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もしもホームドアがあったならハンカチ王子に出会えなかった

インフルエンザにかかっていた女性が中目黒で線路に落下してなくなるという気の毒な事故がありました。実は私は、落下経験者です。その時の恐ろしかった体験を書いた文があります。日本中のホームにホームドアがつく日まで何度でも言い続けます。そのために書きました。

「冷たい……」
最初に感じたのは頰に当たる金属の冷たい感触だった。
体が重く動かない。地面に貼り付いたような感覚。右手は体の下だったので動く方の左手で頰を触ってみた。
「ヌルッ……」
真っ赤な液体で手が染まった。
「まもなく電車がまいります」
聞き慣れたメロディのあとホームアナウンスが聞こえた。この時初めて私は自分の置かれている状況を理解した。
天狼院書店メディアグランプリ「もしもホームドアがあったならハンカチ王子に出会えなかった」 より

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