっぱいです。

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