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関西フィルハーモニー管弦楽団 第350回定期演奏会

■2024年10月12日(土) 開演 14:00
大阪:ザ・シンフォニーホール

Artist
管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団
指揮:藤岡 幸夫(関西フィル首席指揮者)
ピアノ:角野 隼斗

Program
菅野 祐悟:ピアノ協奏曲【世界初演】
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14

アンコール
菅野 祐悟:「さよならマエストロ」より

最寄り駅〜プレトークまで

前日にプレトークの告知が、関西フィルさんのXからポストされたのを見て、早めに現地へ向かうことに。

最寄りの大阪環状線福島駅を降りると、近くの横断歩道から信号待ちの列が駅のすぐ前まで伸びていて、あんぐり。
プレトークから聴いて、より今日のコンチェルトを楽しみたいと言うお客さんが、それだけ大勢いると言う事実をはっきりと目視にて認識。
何だかワクワク感が高まって来ます……!

雲一つない青空!
素敵なお花たちも記念にパシャリ。

ホールに到着して、事前にトイレを済ませておこうと階段を上がると……あっ、ショップが開いてるじゃないですか!

いや、何をそんなに驚いているんだと思われるでしょうが、過去にザ・シンフォニーホールに来た際、一度もショップが開いているのを見たことがなかったんですよ。

今日は記念すべき世界初演のコンチェルトを演奏すると言うことで、ホールの皆さんも気合が入っていたのかもしれません。

ワクワクして中に入ると、楽器や楽譜などをモチーフにしたクリップやハンカチ、手帳、ノート、しおり、キーホルダー、クリアファイル、ポーチ等々……グッズがいっぱいあって、見ているだけでもワクワクしちゃう。
悩みに悩んだ末に、ヴァイオリンの形のしおりをお迎えすることに決めました。

こう言ったグッズの類は大好物なので、是非もっとショップの開店頻度を上げて頂けたら嬉しいです。
きっと私と同好の士はたくさんいるはず……!
次に行く機会があったら、開いていますように。

トイレには素敵な手書きのカードが!
(他の方のご迷惑にならないよう、
終演後に人がいなくなってから撮影)

少しばかり、楽しい寄り道をしつつトイレを済ませて座席へ。
スマホの電源を切って、ワクワクしながら待っているとステージの左袖からマエストロ、藤岡さんが登場。

プレトーク

※当日の走り書きのメモを元に綴って行きますが、不正確な箇所が多々あるかと思われます。ご容赦下さいませ。

藤岡
「前半は角野隼斗さんのために、菅野祐悟さんが作曲した協奏曲を演奏します。
 菅野さんと言えば、大谷選手が奥さんに選んでもらった打席の入場曲が、彼の作曲したもの(ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風より「il vento d'oro」)だと言うことで、連日SNS上で何度もお名前を拝見して、嬉しかったです」

藤岡
「トレンディードラマに引っ張りだこ、最近はクラシックの曲もたくさん作曲されている、人気作曲家と人気ピアニスト、お二人からどんなものが生まれるのか?――では、菅野さん、どうぞ!」

えっ、作曲者さんまでプレトークに出てくれるなんて!
サプライズ演出に歓喜していると、舞台袖から菅野さんが登場。
胸元にワンポイント柄の入った白シャツにサングラス姿がお洒落です。

藤岡
「僕が出て来た時と、拍手が全然違う(笑)」

菅野
「いやいや、菅野『さん』とさん付けで呼んで下さってありがとうございます」

そこに反応するんですか(笑)
菅野さん、何だか面白い方だなと思いました。

藤岡
「ザ・シンフォニーホールに来てみて、如何ですか?」

菅野
「音響も内装も素敵だなと」

藤岡
「今回の協奏曲について、簡単に解説して下さい」

菅野
「小難しいことはパンフレットを読んで頂ければと思います。

 角野さんは日本を代表する、日本ナンバーワン。世界に羽ばたいて、世界から注目されているピアニスト。
 彼は曲も作る。それもすごく良い曲。
 これはまずい(笑)。
 中途半端な曲を作ったらダメだと、気合いを入れて書きました。

 今回は作曲するにあたって、最初から角野さんが弾くと決まっていたので、トイピアノ、即興、内部奏法を入れました。
 あ、あんまり言ったらネタバラシになるかも(笑)。
 トイピアノは僕も個人的に好きで、映画音楽にも使ったことがあります」

藤岡
「内部奏法はダメと言われることが多いんですが、今回、菅野さんと角野さん、二人のためならと、ザ・シンフォニーホールが特別にOKを出してくれました!

ザ・シンフォニーホールさん、素敵!

菅野
「ちょっとだけならとのことでしたが、がっつり弾いちゃってますけれども(笑)」

藤岡
「この三日間(リハ)は良い感じに固まって来たかなと思いますが、この曲はもはや交響詩ですよ」

菅野
「協奏曲のつもりで作曲したんですけどね(笑)」

藤岡
「菅野さんのファンは、菅野さんの曲が終わっても、ほとんど最後まで残って聴いてくれるのでありがたいです」

ここで、協奏曲の話は終わりということで、菅野さんは退場。

藤岡
「後半は幻想交響曲。この演奏では関西フィルの魅力を存分に味わって、新鮮さを感じて頂きたいと思います。

 この曲が出来たのは、ベートーヴェンが亡くなってわずか三年後。

 作曲者のベルリオーズがまだ有名ではなかった頃、ある女優に恋をして、ストーカーになります。
 楽屋の外でいつも待っててね(笑)。
 出禁になったのが元ネタ。

 麻薬で自殺を図りますが、死ねずに薬の世界に行くんです。
 早いテンポでヴァイオリンのみで演奏する所が恋の主題。
 低音楽器は恋をしている男性の情熱を表します。ドキドキする心臓の音。
 恋人の姿が遠くに見えたり、人混みに紛れて見えなくなったりする場面も描かれています。

 オーボエは遠くから美しく響いて、最初はのんびり、そこから早くなった所では、男性が嫉妬の嵐に駆られているのを表現しています。
 静かに終わって、遠くで雷が鳴るのをティンパニが演奏して表します。
 全三台、いや四台――非常にお金がかかっています(笑)。

 そして、断頭台への行進。(第四楽章)
 夢の中で恋人を殺します。
 断頭台に登る前に、クラリネット一本での演奏が、女性が助けて! と叫んでいるように聞こえます。

 第五楽章、説明するのも心苦しい。下品だから(笑)。
 悪魔やオバケが出て来ます。
 クラリネットが恋の主題を演奏しますが、美しくない。オバケになっているからですね。
 この楽章は魔女の饗宴とも言われます。鐘の音も聴こえます。

 ベルリオーズは、実はフラれた女性を演奏会に招待しています。
 そして何と、二人は結婚します!
 まあ、数年後には離婚するんですけど(笑)。

 この曲は下品に演奏しすぎると、雑になります。
 そうならないギリギリの線を攻める
のが課題ですね」

おおよそ、こう言った内容をお話しされていたかと思います。
とっても面白くて興味を誘う内容だったので、早めに来て大正解でした!

ピアノ協奏曲

壮大な世界を見た、と感じました。

スケールの大きさに、一度ではとても受け止めきれていません。
なかなか言葉に表すのは難しいのですが、感じたことを少しずつ綴って行きます。

第一楽章の冒頭は、サラサラと滑り落ちる砂を思わせるような音が聴こえて来ました。
イメージは、ちょうど最近角野さんが公開されたMVの世界観が近いかもしれません。

小さな音が幾重にも繊細に折り重なった所から始まり、次第に大きく豊かになって行く音色を聴いていると、地球の大いなる営みの中で、変化していく大地の景色が眼前に展開されて行く様が目に浮かぶようです。
ピアノはオケと溶け合って、脈打つ地球の一部になったかのよう。

多国籍かつジャンルレスな雰囲気の音色が印象的で、おそらくそれがより際立っていた箇所が、即興演奏だったのかと思いました。(パンフレットに第一楽章にアドリブパートがある旨の記載有)

演奏するたびに、即興演奏が進化して行く角野さん。
再演時にもし居合わせることが出来たなら、この部分については耳をダンボにして聴いてみたいと思います。

第二楽章は、旅する角野隼斗のイメージが浮かびました。
具体的に喩えると、洋画の大作ファンタジーで、広い草原を歩いている場面から始まり、後半では大河ドラマのような重厚感のあるサウンドが連想されました。

グランドピアノの左横にトイピアノが置かれていたのですが、途中、椅子の上で九十度左にくるっと角野さんが向きを変えて、二度、トイピアノを弾く場面がありました。

角野さんと言えば、過去にグランドピアノとトイピアノ、鍵盤の大きさが違う二つを巧みに同時弾きされている演奏が印象的でしたが、この日はそれはなくて、がっつり正面から向かい合って、両手で演奏されていらっしゃいました。

ここから第三楽章までシームレスに繋がって行くのですが、間に角野さんによる内部奏法があり、それを藤岡さんが見ながら、片手でオケに三、二、一と合図を出して、次の楽章に進むと言う、初めて見るような演奏の進め方で面白かったです。

内部奏法と言うと、前衛的で現代音楽っぽさも感じるもので、元々私は少々苦手だったのですが、不思議とこの時の角野さんの演奏は、私には内省的な美を感じるもので、自然と吸い込まれるように惹きつけられていました。

そう言えば、少し前に角野さんは武道館で演奏されており、そこでも内部奏法を披露されていましたが、それも今回と同様、聴き入っていたことを思い出しました。

第三楽章は、自然や世界とセッションする関西フィルと角野隼斗、と言った雰囲気で、まさに壮大。
地球の長い歴史を巡って来たような、大河ドラマのクライマックスの如き、荘厳でどこか神々しささえ感じるラスト。

わっと湧き上がる拍手。

藤岡さんと角野さんは客席をキョロキョロ、はっと二人が止まった視線の先には菅野さん。

何と、私の二メートル斜め前に座っていらっしゃったので、ビックリ。

控えめな動きで上品に拍手を贈っています。
三人の視線が合ったと思うや否や、菅野さんは軽やかに舞台上へ走って行かれました。
チラリとでしたが、黒地に柄の入ったお洒落な靴を履いているのが見えました。

幾度かのカーテンコールの後、菅野さんは藤岡さんに誘導されて、ハープの近くの、舞台の左奥へ。

角野さんのアンコール演奏タイムです。

「アンコール、何弾いて良いか難しい」(距離があったのではっきりとは聴こえず、正確ではいかもしれません)と語りつつ、作曲者の菅野さん繋がりで、ドラマ「さよならマエストロ」のテーマソングを弾いて下さいました。(当時ドラマのピアノ演奏でも、角野さんがおられました)

ドラマを懐かしく思い起こさせるような、オケパートの雰囲気もそのまま見事に、ピアノ一本とは思えない豊かな音色で表現されていて、本当に素敵でした。

幻想交響曲

事前に、プレトークで何度も下品だと藤岡マエストロが連呼されていたこともあり、ドキドキしながら演奏を聴いていたのですが、前半は普通に聴きやすい美しいメロディでホッとしました(笑)。
予備知識なしだと、ただただ綺麗なクラシックサウンドです。

とは言え、解説を踏まえて聴いていると、底辺にそこはかとなく不穏なものが流れているのを感じ取れます(笑)。

突然早くなるテンポ、うっすら聴こえる低音楽器の響き。
煌びやかな世界の中で、主人公の情緒の不安定さが表現されているようです。

低音部分は配信音源だと聞き取りづらい部分もあり、生だと配信音源よりも繊細に、漂う不吉な兆候を味わいやすいように思います。

第五楽章、楽器からこれまで聴いたことのないような、不思議な音がします。
まさにハロウィンとか、お化けが出て来る世界の雰囲気そのもの。

ふと視線をずらすと、菅野さんが食い入るようにステージ上を見つめています。
音の出し方等に興味を持たれたのやも。

ここまでストーリーや風景がはっきりと浮かぶクラシック曲は珍しいかも。
一般的な曲だと人それぞれ、場合によっては全然違うイメージが浮かぶこともありますが、この曲に関しては、みんなほぼほぼ共通するものが浮かびそう。

作曲の元ネタもストーリーもなかなかとんでもない感じですが、音色はシリアスになり過ぎず、ポップで滑稽さもある、親しみやすい音楽で、とても楽しかったです。

おわりに

何とか備忘録を残したいと、とりあえず最後まで書くことが出来てホッとしています。

ピアノ協奏曲に関しては、演奏するたびに進化して行きそうだと言う予感がします。
内部奏法有のハードルは国内だとかなり高いかと思われますが、是非再演の実現をお願いしたいです……!

尚、この日の演奏の模様はBSテレ東のエンター・ザ・ミュージックにて、10/26に放送予定とのこと。

たくさんの人にこの曲が届きますように。

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