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抗体薬物複合体と定位放射線治療の併用により症候性放射線壊死リスクが増加する 


要旨

定位放射線治療(SRT)は脳転移に対する重要な治療手段だが、放射線壊死のリスクがある。抗体薬物複合体(ADC)は頭蓋内病変に対しても有効と報告されているが、ADCとSRTの併用による症候性放射線壊死への影響について調べた。
対象は2014年から2022年までMemorial Sloan Kettering Cancer Centerにて未治療脳転移に対しSRTを1回以上受け、かつ1回以上のADC投与を受けた98名の患者(ADCはtrastuzumab emtansine, T-DM1, trastuzumab deruxtecan, T-DXd、 sacituzumab govitecanの3種類)。原発疾患の内訳は7割が乳癌。画像観察期間中央値は12か月。24か月後の症候性放射線壊死累積発生率は全体で8.5%であった。同時ADC投与の定義は、ADCに先行して7日間以内もしくはADC投与後21日以内にSRTが行われた群。同時ADC投与群では非同時投与群と比べて有意に症候性放射線壊死リスクが高値であった(競合リスク解析、単変量解析:SHR 4.01、95%CI 1.79-9.01、多変量解析:SHR 4.31、95%CI 1.95-9.50; p <.001)。とくに再照射例においては、24か月後の放射線壊死リスクは同時ADC群で42%であるのに対し、非同時投与群では9.4%であった。Grade4-5の放射線壊死は、同時ADC投与群で非同時群と比べて有意に高値であった(7.1% vs 0.7%)。本研究はADC投与中の脳転移に対するSRTに関する最大の研究で、かつT-DXdや sacituzumab govitecanを含めた最初の研究である。

ジャーナルのサイトに掲載されている論文へのコメント

・両群において、腫瘍体積や照射法に関してばらつきがある。とくにADC群で大型病変、単回照射が多いため、これらの影響もあったのではないか。

・T-DM1に関してはこれまでも同様の報告があったが、T-DXdやsacituzumab govitecanに関しては研究が乏しい。ADC毎の結果が待たれる。

感想

ADCは近年普及してきた薬物療法で、乳癌以外でも適応が拡大している。本研究で取り上げられた3つのADC(sacituzumab govitecanは本邦未承認)はいずれもBBBを通過するようで、脳転移に対する有効性も報告されている。ジャーナルに掲載されたコメントは、SRS/SRT治療側からの反論(局所治療を追い出すな、といった)のような印象があるが、脳転移に有効な薬物は、われわれを排除するライバルというよりは良き伴走者であると個人的には思っている。薬物が有効なうちは脳転移に関しては定期フォローでよいし、有効でなくなった時点でSRS/SRTを行えばよい。ただし、こういったBBBを通過する薬物での治療中や長期投与後の場合、増強のされ方が不明瞭なことが多いので、一回照射よりは分割照射のほうが放射線壊死の観点から妥当ではないかと考えている。そして、再発した際には次のレジメンに進んでもらうこともできるのであれば、線量的にさほど攻めなくてもよいのではないかと思う。
いずれにせよ今後より大規模で前向きの研究が出てくると思うので、注意してみていきたい。

しかし、抗体薬って本当に発音しづらいですね。英語でうまく言える自信が全くありません。


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