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【愛知】マリン・オルソップ指揮 ウィーン放送交響楽団 with 角野隼斗

■2024年9月10日(火) 開演 18:45 / 開場 18:00
愛知:愛知県芸術劇場 コンサートホール

Artist
マリン・オルソップ(指揮)
角野隼斗(ピアノ)
ウィーン放送交響楽団(管弦楽)

Program
モンゴメリー:ストラム
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第26番 「戴冠式」
ベートーヴェン:交響曲 第7番

ソリストアンコール
グルダ:プレリュードとフーガ

オーケストラアンコール
アイゼンドレ:「アツィンヘイラ」より"ダークグリーン"
J.シュトラウスⅡ:シャンパン・ポルカ

ストラム

RPGのはじまりの街に降り立った時のような感覚に。
異国情緒を感じるのは、ピチカートで奏でられる音からか。
これから、音楽の旅に皆さんをお連れしますと告げるような演奏に、胸がときめく。

徐々に盛り上がる音色と共に、ホールの雰囲気も温まっていくのを感じた。

戴冠式

第一楽章

伸びやかで生き生きしたピアノの音色を聴いているうちに、角野さんがモーツァルトのように見えて来た。

この曲は、楽譜にもともとピアノの左手がほとんど書かれていなかったり、カデンツァが残されていない分、自由度があるそうなのだが(インタビューより)、モーツァルトもきっと遊び心溢れる人だったのではないかと思わせる演奏。

古典を弾いている筈なのに、即興性があり、今この場でしか生まれ得ない演奏を聴いていると言うライブ感が楽しい。

ありし日のモーツァルトが、のびのびと演奏している姿がありありと思い浮かぶひと時だった。

第二楽章

昼下がり、中庭の木陰で微睡んでいるイメージが思い浮かぶ。
青々とした葉っぱが日の光を受けて、淡い緑色に光り、その隙間から覗く澄み渡った青空が美しく、頬を撫でるそよ風は爽やかで心地良い。

この楽章ははっきりとしたイメージが思い浮かぶ。
ホールにはマイナスイオンが満ちているように感じた。

ここまでは、昨年、角野さんが戴冠式を演奏した時にも思い浮かんだものと被るが、ここからが異なった。

微睡んでいると、歌を歌う声がする。
清らかな女性の歌声だ。
聴き惚れていると、いつのまにか声は遠ざかり、元の中庭に。
今聴いたのは夢の中の出来事であったのか。
近くで誰かが歌っていたのか。

ピアノの音から感じ取れた情景を言葉にすると、こんな感じだろうか。

何とも心地良い穏やかな時間が流れていた。    

第三楽章

第二楽章の終わりから間髪入れず、第三楽章へ。

マエストラのオルソップさんとウィーン放送響さんたちが紡ぐ音が風になって、その上にきらきら、ころころした角野さんのピアノの音が乗って、ホール中に広がって行く。

随所に見られる角野さんの遊び心。

昨年に演奏された時と比べても、より自由度が増しているように感じられる。
最新が最高の、日々進化し続けている方なので、やはり目が離せないなぁと改めて思う。

特にこの日、即興演奏が冴え渡って聴こえたのは、私的にはこの楽章で、次はどうなるのか、ワクワクしっぱなしだった。
言葉ではとても再現出来ないので、もしこの後ツアーに行かれる方はお楽しみに。
(他の公演だと、彼ならまた全然違う演奏をするだろうし、その際、他の楽章の方が即興性の高い演奏をするかもしれないが)

溢れて止まない音の流れにただただ身を任せ、楽しいひと時だった。

プレリュードとフーガ

今日のアンコールはグルダのプレリュードとフーガ。
角野さんの演奏で、好きな曲の一つ。
久々に生で聴けて嬉しい。

モーツァルトを弾いていた時のノリノリさ加減そのままに、盛り上がるホールの空気の波に乗るように演奏。

指パッチンも冒頭と中盤の二回、流れるような演奏の合間に鳴り響く。
楽しそうに弾くなぁ。

ふと演奏中、ヴァイオリンの最後列左端の女性が、身を乗り出すようにして見ている姿が横目にちらり。

楽譜通りに弾いていても、このジャズを思わせる即興感が、角野さんのクラシック演奏の真骨頂だと改めて思う。

確かこの曲は、最後の部分の終わり方が演奏者に委ねられていると聴いたことがあるのだが、格好良いカデンツァの後、弾き終わりに茶目っ気のあるポロリン、とした音が添えられた。
音色に彼の人柄を表すような人懐っこさを感じて、印象的だった。

交響曲 第7番

第一楽章

ドラマ版のだめではオープニングテーマにも使われていた、大人気の楽章。

そう言えば、前回、オルソップさんと角野さんが、ショパン1番でツアーしていた時も、後半のプログラムがのだめで使われていた曲だった。(ブラームス交響曲第1番)
偶然のことだろうけれど、個人的には大好きな曲なので、嬉しい。

オルソップさんとウィーン放送響の皆さんが一緒に紡ぐ音は明るくて滑らか。
過去に聴いた演奏と比べて、低音がしっかり鳴っていて、迫力増し増し。

しょっぱなから上げ上げ、盛り上がりまくりなムード!

ベートーヴェンはみんなをわくわくさせる曲にしたかったのかなと思わせる楽器の使い方も面白い。

前後を強調するように効果的に挿入された間、コールアンドレスポンスな楽器同士のやり取り、各パートを強調して演奏する場面があり、前後左右から立体感を伴って聴こえる音色。

アトラクション体験をしているみたいなコンサート。
「どうだ、面白いだろう?」とベートーヴェンの声が囁いて来る気がする。

この楽章の演奏は、音色が力強くきらっきらに輝いていて、ステージ上が黄金色に光って見える。

終わった時、思わず拍手したくなるような盛り上がりっぷりだった(やっていないけど)。
終わった瞬間、左手の拳を天に向かって力強く突き上げていたマエストラが格好良かった。

第二楽章

個人的にこちらも思い出深い楽章。

その昔、サラ・ブライトマンのアルバム『Classics』にハマっていたのだが、収録されていた「Figlio Perduto」が、こちらを元に作られた楽曲なのだ。
(その頃はクラシックについての知識も浅かったので、気付いたのは最近である)
歌詞はゲーテの『魔王』を元にしていて、今聴き返すとまた興味深い。

演奏が始まると、ステージ上が夜の世界に包まれて、どこからともなく現れた歌姫が朗々と歌声を響かせるイメージが浮かんだのは、上記の楽曲を聴いていた経験からかもしれない。

だが、曲は中盤からは静かな雰囲気になり、森の中でフクロウが鳴いているようなイメージが浮かぶような、少し寂しさも感じる優しい演奏であった。

第三楽章

全体に渡ってビートを感じる楽章。
弦楽器全体でビートを刻み、それ以外の楽器でメロディ。
その後、ポップスのサビに当たりそうな盛り上がる所で両者が入れ替わると、迫力が凄い!

第四楽章

第三楽章から間を開けず、流れるように第四楽章へ。
こちらものだめでお馴染みの楽章。

個人的にベートーヴェンは、クライマックスの盛り上げ方が好きだ。

テンションマックスのまま、下げずに演奏が続くので、
「そろそろ、これだけ盛り上がったら終わるだろう……えっ、まだ続くの? え、まだまだ?」となる。
終わる終わる詐欺みたいな感じ(笑)。

聴衆を最後までわくわく、楽しませてやろうとする彼の心意気を感じるのだ。

そんなベートーヴェンの曲の構成に、ウィーン放送響の力強い音色の相性はぴったり。

終わる瞬間、指揮棒を持つ手を天高く振り上げるマエストラの後ろ姿は格好良くて、ずっと覚えていると思う。

エネルギッシュな演奏で、聴いていて身体に元気をもらえた気もした。

実はものすごく個人的な話なのだが、コンサートの三日前に腰を痛めて、前日までまっすぐ立って歩けない有様だった。

ひどかったら来るのを諦めようかと思っていたのだが、当日朝、マシになっていたので、時間にゆとりを持って現地へ向かった。

そして、コンサート後、ほぼ完全復活したのではと言う程元気に。
いつもはコンサートの日は、移動による疲労感が半端ないのだが、それも大したほどではない。

なので、ここまで聴いた段階でも、かなりパワーを分けてもらったのではないかと、勝手に思っている。

この後、嬉しいアンコール演奏が二つもあって、さらに充電された。

オーケストラアンコール

※ここからはネタバレになるかもしれないので、この後のツアーに参加予定の方はスキップ推奨。












ダークグリーン

今回のコンサートのために作られた曲だそう。

短いながら、茶目っ気があって思わず客席から笑いが漏れるような箇所あり、間の取り方が印象的で、面白かった。

シャンパン・ポルカ

祝祭感溢れる曲。

演奏中にオケのメンバーがシャンパンのコルクを飛ばすように、演奏中、時折客席にポンポン、玉?(遠目でよく見えなかったので、近くに飛んで来た方、キャッチされた方に何だったのか訊きたい)か何かを飛ばす演出もあり、曲の雰囲気も相俟って、とても楽しい時間になった。

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