広島交響楽団 第33回呉定期演奏会
ブラジル風バッハ第4番
指揮者のジョゼ・ソアーレスさんがブラジル出身と言うこともあっての選曲なのでしょうか。
今回初めて聴く曲名で、「〜風バッハ」と付くような曲が存在しているとは、とプログラムが発表された時は驚きました。
思いがけない出逢いがあるのも、コンサートに足を運ぶ醍醐味ですよね。
タイトルは「ブラジル風バッハ」ですが、プログラムノートによると、ブラジル民族音楽をバッハの作曲様式で昇華させたものとのこと。
だとすると、「バッハ風のブラジル音楽」と呼んだ方が意味合い的にはぴったり来るのかもしれません。
個人的な感想をお話すると、バッハ風だと感じたのは前奏曲のみで、そこから先のコラール「藪の歌」、アリア「賛歌」、踊り「ミウジーニョ」は、どこか映画音楽のように聴こえて来ました。
私のイメージだと、バッハの音楽は神の栄光を讃え、教会で祈りを捧げているような感覚で、曲を聴いていると、礼拝施設に流れる特有の静謐で涼やかな空気を感じるのですが、「ブラジル風バッハ」だと、日常生活の中で、色々と経験する人生の不条理について、神に救いを求めて祈るような、そんな雰囲気の違いを感じました。
オケの音色で印象的だったのは木琴でした。
特に「藪の歌」の部分ではリズムをずっと刻んでいて、独特の味わいを醸し出していました。
「賛歌」の途中から雰囲気が変化。
これまで、前半は物悲しさのようなものが、どこか底辺に漂う音色でしたが、悩みの渦中にあった主人公に希望の光が差して来ます。
「ミウジーニョ」で、光が見える方角に向かって顔を上げて歩いて行く、そんなイメージが浮かびました。
道の先には港があり、大きな旅客船がずらっと並んでいて、これから新しい世界に向かって行くぞと言う所で、フィナーレ。
人生これまで色々あったよな〜としみじみ感じながら聴き入り、ラストで元気をもらえた感覚になりました。
ピアノ協奏曲 ヘ調
角野さんが以前、ツアーファイナルで演奏されたのを聴いて以来でしたが、最近NYに拠点を置かれたのもあってか、進化が凄まじかったです。
脳裏に色んな映像が浮かぶ、浮かぶ。
ここからは私の中で膨らんだ想像をお話しして行きますね。
第一楽章
冒頭、最初にピアノソロになった瞬間から、ホールの雰囲気を完全に支配した角野さん。
黄昏時のNYの空気をそのまま運んで来たような、艶っぽい音色にうっとりと聴き入ります。
そこから、いきなりカデンツァが入ったと思うのですが、そこから私はこんなイメージが浮かびました。
オケの音色が、一日働いて疲れた労働者の皆さんを表現しているように聴こえて来ます。
(その中の一人に私も混ざっています)
何気なく公園の噴水を眺めていると、月明かりが差してきて、水に反射。
しぶきの一粒一粒がきらきらと輝き、その光の粒の中から、何と音楽の精霊が……!
……そんなイメージが浮かぶ、めちゃくちゃキラキラして軽快なカデンツァでした。
それから、音楽の精霊がみんなを元気づけようと、たまたま近くにあったストリートピアノを演奏して、みんなをハッピーにする魔法をかけていきます!
って言う、映画を観てる感覚になる演奏です。
音楽の精霊Cateenに心を鷲掴みにされちゃったひと時でした。
第一楽章、やっぱり盛り上がりが凄いので、終わった瞬間、拍手が沸き起こりました!
(最後、めちゃくちゃカッコ良く決まるもんね)
もうすでに、コンチェルト一本見た満足感ありますよ……!
凄すぎる演奏に大興奮。
第二楽章
ふわんふわんとした音色から始まり、夜も更けたかな〜と言う、時間経過を感じさせます。
酔っ払って、その辺ふらふら歩いてる人とかいそうな感じ。
けれど、まだまだパーティは終わらないのです。
音楽の精霊がふたたび現れて、あちこち飛び回ります。(カデンツァ再び!)
月明かりを思わせる美しい音に、どこかブルースみのある味わい深いカデンツァ。
労働者たちに寄り添うような、彼等を優しく見守るような弾き方から始まり、ぴょんと背中の羽で飛び立って駆け出すような軽やかな演奏を経て、みんなの側に飛び込むように、オケの音色と溶け合う、一連の流れが素敵。
第三楽章
冒頭からグルーヴがヤバい!
マエストロ、横に腰を振ったり、右足のつま先を挙げたり下げたりしてリズム取ったり、楽しそう。
角野さんも、左手の拳を握りながら上下に動かしてリズム取ったり、クライマックスで右手だけで引いてる時に、左手を自分の方にクイクイって手招くように動かしたり、ノリノリ。
途中、ラプソディー・イン・ブルーを即興で混ぜて弾いてましたよね……!
本当にもう、鍵盤の上を縦横無尽に駆け回っておられました。
みんなでワイワイ盛り上がっての、終演。
スタオベ、これはしちゃうわ……!
楽譜にカデンツァって書いてあっても、実際に演奏してる人はあまりいないらしいこの曲。
ボーダレスに活躍されてる角野さんにピッタリで、彼のためにあるような曲だと思いました。
ラプソに続く彼の十八番になりそうです。
I Got Rhythm
角野さんが「最後に楽しい曲を」とアンコールに弾いたI Got Rhythm。
彼のYouTube、かてぃんチャンネルにも上がっていますが、すごく味わい深くなってる……!
コンチェルトの雰囲気を漂わせながら、ちょっと大人な、夜のNYを思わせる音色があちこちにちらりと顔を出します。
確かYouTube動画でレベル4と書いてた所で、一瞬音が途切れる所がありましたが、その部分の間の取り方がこの時は長めで、それがまた良い感じでした。
余韻を楽しみつつ、弾いておられたのかもしれません。
シンフォニック・ダンス
「ウエスト・サイド・ストーリー」でお馴染みの名曲が登場。
マエストロ、肩を上げ下げしたり、右足でリズム取ったり、とてもノリノリで指揮をされておられました。
「マンボ!」ってオケの皆さんが演奏しながら声出ししてくれた所、最高に気持ちよかった……!
前に演奏された二曲は、どちらもアメリカのガーシュウィン作曲で、この曲は同じアメリカのバーンスタイン作曲だったこともあってか、曲を聴いていると、不思議と底流に共通で流れるアメリカ感みたいなものを感じ取れました。
人生色々あるけど、ユーモアたっぷりに、明るく笑い飛ばして、明日も逞しく生きて行くぜ、みたいな雰囲気。
心地良い空気感に浸るひと時でした。
バトゥーキ
アンコールで演奏されたこの曲も、本日初対面。
作曲者のオスカル・ロレンソ・フェルナンデスさんも、ブラジル出身とのことで、マエストロのチョイスでしょうか。
ブラジルの音楽がどう言うものを指すのか、定義とかわからないけれども、そこに確かに感じる彼の国の息吹。
クラシックコンサートだけど、身体が思わず横揺れしちゃいたくなりました。
頭が揺れて、後ろの人が見づらくなってはいかん、と堪えましたが、ずっと身体の中がぐわんぐわん揺れてるみたいな感覚が持続。
リズム隊の方が、今まで観たコンサートの中で過去一多かった印象……五人位?
レポをまとめるのが遅くなったので、記憶が薄らいでいるのが悔やまれます。
ぼんやりとした記憶なのですが、途中、ピアノ協奏曲へ調の第三楽章に似た雰囲気の所もあって、選曲の理由はそれだからなのかな、等と思いながら聴いていました。
リズムに乗っかりながら、何とも気持ちが良かったです。
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